有休OLが登山初心者ひとりで高尾山の桜と温泉を楽しんできた
山登りをしたことないどころか、階段を登ったり走ったりするだけで息切れするレベルのひ弱なOLです!
せっかくの春だし、何か新しいことをはじめたい…できれば今のうちに外の空気を楽しみたい! そこで頭に浮かんだのが山でした。
数年前から、キャンプや山登りってトレンドになってますよね。私の周りにも山好きが結構いて、みんなものすごく楽しそうにしているので、どんな魅力があふのか、ずっと気になっていたんです。
とはいえ、ひとと一緒に行くと、体力が保たなくて迷惑をかけるかもしれない。だからはじめての山登りは、平日のおやすみの日に、一人でふらっと行くことにしました。
高尾山を選んだ理由はひとりでも行きやすそうだから
有給OLのひとり山登り先として高尾山を選んだのは、車を持っていないわたしでもアクセスしやすかったから。調べてみると、お土産屋さんも多くたのしい場所のようです。いくつかの登山路のうち、「一号路」と呼ばれる道は補装されていて、普段着でも歩けるそうな。そんな情報を目にして、さっそく高尾山へと踏み出しました。前日は、「こんなにわくわくしながら眠るのはいつぶりだろう…」というくらいテンション最高潮で眠りに落ちた。
翌日みることになる山桜。夢見ていたのはまさにこんな感じ!
装備は完全に普段着
持ち物や服装は、事前に高尾山の公式サイトで調べておいた。サイトの説明はものすごく細かい!
たとえば、
寝る時間
起きる時間が、いつも起きている時間と 1 時間位しか変わらないなら、いつも寝る時間に寝て大丈夫です。もっと早い時間の出発なら別だが、普段のリズムを崩す方が良くありません。
早く寝ようと意識しすぎて、なかなか寝付けない事もあるし、そのうち早起きしなきゃいけないのにと思い始めるとその反動で熱を出す事もあります(遠足熱とも言われます)普通に寝て、いつもより少し早く起きましょう。
(引用:高尾登山電鉄)
早起きすることまで考慮した説明文に頭が下がる。
また、こんな説明もありました。
当日の朝食
動きながら食べたものを消化するのは、体に良くありません。しかし食べないのはもっと良くないので消化の良いものを軽く食べておきましょう。しかし水分は控えめに。
当日の朝にお昼までもたない、力が出ないからと沢山食べるような事がありますが、いま食べたの物は直ぐにスタミナにはなりません。
それどころか体がダルくなったり動きが鈍くなったりするので、前日にしっかり食べておきましょう。お昼前にお腹が空いた方が、山で食べるお弁当がより一層おいしくなります。
(引用:高尾登山電鉄)
朝食時の水分量まで指定が…。言われた通り、朝食はヨーグルトと紅茶のみにしておく。
靴は登山用のものを持っていなかったので、最近お気に入りのVANSのスニーカー。マウンテンパーカーもないので、通勤用のMACKINTOSH PHILOSOPHYのトレンチコート…。場違い感が凄まじい。猛烈にカジュアル服がほしくなり、帰りにマウンパを買う決意をする。
京王線に乗って山の麓へ
新宿駅から京王線特急で47分。山への入り口である高尾山口駅は、建築家の隈研吾さんが手掛けたものだそう。改札を抜けて、木が空に張り出した屋根をくぐると、山奥に来たようでテンションがあがります。
屋根は高尾の名産である杉を使っているらしい。
川沿いを歩いてロープウェイの乗り口へ進む。
途中にはレトロな風情のおまんじゅう屋さんが。今度は寄ってみたいな。
お土産屋さんがたくさんあってつい目移りしてしまうけれど、お目当てのおやつがあるのでちょっと我慢。
目があったムササビ。かわいい。
ロープウェイ & リフトが発着する清滝駅に到着
3分ほど歩くと、ロープウェイとリフトが発着する清滝駅がある。ここからロープウェイで、山の中腹まで進みます。全部登るのは大変だからね…。
高尾山と書いてあるけれど、ここが清滝駅です。
この日(3月22日)は桜は5分咲きくらい。
15分間隔で出ているロープウェイは片道490円。もみじ号とあおば号の2台が交互に行き来しているとのこと。
紅葉シーズンは1時間待ちというロープウェイですが、
この日は全く並ばずに乗れました。
ちょうど来ていたもみじ号に乗車。
車内の混雑率は、四人がけの座席が一席ずつ埋まっているくらい。せっかくなので、いちばん前に行ってみました。
結構な急斜面です。
桜はときどき見かける程度だったけれど、見晴らしがよくて、標高と一緒に気分も上がります。山の中腹にある「高尾山駅」につくと、お土産やさん、スミカが見えてきます。
手前には名物のクグロフや天狗焼きのテイクアウト売り場、中央にはお土産売り場、奥にはお蕎麦などのイートインスペースが広がっています。
