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もういない8月ときみへ

辛い事と優しさを同時に思い出して、体温も声も蘇り、変わってしまった僕の心は、そのノスタルジアに涙を流しそうになり、あの日の愛を去年の夏に受け取って、今年の夏、その愛を返した。最後に伝えた言葉は、「君のおかげで今全部うまくいってるよ。でも、思い出したくなかったよ。」君は最愛だったから、きっと最後の好きという感情だと確信があったから。またねではなくて、じゃあねだった。深く考えすぎなのかもしれないけど、もう会えない気がした。僕らは生きている限りは立ち止まれない。辛くて悲しくて、切なくたって、歩き続けなければいけない。残酷な夏は、終わりを告げる。僕らの終わらない夏も、正しくは、終わらせることができなかった夏も終わってしまったから。夏の未練は秋に流れて、僕らは思い出になって、時間がたってたまに思い出して、仮に恋人ができても、君を忘れることはないだろう。恋人の手を握っても、君の手の温度、感触は忘れないだろう。唇を重ねても、君の優しい香水の香りだってチラつくだろう。もう、純粋には人を愛せないよ。君以外は。嫌に天気が良くて、今日だけは雨が良かった。8月が来るたびに君を思い出すのだろうか。カレンダーから8月を破き捨てて、秋風が思い出を運んで、辛くて泣いた。秋雨はそれを流した。枯葉がはらり、涙を拭い、冬へと足を運んだ。君は前に進めていますか。秋の途中でも君を想う。冬空が乾いた雨を降らして、僕の頬を伝った。未来に取り残された僕を見て、過去は心で変わって、季節は無慈悲に変わる。

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