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頭の中のバケツ

母が認知症と診断されてから、被害妄想や過食など様々な症状が現れる度に、これからどうなってしまうんだろうと、家族は不安でいっぱいでした。

そんな時に私を救ってくれたのは、かかりつけの薬剤師さんの一言。

「お母さんの頭の中のバケツは満杯で、もう何も入らないんですよ。」と 絵を書いて説明してくれました。
それを聞いた途端、なぜかストーンと胸のつかえが下りたように感じたのです。

認知症って、まさにそうなんですよね。

昔のことは覚えていても、たった今のことがわからない・・・そう、なぜならもう入らないのだから。

その若くてイケメンの薬剤師さんは、いつも冷静で患者さんの気持ちに向かい合って優しい言葉をかけてくれる人。

その時もササっとバケツの絵を書いて、真面目な顔でにこりともせず、でもとても穏やかな口調で言いました。

そのバケツが、まるで幼稚園児が書いたように下手くそだったのがおかしいのと、その言葉の優しさに、笑い泣きしそうな不思議な気持ちになったのを今でも思い出します。


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