もともとはいくつものお店が長屋のように連なっていたというこの建物は、2018年にリノベーションされたそう。今では、細長い地形に合わせて床が広がる、珍しい形の建物になっています。地面の起伏に沿って、床も棚田のように段差がつけられていたりと、その土地に合わせた意匠を感じるつくりになっていました。地面を削り取って建物をつくるのではなく、山の形を活かした建築物をつくるって、ものづくりの姿勢として素敵だなぁ。
店内には名産(?)らしいこけしが。かわいいね。
いざ1号路へ
さっそく登山路に入ろうとするも、スタート地点がわからず、スミカの周りをうろうろ。地図を見ても、縮尺が大きすぎて細かい分岐点がわかりませんでした…。やっぱり初心者ひとりは大変だなと思いつつ徘徊し、どうにかそれっぽい方向を発見。スミカの前を通り過ぎ、展望台とは逆方向に進んだ方向がスタート地点でした。
しばらく散策していると、なんだかシンボルっぽい目印が。
iPhoneと一眼両方で撮ったけど、
いずれにせよ画角に収まりきらないほどの大きさ。
蛸杉と呼ばれている大木は、樹齢450年。この杉には伝説があって、奈良時代(8世紀くらい)に高尾山が開山されるより前、天狗衆と呼ばれるひとびとが山道の整備のためにこの杉の根を切ろうとしたとき、一夜にして根が丸まったそう。それ以来、蛸の名前が付けられるようになったそうな。
都心からすぐの山に、こんな伝説が残っているんだなと感動しながらスルーする。序盤の道は整備されているし、かなりなだらかなので、左右の景色を楽しみながら黙々と進みます。
牡丹?みたいなかわいいお花も。
詳しいひとがいたら、名前を教えてください〜
緑の道を歩くと、そこは信仰の場でした
そんな自然散策気分で歩いていると、目の前に突然門が立ちはだかります。
浄心門。金で掘られた文字がかっこいい。
屋根の内側にはステッカーがたくさん貼られていた。なんだったんだろう。
山登りの方法ばかり調べて、歴史を全然勉強せずに来てしまったけれど、ここは信仰の場だったな、とはじめて思い出しました(ごめんなさい…)。お寺もあるのに鳥居もあるの?と混乱してしまうけれど、山岳信仰では神仏混合のスタイルはよくあるらしい(詳しくは高尾山マガジンを見てね)。
今の時代も、1200年前でも、何かしら悩みを抱えているひとは、山に来て自分に試練を課したり、自分と向き合いたくなったりするんだろうな…。
易しいはずの女坂を選んだはずが、辛すぎた
門を超えてしばらく歩くと、分岐路にさしかかる。どちらを選んでも同じ場所に行き着くのだけど、「男坂」と呼ばれる左側は階段でできた厳しい道、「女坂」と呼ばれる右側はゆるやかな易しい道とのこと。
男坂の階段は煩悩と数と同じく108段あるそう。こわすぎる。
乳酸で足がぱんぱんになるのは嫌なので、自分に優しく女坂を選択。けれども、5分も歩かないうちにキツくなってきた!思っていたより急勾配で、息も絶え絶えになってくる。下を見ると、4号路らしき道には木が倒れているのも見えた。山の中では事故が起きたりもするんだと気を引き締めながらも、見なかったことにして進む。
ふと周りを見ると、3歳くらいの親子連れや女子高生らしきグループ、中学生くらいの男子グループがエネルギッシュに歩いている。お年寄りもちらほらいた。ああ、わたしって体力ないんだな…とあらためて認識する。誰にも迷惑かけないように、1人で来てよかった…!
写真を見てもわかるように、道は結構混んでいるので、苦しくなってもマスクは外せない。けれど、同時に遭難する心配はなさそうで安心もした。
お目当てのごま団子やさんを発見
女坂と男坂の合流地点に、またお土産やさんが現れる。そこで、事前にリサーチする中で気になっていたごま団子やさんを発見。
白いみたらし団子と、黒いごま団子(350円)。
店頭には時期不明の「王様のブランチで紹介」の看板が。
やや硬めで食べ応えたっぷり。
みたらしの甘さとごまの香りで元気が出てくる。
食べている途中で小雨が降りはじめてきたので、そそくさと進みます。
観光スポット盛りだくさんの薬王院
さらに進むと、薬王院エリアへ。この辺りではもう疲れすぎて意識が朦朧としていたので、正直どの建物が薬王院かよくわかりませんでした。というか、建物や観光スポットがとにかくたくさん連なっています。
くぐると願いが叶うと言われている石と、ご利益があるらしい鐘。
行きの道では雨が降りはじめていたのでスルー。
社屋があったので、お賽銭だけする。お守り売り場で低音のR&Bが鳴り続けていたのが印象的でした。ここにあるお守りの効果は、縁結びとか、ひとを見分ける目を磨くものなど、人間関係にまつわるものが多いように感じられました。今も昔も、ひとの悩みは、たいてい人間関係なのだな…。
道は、徐々にコンクリートではなく裸の山道が増えてきます。舗装はされているけれど滑る…。傘を持ってこなかったことを後悔しました。
そして山頂へ!
