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大人の美術館探訪〜マティス 自由なフォルム・国立新美術館〜


2023年「マティス展」

2023年東京都美術館で開催された「マティス展」に行きました。
フランス・ヴァンスにあるロザリオ礼拝堂は、生涯を終えるまで、身体と感性が健康なうちに訪れたいと強く思いました。
一緒に行き、作品をカメラにおさめてくれた息子のMayaも同じことを感じたそうです。
ロザリオ礼拝堂の午前11時の光を纏ったステンドグラスをこの目で直に見るまでは、人生を終えることができないと強く思いました。

2024年「マティス 自由なフォルム」

国立新美術館へ行く

1年振りのマティス展です。
ポスターやチケットには、今回初めて来日する切り紙絵「花と果実」が印刷されていました。
普段はニース市マティス美術館に展示されています。
この作品は、陶版画の下絵として作成されたものだそうです。

4.1m×8.7mの作品
心が弾む色遣い

今回はこの作品を直に見るだけでなく、写真におさめることもできました。
入り口で音声ガイドを借り、安藤サクラさんの解説を聞きながらゆっくり作品を見て回りました。

来日作品

ブルーヌードⅣ

ブルーヌードはⅠ.Ⅱ.Ⅲ.Ⅳと4枚の作品があります。
今回展示されたのはⅣのみ。この作品にだけ、木炭による下書きの跡が残されていることが、他の3作品との違いです。
「マティスの意図するところは何か?」と見る側に投げかける展示ではないかと思いました。

白と黒、さらに線だけで描かれた作品もマティスの晩年の集大成の1つと言われています。

大きな顔、仮面


「大きな顔、仮面」は、日本の伝統芸能である能の面(おもて)をイメージしたものと紹介されていました。

木(プラタナス)


「木(プラタナス)」は、ロザリオ礼拝堂の壁面を飾る巨大な陶版画に繋がっていきます。

ロザリオ礼拝堂内部を原寸大再現

今回もう1つの大きな見どころは、フランス・ヴァンスにあるロザリオ礼拝堂内部を原寸大で再現した展示スペースです。

窓を持たない美術館の中に光の宝石箱と評されている内部空間を再現するのは、至難の技だったのではないかと思いながらも楽しみにしていました。

礼拝堂の模型
屋根や扉の色遣いが彼らしい

「全生涯の仕事の到達点」とマティス自身が振り返っている作品が、このロザリオ礼拝堂の設計です。
建築、特に教会建築には芸術の要素がたっぷりと詰まっています。
彫刻、絵画、ステンドグラスのデザイン、照明器具、チェアなど家具の意匠設計など。
そのすべてに目を配り、一から考えていく途方もない仕事です。
当時、マティスは77歳。
身体も決して万全ではなかったと聞いています。
マティスを突き動かした彼自身の内なる静かで熱いエネルギーがダイレクトに伝わってきました。

ロザリオ礼拝堂内部

光を背負う形のステンドグラスのデザインは「生命の木」と名づけられています。

ステンドグラスのための習作
ステンドグラス「生命の木」
礼拝堂の壁面を飾る生命の木
神は光に宿る

ずいぶん前になりますが、スペイン・バルセロナにあるサグラダファミリアに行ったことがあります。
教会の中にある冷んやりとした石造りのベンチで、その空間が醸し出す静かで厳かな空気感に包まれ、ただじっと座り続けていました。
しばらくすると、太陽の位置が変わったのでしょうか、高い天井からステンドグラスを通して、幾千もの光が足元に降り注いできました。
きらきらと色を纏った光の束が目の前に落ちてきます。
今まで見たことのない神々しい光です。
その時、この光こそが神ではないかと強く思いました。
何の根拠もありませんが、激しく心が動いた瞬間でした。

祭壇とステンドグラス
タイル壁画「聖ドミニクス」
タイル壁画「十字架の道行」
光を纏った聖ドミニクス

「礼拝堂を訪れるのに、一番好ましい季節は冬です。一番いい時間というと、それは朝の11時です。」
マティスの言葉です。

いつの日か、フランス・ヴァンスにあるロザリオ礼拝堂を訪れる時は、晴れた日の冬の朝だと覚えておこうと思います。

冒頭にも書きましたが、生涯を終えるまでにしたいことの1つがロザリオ礼拝堂に行くことです。
心と身体が美しさを素直にまっすぐ受け止めることができるうちに必ず行きたいと思います。

美しい光景
ツツジの花が満開です
自分にお土産

今回の写真も長男のMayaに撮ってもらいました

ご参考になればと思います。

マティス
自由なフォルム
会場・日程/2024年2月14日(水)〜5月27日(月)
場所/国立新美術館 企画展示室2E
東京都港区六本木7-22-2

展覧会ホームページ
https://matisse2024.jp

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