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【UWC体験記㉔】上級生(2年生)として新入生を迎え入れるーUWC生活残り1年の覚悟

今回からやっと、2年間のUWC生活の2年目について主に書いていきます。1年目、2年目で共通して参加したイベントなどは基本的に省いていきたいと思います。

8月末、私たちはまず1年生が到着する3日前に学校に戻り、1年生が来てからの1週間、1年生たちがオリエンテーションを受けている期間は私たちも授業はありません。

1年生の時の衝撃を受けまくりだったオリエンテーション週間について、未読の方は以下をご覧ください!


歓迎準備

新2年生として同級生だけで過ごす3日間、寮の約20名のメンバーでは昨年から抱えていた強い思いがありました。

今年こそは2学年が仲良い寮になりたい!

というのも、コロナ禍だったということもあり昨年の2年生たちは私たちを盛大に歓迎することもあまりなく、その後も勉強で忙しいからとあまり私たちと交流してくれませんでした。そしてそのまま私たちも1年生同士で仲良くなっていき気が付いたら2年生の卒業になってしまい、最初の2年生の頑張りがどれだけ大事だったかに気付くことになりました。

また、昨年はほとんどの部屋が1年生部屋、もしくは2年生部屋と分かれており、そもそも顔を合わせる機会が少なかったのもあります。今年はその少し苦い経験からみんなでハウスペアレントにお願いし1年生と2年生の混合部屋にしてもらい、何回も話し合いを重ねどうやって歓迎ムードを作れるか考えます。

私も寮長として積極的にみんなをまとめ、寮の外壁に1年生の名前を書いたり、小さな手紙を書いたり、寮としての壁画を作ったりしながらとても楽しみに待つ期間でした。

寮のデコレーション
寮全員の名前を入れたポスター

1年生の到着!ーフライパンとお鍋で歓迎

そして3日後、1年生到着の日がやってくると朝から私たちはソワソワ。昼頃から約2時間おきに空港からの大型バスがやってきて、30人ほどずつ1年生を運んできます。

最初のバスの到着には2年生のほとんどが群がり、各自フライパンとお鍋をおたまなどで叩きながら(なるべく大きな音を出せるように)とにかく大騒ぎ。そしてバスから1人ずつ降りてくる1年生に名前、出身地、寮の名前を叫ばせ、また同じ寮の2年生は大歓声。

1年生の到着(学校インスタグラムより)

そしてその寮の2年生、もしくは同じ国出身の2年生が1年生のスーツケースを持ち、寮まで案内します。

数年前の先輩にちらっと聞いていた通りの熱気と盛り上がりに、コロナの影響でこのような歓迎は無かった私たちはとても感慨深くなります。

私も同じ寮の子たちや事前に少しメッセージをしていた日本人の後輩たちに無事会えることができ、ワクワクが止まりません。

ただ正直、先輩たちが全力で料理器具を叩きながら叫んでいて、そこら中からスピーカーの大音量の音楽が聞こえてくる初日は、特に大人しそうな1年生たちからすると怖そうで少しかわいそうでした(笑)。


1年前の自分の姿を見る

そして1年生が到着した初日からみなで寮の前の芝生で円になってゲームをしたり、一緒に食堂に行ったりと私たちはかなり積極的に話しかけていきます。

やはりこの最初の期間で1年生と話す中、ほぼ必ずと言っていいほど聞くのが「なんでこの学校に来ようと思ったの?」ということ。

世界平和を掲げる全寮制のインターナショナルスクールなんて、流れでなんとなく、や受験した学校の中でここが受かったから、といった人はもちろんほぼいなく、ほとんどの生徒が通っていた学校を中退して来ています。

なので理由が違えど、みな共通するのは、とても強い思いを持ってここに来ているということ。そして1年生から出てくる答えは「自分をチャレンジしてみたい」「社会問題に対してアクションを起こしたい」「自分の世界を広げたい」など、私や他の同級生たちが昨年話していたことにそっくり。

