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コロナ狂想曲

ここ一週間ほど、夕方になると近所に雀の大群が集まる。
どこからともなく複数の群れが集まってきて、大群になり、電線に並んでピーチクパーチク力の限り鳴いている。

何をしているのかはよくわからないのだが、鳥がひたすら集まってくる様はヒッチコックの映画『鳥』を思い起こさせる風景で、なんだかとても面白い。無論、若干の不気味さもあるのだが。

いずれにせよ、「連日」夕方になると「部屋から」この不思議な光景が見える。

そう、私はこの一週間ずっと家にいた。
なぜか?コロナに罹ってしまったからである。


実はコロナに罹患するのはこれが初めてであった。
運よくこれまでかからずにこれたので、初めに喉の違和感を感じた時にもただの風邪だと思っていた。

ここ数年、あまり風邪もひかなくなっているので珍しいな、と思いながら薬を飲んで寝たのだが、次の日になっても喉の痛みが消えない。
消えるどころか強くなっている。そしてなんだか頭も重い・・・

というところで抗原検査をしたら、バッチリ陽性だった。
ご存知の通り我が家には末期がんの患者がいるので、父にコロナを移すわけにはいかない。すぐさま私は部屋に隔離され、以降トイレの時以外は部屋から一歩も出ることなく過ごすこととなる・・・はずだった。

現在、厚労省の規定では発症日を0日目として、5日間の自宅待機が推奨されている。コロナが5類に移行してからはあくまで「推奨」であって義務はないのだが、おそらく多くの会社がこの指針をもとに社内方針を決定していることと思う。

我が社も御多分にもれず、発症日を0日目として5日間の自宅待機(場合によっては在宅勤務)が課されていた。

私の場合は日曜日に発熱し、抗原検査で陽性が出たので、これを0日目とすると金曜日まで自宅待機ということになる。熱が出て頭が重かったので、とにかく日曜日はずっと寝ていた。

月曜日の朝になると、解熱剤の効果もあって、熱は少し下がり始めていた。比較的すぐに仕事もできそうなので、休みではなく在宅勤務で働きます、と上司に連絡すると、上司から返信がきた。

「コロナになったことを証明するために、医者にかかってください」

頭の中にはてなが飛ぶ。
「抗原検査で陽性なので、医者にかかる必要性がわかりません」
と返すと、「それが規則です」と返ってくる。

確かに、回章には「コロナ感染の判別は原則的に医師の判断に従う」と書いてある。
「『原則的に』って書いてあるってことは例外があるんですよね?」というと、煮え切らない返事。「抗原検査で陽性で、PCRで陰性ってことはないと思いますけど。症状もありますし。」と返したら、先方からは以下の返事が返ってきた。

「医者で検査はしなくてもいいです。でも医者の判断が必要です。」

???
何を言ってるんだこの人は、と思った。
医者が検査しなくてもいい?
じゃあその医者はどうやって私がコロナに罹患していると判断するの?

戸惑っていると、さらに畳み掛けられる。
「何日目を発症日とするか、医者に判断してもらってください」

ここまで言われて、私の堪忍袋の尾が切れた。
「検査なしに医者がコロナ罹患を判断するんだとしたら、結局それは抗原検査で陽性が出ている今の状況と何も変わらないですよね?そして、発症日を医者に判断してもらえと言いますけど、その『医者の判断』は結局私への問診で決まるんですから、『日曜発症』の事実が変わるわけないですよね?だとしたら、なんで医者にかかる必要があるんですか?」

「とにかく規則なんです」

これしか繰り返されない。
水掛け論にしかならないので、もうこれ以上の抗議はやめた。


月曜日は会社とのバトルに費やしてしまったので、火曜日に病院に向かった。抗原検査で陽性が出ているので、あらかじめ病院に連絡しなくてはならない。発熱外来に電話をして、予約をとって、検査をしてもらうことになった。

まだフラフラしているので、母に車を出してもらって病院に向かう。PCR検査をして一度家に帰って、1時間後に再度病院に向かって医者の問診を受けた。

PCR検査は陽性。(当たり前だ)
問診の結果、日曜発症、金曜まで自宅待機と告げられる。(当然である)

わかりきった結果を得るために、わざわざ母との接触回数を増やし、一番避けたい家族内感染のリスクを上げなくてはならない。おまけに自分自身の体調もまだ悪い。この状況にイライラした私は改めて上司に連絡し、「聞き忘れましたけど、これだけ医者に行けっていうんですから、当然検査代は負担してくれるんですよね?」と聞いた。

返信は、「5類に移行した後は、検査代は負担しません」であった。

再度頭が爆発、である。
ちょっと頭で考えれば如何にこの一連の流れが無駄であるかはすぐわかるのに、「規則だから」の一点ばりで人に行動を強制し、その上料金も負担しない?

5類移行後、PCR検査はもはや無料ではない。
私の場合は五千円程度かかった。
おかしくないですか、という私に対して、先方からの返信は「だから、検査しなくてもいいんです!抗原検査の結果で陽性って判断する医者もいます!」と逆ギレ。

どこの世界に「検査なく」「コロナ陽性を判断できる」医者がいるのか?
抗原検査の結果で医者が判断するなら、抗原検査で陽性であれば医者にかかる必要はないのでは、という最初の疑問に立ち返る。

徹頭徹尾、無駄である。
おまけに、実は私と同時期に、職場では他にも4人感染者が出ていた。誰がどう考えても、いや考えなくたって、コロナであることはわかりそうなものである。しみじみ私は、「無駄」が嫌いだ。

前回の職場以来、久々に仕事場で激怒した私は上司とメールでバトルを繰り広げ、最終的には、「仰ってる方針には合理的に意味がないと思います」とまで言った。その後返信はない。(爆!)


ちなみに、順調に回復するかと思われたコロナであったが、5日目になってもなんとなく頭痛が残った。そしてようやく頭痛が治ってきたと思ったら、今度は軽い嗅覚障害も発覚し、予想以上にしつこい。

改めて、こんな病気にかかりたくなかったなと思うが、早々にここを去らねばならない、ということに気づけてよかったとも思う。これが上司の問題なのか、我が社の問題なのか、日本社会の問題なのか、未だ判別はつかないが。

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