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せんすい島とすうちゃん

ザーザーという雨音で目が覚めた。
そっとベッドから起きて外を覗くと結構しっかりと雨が降ってる
「あー今日は雨かー」
言うと
「あ、すうちゃんおはよー…アメ…て言った?」
「あの…アメ?」
「アメが…降ってるの?」
キノコ達の言葉に慌てて
「違うよ!そっちのアメじゃないよ!これはお空から水が落ちてくる天気の事!」
「え、お空から水が降ってくる!好きー!」
「しっけー、いいよねー!」
「ジメジメ!さいこー!」
一転してキノコ達が楽しそうに騒ぎ出した…それもそうかキノコはジメジメした場合に生えるって前の先生が言ってたような
まだ騒いでいるキノコ達を置いて、さっさと身支度を整えてテーブルの上に置いてあるカゴに入った赤い実を一つ掴んで齧るとカレーパンの味がした。
「あ、このカレーパン…ママのカレーの味がする…」
美味しい…少し寂しいけど…私は大丈夫と
カレーパンを食べた。
ふいに窓から外を見て雨どうしょう?
これは傘をささないとダメだけれど私傘持ってない…と考えていると、視界にキノコ達が目に入った。
「あ、そうだ!」
私はベットに生えているキノコを一つ掴んで
「よいしょ!」
ポン!と抜くと
「あ、抜かれた!」
「食べる?美味しいよ!」
「僕、食べ頃!」
「いやいや、食べないよ!」
「えー!ブー!」
「食べない?ブー!ブー!」
「抜かれたのに?ブー!ブー!ブー!」
物凄いブーイング両手で耳を押さえながら
「うるさ!ちょっと待って!抜いたのは外雨が降ってて傘が必要だから、傘になって欲くて抜いたの!」
私が大声で言うとキノコはあっけらかんと
「あ、そうなんだ、じゃ、いいよー!ほい!」
ポン!と音をたてて水玉模様の可愛いキノコの形の傘になった。
「うわ、可愛い!ありがとうね!」
「うふふふ!僕可愛いだって!」
「いいなー」
「私も傘になりたかったー」
傘も持ったし急いでランドセルを背負うと
「これでよし!それじゃあ皆学校に行ってくるね!」
そう言うとキノコ達は
「行ってらっしゃいー!」
「気を付けてねー」
「早く帰ってきてねー」
「うん!いってきます!」
キノコ達に手を振って外に出ると既にカメちゃんとうーちゃんが私を待っていた。
「あ、おはようカメちゃんうーちゃん!」
そう言うと2人も
「おはよう、すうちゃん」
「おう!今日はちゃんと起きてたんだな!」
私はムッとうーちゃんに
「昨日はしょうがないじゃん!それに私ちゃんと早起き出来るし!」
「お、オレだって早起きぐらい朝飯前だ!」
「…え?」
うーちゃんの言葉にカメちゃんがビックリした顔してうーちゃんを見てる…そしてカメちゃんが私に向かって横に首を振った。
「……。」
私がうーちゃんをジーと見るとうーちゃんは気まずそうに横を向いて口笛を吹いてる
「……はぁ」
カメちゃんがため息をつき諦めた顔で
「すうちゃん学校遅れちゃうから行こうか?」
私も頷きうーちゃんも
「おー!早く行こうぜ!」
不意にカメちゃんが私の傘を見て
「もしかして、その傘ってキノコさん?」
「ああ、うんそうなんだ。私傘持ってなくてキノコ達にお願いしたの」
カメちゃんは感心したように傘を見て
「本当にキノコさんは何でもなれるんだね?」
カメちゃんの言葉に調子に乗ったキノコが
「褒められた!えっへん!何でもなれます!だってキノコですから!」
何故か自信満々で答えた。
すると今まで黙っていたうーちゃんが
「それにしてもさー何でこいつら喋るんだろうな?」
「さぁ?それは本当にそう思う…何でだろう?」
首を傾げるとカメちゃんが
「何で喋るのかは分からないけど、私…少し気が付いた事があるの」
カメちゃんの言葉にうーちゃんが興奮した顔で
「何だ?何に気が付いたんだ?カメ」
せっかちに聞くとカメちゃんは苦笑しながら
「前私とうーちゃんがキノコさん達を抜た事があったでしょ?」
「うん?ああ、皆に渡すキノコか?確かに抜いたけど…それがどうしたんだよ?」
「うーちゃんは気が付かなかった?私達が抜いたキノコさん達…抜いたら喋らなくなったの」
うーちゃんは少し考えて
「え、そうだっけか?あれ…でもそう言われればカゴに入れたキノコは喋らなくなってた様な…ん?それだとおかしくないか?」
うーちゃんが首を捻りカメちゃんを見るとカメちゃんも頷き
「そうなんだよね…私もその時疑問に思ったの…なんでなんだろうって…」
2人の言ってる事が分からなくて
「どうかしたの何がおかしいの?」
2人は傘のキノコを指差し
「そのキノコさんは抜かれたのに何で喋れるのかなって」
そう言えばそうだ…カメちゃんの言う通りだとすれば抜かれたら喋らないはずだ
「それでね、私あとで気が付いたんだけど…私とうーちゃんがキノコさんを抜くと、もうキノコさんは喋らないけど…逆にすうちゃんがキノコさんを抜いてもキノコさんはお喋りが出来るの…」
カメちゃんの言葉に私自身がビックリ…確かに私が抜いたキノコはずっと私に喋りかけてくる…え、何これ、ちょっと怖い…と引いてると、いきなりうーちゃんが
「おお!すげー!カメ良く気が付いたな!世紀の大発見だぞ!」
