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「僕は酸っぱかった」

"Ich war sauer."
そう言われて目が点になったのは少し前のこと。
sauerとは「酸っぱい」を意味する形容詞だ。

Ich war はI wasだから、直訳すると「私は酸っぱかった」となる。
で、これがドイツ語だと「私は怒っていた」という意味になる。

彼が怒っていた理由は私のせいだったのだけど、私からすると、怒らせるつもりもなく、おまけに怒っていることにも気づいていなかったので寝耳に水だったのだった。

向こうは私に怒って対応が雑だったことを謝ってきたので、むしろ全然気づかなかったよ、ごめんね、と言ってその場の会話は終わった。

時が経って、今私はその彼と一緒に働いている。
そしてこれが、もうなんともややこしい。

友人と(正確には元デート相手と)働くのってこんなに大変なのか、ということを実感した7月だった。

普通の同僚には見せない領域まで見せているけれど、デーティングで終わった仲なので、全てを知っているわけでもない。(正確に言えば、「全てを知る」人なんていないのだろうけど。)

おかげで互いに「こんな人だったの?」と思うこともあり、相変わらず感情は忙しい。

私の同僚の前での立ち居振る舞いを見て"Du bist zu süß."と言われた時にも面食らった。
Du bistはyou are、zuはtoo、süßはsweetだ。
なんでこの人は職場で急にそんなことを言うの??

となってからややしばらくして、これは「褒め言葉」ではないのだと気づいた。
要するに、「子供っぽい」と言いたいのだ。
確かに私はその時、上司と若干ややこしい話をしていて、意識的に「シナを作った」ところがあった。

なるほど、それが子供っぽいと言われるのか。と思い、「その行動によってどんな情報を得ようとしているか」と言う話をすると、今度はそれはmanipulativだと言われた。

・・・言われてみればそうだけど、それが何か問題なのか?
日本人の処世術としてはよく使われる手口だと思うが、「芝居くさい」のは嫌われるようだ。

いちいち説明、そして議論、議論、議論。ようこそドイツワールドへ。
ドイツ語で喧嘩することはあまりなかったので、大変だし、面倒臭い。

思わず「なんで私たちは最近喧嘩してばかりなの?」と聞いたら、「これは喧嘩じゃないよ。異文化コミュニケーションだし、誤解を解いてるだけだよ。」とニッコリ言われた。

甘いとか酸っぱいとか、なんでそんな言葉が感情表現になるんだろうか。
ちなみにドイツ語では、辛い(scharf)も感情表現で使われることがある。

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