ぜえぜえいいながら進み、ついに山頂へ到着です。
やったー!と一息つきたいものの、ひとが多すぎてやっぱりマスクは外せません。自分は体力的に結構限界だったのに、山頂には幼稚園らしき集団もいて、子供の足でも登れる道だったの…?とびっくりしてしまいました。ちょっと見たところ、ぜえぜえしている子は1人もいなかったので、わたしの登る足が速すぎたのかも…とペース配分の点でも反省。
その日は曇りだったので、山頂からの景色はこんな感じ。晴れの日は富士山や江ノ島まで見えるらしい。すごい!今度は晴れているときに来たいな、と懲りずに思う。
暗雲立ち込める山並み…。
雨足も強くなってきたので、慌てて帰ります。
下り道は遥かに楽で、テンションが上がってくる。再び、薬王院の諸々の前を通り過ぎたけれど、自力で登頂を遂げた万能感に包まれているので、何かを神に頼む気にはならなかった。この世にひとのできないことなど何もない! ただし準備とペース配分は入念に。
雨の高尾山をリフトで空中散歩
途中の売店で傘を買い、やや安心して足を進めます。行きはロープウェイできた道を、帰りはリフトで降ります。リフトには1台ずつ屋根がついていて、椅子も折りたたみ式なので、雨でも濡れないようになっていました。
首から下げていたスマホで撮影。落としたら大変だ。
高い木々のなかをぐんぐん進んでいくリフトは、開放感たっぷりです。雨音を聞きながら木の匂いをかいで、心が洗われていくようでした。ただ、かなり高度が高いエリアもあるので、高いところが苦手なひとにはちょっと怖いかも…?
かじかんだ手足をあたために温泉へ!!
山の麓に降りる頃には、気温が下がり、手足が悴んできていました。そこで思い出したのが、駅の反対側にある京王高尾山温泉です。6種類ある温泉が、1000円で楽しめるやさしい施設。350円でタオル類のレンタルもできたので、癒されてきました。温泉は露天で、山々を眺めながらほっと温まることができます。しあわせでした。
温泉では、遅めのお昼ご飯として天ぷらそばもいただいたのですが、写真を撮り忘れてしまいました…。海老、筍、春菊の天ぷらはボリュームたっぷりです。(HPにあるので見てみてね)
はじめての登山と温泉から学んだこと
そんなこんなで、ひとり登山は楽しく無事故で終わらせることができました。ところが、後日、深く反省することがありました。
家に帰ってから、「ところどころ危ないところがあったよな…」と思い、「高尾山 事故」で検索すると、ひとり登山の危険さがわかりゾッとしました。事故のほとんどは、今回登った初心者向けの1号路ではなく、4号路か6号路で起きたものです。けれども、どれだけ観光地化しているといっても、山は山。こういう可能性を踏まえて、準備やペース配分をしっかりしておくべきでした。
登山が趣味の友達に一連のことを話したら、「たしかに1号路は易しい道だけど、怪我をする可能性もあるんだから、最初は慣れてる人と一緒の方がよかったんじゃない?」というアドバイスをもらったりも。正論です。
よかったことももちろんたくさんあります。
一つは、体力的な面でも精神的な面でも、自分の限界を広げていける感じがしたこと。ここ一年は、外に出ること自体がだいぶ少なくなったこともあり、体力的に疲れることはほとんどありませんでした。ですが、山を登り切ることで、「疲れることをやり切る」楽しさ、さらにいえば、生きている実感を味わえたように思えます。
二つ目は、登山前の情報収集を楽しめたこと。見たことのない地図を見たり、建物のつくりを知ったりするのは、新しいことを学ぶ刺激に満ちていました。帰ってから、あらためて歴史を調べるのも楽しかったです。また、高尾山は初心者から上級者、家族連れからお年寄りまでさまざまなひとが訪れる場所なので、登山路も多くあります。その中から、自分が最も楽しめそうな道を選び、プランニングすることも楽しかったです。自然と、次回はどの道で行こうかなとか、中腹でやっているビアガーデンに行きたいな、とか、未来のことを考えたくなりました。もちろん、次は人と一緒に行きたい…。
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