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私がタンザニアに行った理由

「貧しい子供達に支援を」そう書かれた文字の横には、一人の少女が映し出されていた。腕は細く、肌は黒いその少女。その写真の撮影地はタンザニアだった。

私がこのポスターを見たのは、9歳の時。人は皆、私がしているのと同じように、朝起きて、ご飯を食べて、学校に行って勉強して遊んで、習い事したりして、お母さんに今日の出来事を話して、なんて生活をしているものだと思っていた。それが「当たり前」だって思っていた。それに外国人っていえば、アメリカやヨーロッパに住む白人のイメージ。

だから、このポスターを見たときの衝撃はとてつもなく大きかった。

「なんで肌が黒いの?」「なんでそんなに痩せているの?」

「なんでそんなに、悲しそうな目をしているの?」

彼女の表情がしばらく頭から離れなかった。

「あの子を笑顔にしたい」

あの時受けた衝撃は、いつしかこの思いに変わっていた。

これが、私とタンザニアという国との出会いだ。


皆さんはタンザニアという国をご存知だろうか。以前私が行ったオンラインアンケート調査(回答数315件。そのうち中高生58.7% 大学生13.7% 社会人28.5%)では、タンザニアという国名を聞いたことがある人は97.5%、アフリカにあると答えたあ人は88.7%だった。またタンザニアと聞いてどのようなイメージを持つかと尋ねると、大きく分けて2つの回答があった。一方は「貧困で苦しんでいる」。もう一方は「キリマンジャロ等の観光地がある」だった。みなさんはこの結果をどう思うだろうか。

私には何が…。抱いた疑問。

私はあの子のために何ができるだろうか。

そんなもの、いくら考えても答えなんて出てこなかった。9歳の私にはあまりに大きなことのように思えた。何にもできないと思った。

「タンザニアってどんな国なの?」そう聞かれてもうまく答えられない。タンザニアのことをよくわかっていなかったから、ネットで調べてみた。マサイ族、タンザニアの文化、自然。色々みたけれど、私が一番みていたのは、子どもたちの様子を映し出した動画だった。その動画の目的は子どもたちの学費の支援金を集めること。とても素晴らしいと思う。その動画をみた人が支援をし、少しでも多くの子どもが学校に行けるようになる。本当に素晴らしいと思う。ただ一つだけ、疑問が残った。

そのような動画の中にいる子どもたちは、皆苦しんでいるようだった。学校へ行きたくてもいけない。親が病気だけどお金がなくて病院には行けない。長い時間をかけて、水の入った重いバケツを運ぶ。野生の動物がいる、危険と隣り合わせの生活。私はその動画だけを信じ切って、てっきり、タンザニアの人はとても苦しい生活を強いられているんだとばかり思っていた。
だけど、今思うと本当にそうなのだろうか。第一に、支援を求める広告に、元気に学校で生活している子どもを載せたりはしないだろう。「かわいそうだから支援する」といった心理現象というのかわからないが、そういったものを狙っているはずだ。だから全てのタンザニアの子どもたちが貧しいというわけではないだろう。今私が見ているものは、タンザニアの今なのか。その動画が公開されたのは10年前。近日の情報をあまり見つけることができなかった。しかし外務省のデータによると2014年の段階で小学生の就学率は90%近くあった。だから私が過去にずっと見ていた動画の中に生きる子どもたちのような子はあまりいないのだろう。だが、そういった子がいることも事実だ。私が笑顔にしたいと思った彼女は、その少数の中の一人だろう。多くの人がアフリカ=貧困というイメージを抱いていると思う。私もその一人だった。だけどそれに違和感を覚えたから、私は自分の目で見て判断するべきだと強く思った。そして、少しでも私が彼女らの力になるにはどうすればいいかを考えようと思った。

また一つ、気になるデータがあった。先述した通り小学生の就学率は90%近くあるのに対し、中学校の就学率は25%ほど(2014年、外務省)なのだ。小学校は義務教育だが、中学校はそうではない。ということは、教育にお金がかかるようになると学校に行かない子ども、行けない子どもが増えるということなのだろうか。

調べれば調べるほど、たくさんの疑問が浮かんでくる。

私はタンザニアに行かなければ行けない。行って現状を知り、その上で行動選択を考えなければいけない。

そう思い始めたことが、今回タンザニアに行くことを決めた理由だ。

タンザニアという国と出会ってから、約10年。高校3年の夏。受験生にとって大事な季節。もっと早く行けばよかったと思いもしたが、それでも行くことを決断した。躊躇しなかった。

ここから私の挑戦が始まる。

まだまだ未熟で無知な若者だけれど、そんな私でもできること、私にしかできないことがあると信じて前に進み続けます。よろしければ応援お願いします。