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ある日突然、「此処にいなさい」と言われて全てが始まったように思う。決して自ら来たわけで…
暑いときは暑いしか言えなくなる呪いがある。 暑い、と勝手に漏れる声はあまりにも情けな…
父の肩には今も六発の散弾が散らばっている。 暴発した猟銃。九十八発の弾が父の肩にばら…
飲むのはちょっと待って、欠かせないものがある、と言ってキッチンの奥に入ったマスターが戻…
「炬燵」 おばあちゃん家の掘り炬燵から落ちる夢をみたことがある。落下した先は柔らかい床で…
「かすかに」 バレンタインの夜。耳の後ろからかすかに聞こえた寝息に、驚いて飛び起きた。し…
僕の宝物は妹です、と作文を書いたら、宝物、はそうやって使う言葉ではないのだとお母さんに叱られた。それではまるで「モノ」のようだから。妹との出会いが、とか、家族が、と言うのよ、だって。僕にそれらの区別ができるようになった頃も、やっぱりまだ妹が宝物であればいいのに。
母がお弁当のおかずの間に入れていたあれの名前を、私は知らなかった。小学校2年生のときだ…
一人で何処かに旅立ちたいという情緒不安定な欲求を叶えるために初めに行くとしたら、全く知…
猫背で、さらにぺったんこの靴なのに、私とすれ違う女性は大体私を振りかえって見上げる。女…