「いや、凄いけど…そこまでの大発見じゃないし…」
そう、うーちゃんに言っても私の言葉を無視するようにカメちゃんに向かって
「それで!カメ?」
続きをくれとばかりのうーちゃんにカメちゃんが戸惑いながら
「それだけだけど…」
見るからにガーンとなったうーちゃんを見てカメちゃんと私が顔を見合せ笑った。
私はキノコの傘を見上げながら
「ねぇ?何で私が抜いても喋ってるの?」
聞くとキノコの傘が
「うーん?わかんない!」
「わかんないだって」
そう2人に言うとカメちゃんとうーちゃんは
「わかんないじゃあ、しかたねーな!」
「そうだね…とりあえず、少し急ごうか?このままだと本当に遅刻しちゃいそう」
そうカメちゃんが言うとうーちゃんが焦った様子でピョンと跳ねた。
「ヤバイ!走るぞ!」
「ちょっと待って私!走るの苦手なんだけど…」
焦るカメちゃんに
「大丈夫カメちゃん私も苦手だから」
カメちゃんは私の顔を見てホッとした顔したけど、次の瞬間うーちゃんは私達の手を取ったと思ったら勢いよく走り出した。
私とカメちゃんは引きつった顔を見合せ
「いやー!無理!」
「やめてー!うーちゃん!」
「じゃ!2人共行くぞ!」
悲鳴を上げたけど無駄だった。

「到着!ついたぞ!」
うーちゃんの言葉に学校に着いたんだと…
繋いでいた手をようやく離してもらえたけど、私もカメちゃんも息も途絶え途絶えで何も言えなかった。
でも何とかギリギリ間に合って校舎に入る事が出来たけど…朝からの疲労が半端無い…
カメちゃんがハァハァ言いながら、うーちゃんに文句を言ってたけど…うーちゃんは両手で耳をたたんで聞こえないようにしていた。
…私は2人の様子を見ながら傘を閉じようとするとキノコはポン!と音を立てて帽子になり私の頭に収まった。
私は帽子を被り直して
「あれ、付いて来るの?」
聞くとキノコは
「うん、一緒!」
それを見たうーちゃんが
「すげー!今度は帽子かー!それ便利だなーいいなーオレも欲しい!」
「えっと、どうする?」
キノコの帽子に聞くと
「きょひ!断る!」
カメちゃんが笑いながら
「うーちゃん残念だったね?すうちゃんの方が良いんだって」
うーちゃんはチェッ!と言いながらさっさと階段を登って行った。
私もカメちゃんと2人階段を登り教室に入ると皆が
「おはよーうーちゃん!」
「はよーカメちゃん!」
「おはよう、すうちゃん!」
挨拶をしてくれた。私も皆に
「おはよー!」
と返し自分の席にランドセルを置くと、どこからか声が
「あの、あの!皆!僕の話を聞いて欲しいんだ!相談があるんだ!」
皆が声の方を見ると小さなネズミが教壇に立っていた。
教室に居た皆が不思議そうに
「どうしたんだ?」
「なになに?相談?」
「困り事?」
私はカメちゃんに
「カメちゃんカメちゃん、あの子って…誰だっけ?」
昨日の今日じゃまだ誰かわからない、するとカメちゃんが
「ああ、そうだよね、あの子の名前はチュー君」
「へー、チュー君って言うんだ。それにしても一体どうしたんだろうね?」
カメちゃんも何だろうとチュー君を見ると
チュー君は真剣な顔で
「相談って言うのは…僕のテーマの事なんだけど…皆も知ってると思うけど僕のテーマは図書館の本を全部読む事なんだけど…」
チュー君の言葉にクラスの皆が頷いてる、
図書館の本を全部読むって凄いなあと思ってるとクラスの皆が
「何かあったの?」
「どうしたんだよ?」
聞くとチュー君は困った顔で
「最近ふと思ったんだ…ただ本を読む事に何の意味があるんだろうか?って…本を読むのは楽しいけど…僕が本を読む意味が良く分からなくなって…」
するとカメちゃんが首を傾げて
「でもチュー君図書館の本もう結構読んだよね?」
するとチュー君が頷き
「もう、半分ぐらいは読んだかな?」
「うげー!あの量の本読んだのか、すげーなチュー!」
その言葉にちょっと興味がわきカメちゃんに
「カメちゃんカメちゃん図書館の本ってどのぐらいあるの?」
カメちゃんは少し困った顔して
「私…前図書館で欲しい本を見つけるのに半日かかった事があるぐらい図書館には本が沢山あるの」
大変だったの。と言うカメちゃんを見てそんなに広いなら私が図書館に行ったら…絶対迷子になりそう…でも図書館は行ってみたい…こっちの世界にはどんな本があるんだろう…読んでみたい、でもそんなに本が有ると読みたい本が見つかるのか不安だ…あ!でもと私はチュー君にハイと手を挙げて
「あの、チュー君!」
呼ぶとチュー君は私を見て不思議そうに首を傾げ
「えっと…確かすうちゃんだよね?何?どうかした?」
「うん、あのね私こっちの本が読んでみたいんだけど…お勧めがあったら教えて欲しいの…出来れば読みやすくて、なおかつ挿し絵がついてる面白い物語の本ってあるかな?」
私はこっちに来てまだ数日だ、色々分からない事だらけだけど、こっちの事を知るには本を読むと何となく世界観が分かるかもしれないと、向こうに居た時も私は図書館で本を借りて読んでいたし、お家に帰ってもテレビもないし、本を借りて帰ろうと思ったんだけど…あれ?と私がチュー君を見るとチュー君は口を大きく開けてビックリした顔をしたまま固まってる…どうしたんだろう?