1年生たちが目を輝かせやっとUWCにやって来れた喜びを語る中、私自身の小学校6年生からの夢であったUWCに来るまでのプロセス、そして去年感じた感動が思い起こされます。

そして1年生たちの期待を壊さないように、来てよかったと思い続けてもらえるように、私は何を聞かれてもこれから待つ楽しいことや良い経験ばかりを強調して話し続けます。思い返せば、去年私たちの1つ上の学年も私たちに同じようにポジティブな面ばかりを教えてくれていました。

ただ、私たちはこの1年間を通して、UWCが来る前の期待とは少し違うことも分かっている。UWCに行く価値自体は私の期待以上のものだったけど、誰しもががっかりする時がやってくるのです。

というのも、UWCの「教育を通して平和で持続可能な未来を作る」というミッションや約100カ国から高校生が集まり寮生活をする、というところを聞くとどうしても、毎晩皆でキャンプファイヤーを囲んで円になり国際課題の解決法を語り合う、というようなイメージが浮かびがちです(笑)。

ただ現実はもちろんそうではない。高校生としてIBを履修している以上当然勉強は大変だし、大学受験にも真剣に取り組まないといけない。そして誰もがみな、入学当初のような意識の高さを保ち自分に厳しく生活し続けられる訳でもなく、自分が寮で使った皿さえ洗わないような人もゴロゴロ。

UWCは理想郷では無く、あくまで1つの高校。ただ普通の高校とは違い、自分を成長させられる可能性が無限にある場所。

UWCにたどり着くまでの思いが強ければ強いほど、その幻想とのギャップにがっかりするときはやってきます。よく考えれば当たり前のこの事実を私が来る前に知りたかったかと言われれば、そうではありません。

もし来る前に知っていたら、おそらく私はかなりのショックを受け、UWCに行く意欲は一気に低くなってしまっていたでしょう。同時に自分に設定する達成基準も低くなっただろうし、プレッシャーのかけ方も違った。

結果的に、「自分を成長させられる可能性が無限にある場所」を有効活用できなかったはずなのです。

そして、私たちが経験したがっかりさえも、とても大切な社会勉強でもあります。社会に出ても、完璧な環境なんてない。その中でも自分が得たいものを得るには人一倍自分を律して他者とのコミュニケーションも上手くならないといけない。この中で生き抜くことは理想郷で生き抜くことよりもずっと大切なスキルだと思います。


自分への約束

去年の自分と全く同じように、一つ一つのことに圧倒され、何か小さな失敗でもものすごく深刻に受け止めてしまい焦っている1年生たちの姿を見て、1年間経ったことでこの環境が「普通」になりかけている自分に気付きます。

今までがむしゃらにチャレンジし続けてある程度自分にとって有意義なことをやれてこれたことで余裕が生まれ、この生活が日常になってきている。これは良いことでもある反面、この環境がいかに恵まれていて特別なものであるか、初心を思い出さないとあと1年を最大限活かせないかもしれない。

そうして私がたどり着いたのは、自分に2つの約束をすること。
1.「疲れた」と言わない
2.「忙しい」と言わない

この2つの言葉はACでの生活で最もよく聞くものです。そして誰かがこの愚痴をこぼすと相手は大抵「自分の方が疲れている/忙しい」ということを言いたくてだんだんやっきになってくる。乗っかりたい気持ちは分かるんだけど、お互い何もメリットのない会話だな、と思っていました。

そしてこの2つの言葉を言っていると新しい機会などにも出会えにくくなる。どんなに疲れていても、どんなに忙しくても、絶対にそれを表に出さずにどこまでも挑戦し続けよう、と決意しました。

実際にびっくりするほど忙しかった2年目で最初の方はこの約束はとても上手くいきます。しかし、その後この約束の負の面、そしてそれに伴う自分の弱さにも気付くことになりました。


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