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アート(芸術)とホライズン(地平)を組み合わせた館名『アーティゾン美術館』

月に一度は、美術館に行くことを自分に
課しています。
美術館だけでなく、話題になっている建築物や
ホテル、商業施設などを可能な限り訪れることに
しています。  

仕事のため、もしくは自分の感性を磨き高めるため
と考えた場合は程度の差はあれ、義務感が出ます。
雑誌やSNSで話題になったものを、自分自身の目で
見たいと思う気持ちが前面に出ると、義務から解放
され、休日の楽しみ、リフレッシュになります。  

今回は、2020年1月18日にオープンした
アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)に
出かけました。

6階展示室ロビー  

木の床、真鍮の表面にバイブレーション加工を
施したことで柔らかい光を放つゴールドの壁。
黒いアイアンのフレームとガラスの座面が印象的な
ベンチは、倉俣史朗の作品。

地平線をイメージした光が美しい。

壁と床に貼られた天然石タイルの目地が揃うと、
整然とした静謐な空気感に満たされます。
気持ちの良い空間です。  

最適な鑑賞環境を提供するため、採用されたのが
日時指定予約制チケットです。
絵画を鑑賞するために、人数制限をしているため
ゆっくりと作品を見てまわることができます。  

4階から6階まで三層の展示室を6階から見ていく
ように順路構成がされています。

**coordinator’s eye **

展示室の木の床は、
6階が一番濃い色、5階、4階と薄くなります。
グレイッシュなトーンでまとめられた
グラデーションがお洒落です。
 
この色合い、立ち去れなくなるぐらい美しく、
しばらくの間、うっとりと眺めていました。

エレベーターの扉や、エスカレーターの壁面を
飾るゴールドの美しい真鍮壁。
表面をバイブレーション加工で仕上げ、
柔らかい光を放っています。
日本人好みの金色です。  

バイブレーション加工は、住宅ではキッチンの
天板などに使われていて人気があります。

石材の色合いも揃えられています。  

空調吹き出し口になる展示室床面の
フローリング目地。
近くで見ると目地の隙間は通常より大きく(5mm位)
床全体から新鮮で安定した空気を緩やかに
押し上げています。  

舘内に配置されたオリジナル家具のデザインは、
デザイン事務所・トネリコ。
身体に自然に寄り添うカーブが、快適な座り心地を
実現しています。
グレイッシュトーンの美しい色合いです。
床同様、置かれた場所によって色を変えていました。

エントランス正面にある大階段です。  

テラゾ(人造大理石)タイルを敷き詰めた床と壁が
印象的な空間です。  

**coordinator’s eye 
**
展示されていた絵画は、国も時代背景も異なります。
今回の展示の仕方は、時代区分の垣根をあっさりと
取り除いていることに驚きました。
950-660B.C. に作られたエジプトの
ブロンズ像『聖猫Sacred Cat』と同じ空間に
1976年に作られたヘンリー・ムーアの同じく
ブロンズ像『横たわる人体Reclining Figure:Prop』
が展示されていました。  

古代から連綿と受け継がれる表現の存在。
想像を超えた遥かな時間軸をフラットに
地平上に並べた展示に五感がフル活動しました。

展示作品については、言及しませんが、
美術の教科書で見た覚えのある絵画を目にする
ことができます。
印刷された小さな写真では、わからなかった
作品から溢れ出る力に圧倒されました。
1秒毎に変化し続けると言われる脳細胞が、
次々と変化していくような体感でした。

一つだけ印象的な作品を挙げるのであれば、
『薔薇』1932年 安井曾太郎
厚みのある花びらには、たくさんの絵の具が
塗り重ねられていました。
印刷ではわからない花びらのぼってりした重さと、
繊細に描き込まれた花瓶が、黒の背景から
くっきりと浮かび上がってくるような力のある
作品です。  

職業柄、美術館の内外装デザインにばかり
目がいってしまいます。
今回は、床や壁、扉や手すりなどパーツごとの
美しい色遣いに圧倒され続けました。

アーティゾン美術館、何度も訪れてみたい
美術館です。


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