そんなチュー君の様子にクラスの皆も心配したのか
「おい、チュー大丈夫か!」
「どうしたのチュー君?」
「調子悪いのか?」
私も
「え?どうしょうカメちゃん!うーちゃん!」
2人も顔を見合せ
「カメどうする?クマ先生呼んでくるか?」
「うん、うーちゃん、そうしょう」
教室から出ていこうとする2人に付いて行こうとすると
「すうちゃん!」
大きな声で呼ばれた。
え!何?と振り替えるとチュー君が興奮した顔で私の机の上に立って
「あるよ!いっぱい!…そうか!それだ!」
私はチュー君が何言ってるのか分からず
「え?何、何の話?」
「さあ、何?」
「わかんない!」
皆もパニック私もパニックだ。
カメちゃんがオロオロと
「皆一旦落ち着いて!チュー君は、ちゃんと私達に分かるように説明して!」
するとチュー君がゴホンと咳をして
「ああ、ごめんごめん、ちゃんと説明するから」
そう言うとチュー君は改めて教壇に立って
「僕…実は前から思ってた事があったんだ…図書館には色々な本があって面白いのに…それは読んだ人にしか伝わらない…それがいつももどかしかった。皆図書館の本の多さに自分が読みたい本が見つけられなくて諦めてしまってる」
カメちゃんがうんうんと頷き
「確かに私も読みたい本を見つけるの大変で…それからは図書館に行ってない…」
その言葉にチュー君が頷き
「だよね…それは本当に勿体無い事だと思うんだ僕…でも、すうちゃんのお陰でその解決策が思い付いたんだ!」
皆が私を見たけど、私は焦った!
「え?私?違うよ!知らない!」
何で私?とチュー君を見るとキラキラした目で
「すうちゃん言ったでしょ?僕に読みやすくて挿し絵がついていて面白い物語の本って」
確かに言ったけど…それが何だろう?とおもっていると、うーちゃんが
「それがどうかしたんだ?すうはただ面白い本が読みたいだけだろう?」
うーちゃんが言うとクラスの皆もうんうんと頷いてる、するとカメちゃんが、ああと
「成る程…すうちゃんの読みたい本をチューならお勧め出来るって事だよね?」
カメちゃんの言葉にチュー君は笑顔で頷き
「そうなんだ!僕は図書館の本を半分だけど読んだ。何処にどんな本が有るのなんて朝飯前だ!」
胸を張るチュー君に私は
「ああ、なんだチュー君は司書さんみたいだね」
と言ってしまった。
するとうーちゃんが不思議そうに
「ししょ?って何だ?うまいのか?」
私は、なんとも云えない顔でうーちゃんをみながら首を振り
「何で急に食べ物が出てくるの?違うよ…うーちゃん司書さんって言うのは、図書館の本の事を知ってる人の事」
「なんだよ、食べれないのか…それで?」
「うん、さっきカメちゃんが言ってたように探してる本が有れば司書さんに聞くと何処にあるか教えてくれるの、私も小さい頃幼稚園で流行った絵本が有ったんだけど題名が分からなくて司書さんにに絵本の内容を伝えると直ぐに教えてくれたんだよ」
そう…小さい頃私が司書さんに
女の子
お留守番
小さなプリン
と伝えると読みたかった絵本を探してくれた。あれは本当に嬉しかった。
ママに何度も読んでもらった覚えがある
ふと顔をあげると、チュー君がキラキラした顔で
「僕!図書館の司書さんになりたい!」
と大きな声で叫んだ。皆ビックリしていると
チュー君は張り切った顔で
「僕!ちょっと図書館に行ってくるね!」
そう教室から出て行こうとすると、
パン!と手を叩く音がして、音の方を見るといつの間にかクマ先生が居た。
クマ先生はニッコリと
「チュー君今から、授業を始めますので図書館に行くのはその後でね?」
その言葉にクラスの皆が笑った。チュー君も笑いながら
「すいませんクマ先生」
自分の席に着いた。
「はいはい、皆さんも席に着いてください!」
そう言うと授業の開始のチャイムがなった。