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【UWC体験記③】到着!ーオリエンテーション週間

人生で大きな変化や長い間待っていたことがいざ迫ってくるときにはあるあるだと思うのですが、オリキャン終了から渡航日までの1か月半の期間はどんどん不安ばかりが募る日々でした。

思い描く形と違ってがっかりしたらどうしよう、自分がちゃんと2年間をフル活用出来なかったらどうしよう、応援してくれてる人の期待を裏切ったらどうしよう、馴染めなかったらどうしよう、落ちこぼれるか勉強だけで手一杯になってしまったらどうしよう、、、、、

今考えると実際に行ってみるまでは何もしようがなく、本当に無駄な心配ばかりしていたなと思います。

ウェールズへの旅

空港に何人か友達が見送りに来てくれ、東京からロンドン・ヒースロー空港までの12時間のフライトに乗りました。

ヒースロー空港

空港内の待ち合わせポイントに着き、初めて数人の先生と同級生たちと顔合わせ。ヨーロッパ人ばかり、しかも皆すでに友達のようでかなりびびってしまったのですが単純にヨーロッパ圏からの便との時間と被ってしまっただけのようだとあとから分かりました。

そして初めて私と似て静かそうに見えたブラジル人の同級生と話しました。本当に最初は「背高いね...」といった程度の話しかできませんでした。ただ同じ寮だということが分かり、とても心強かったです。

そして学校からの大型バスに30人程度の同級生と乗り、4時間のバスの旅が始まりました。この時点でイギリス時間午後4時、日本時間では全く寝ずの深夜0時だったので疲れはかなりたまっていたのですが、同級生5人ほどと話し通しました。

どこ出身なのか、何が楽しみなのか、何が不安か等、自分と似た感覚の人がいると実感できてとても安心できた覚えがあります。この初日に話したメンバー、特に同じ寮のブラジル人の子とは2年たってもこの時の話をしてよく懐かしんでいました。


学校到着

4時間後、やっと学校に着くと体育館に案内され、全員保健の先生よりコロナ検査を実施されました。そして並んで椅子に座り待つこと20分。全員の陰性が確認できたところでやっと同じ寮のメンバーでスタッフと一緒にそれぞれの寮まで歩きます。

この時点で夜9時。外は真っ暗で何も見えない中、重いスーツケースを2個運んで坂道を上るのは非常にきつく、ワクワクどころではありませんでした(笑)。

坂道を上る

寮が並んでいるところに近づくにつれ、だんだんと叫び声や何かを叩く音が聞こえる。おそらく歓迎してくれているのだとは分かりつつ、正直恐怖でした。

ただ、私たちの寮に到着した時。やっと明かりで照らされ見えたのは、寮の2年生らしき約20人が寮の前に立ち、フライパンやお鍋を様々な棒で叩き、大声でその時到着した私たち3人を迎えてくれている姿でした。

そしてそのうちの1人が「名前と国籍とpronounを大声で叫べ!」と言い、私たちが1人ずつ、”Sara, Japan, she/her!” といった形で超簡単自己紹介をするとまたまたガンガン叩いて叫んでのお騒ぎ。

そして2年生が3人ぐらい駆け寄ってきてくれ、私の荷物を運んで寮の2階の私の部屋まで案内してくれました。部屋に入ると4人部屋のうちもう2人は到着しており、簡単に挨拶をした途端今度は寮内のツアーを2年生の1人がしてくれました。私が到着したのは最後に近い時間のバスだったのでどこに行っても2年生や1年生がすでにいて、皆挨拶してくれました。

一番新しい寮に配置されました(翌日撮影)

そしてやっと解放され、自分の部屋のベッドに座れた時には夜10時。日本時間の朝6時と、全く寝ずに24時間ほど経過しており一旦ベッドに寝そべった時にはもう全く動けませんでした。

寮の部屋の1人分スペース

ただ2年生がしてくれた熱狂的な歓迎は頭から離れず、あーやっと来たんだ、この寮としての団体に属してるんだととても嬉しかったです。


オリエンテーション開始

到着した次の日から1週間がオリエンテーションウィークとなったのですが、私たちの年はコロナにより通常とは大きく異なった形となりました。

最初の10日間は寮ごとで隔離となり、基本的には寮から外には出れませんでした。食事も寮まで運ばれてきて、全校集会や様々なオリエンテーションプログラムはオンラインで参加といった形でした。

初日は校内ツアーを寮の2年生がしてくれました。ただ先生が1人引率の元、他の寮とばったり合わないように時間を調整して。やっと明るい中で学校を見ることができ、お城やいくつもある広場、海、森などすでにかなり膨らんでしまっていたイメージをはるかに超えてくる壮大な校舎。どこに行っても完全に観光気分でずっと圧倒されまくりでした。

お城の校舎
ローズガーデン
Seafront
フィールドの1つ
夜のお城

そして初めてのtutor meeting。tutor group とは6~10人程度の小人数を1人の教員(tutor)が受け持ち、週一回顔を合わせ生活面、学業面で何か問題があれば話し合うといったグループです。1年目も2年目も幸いなことに私のtutor groupはいつも雑談で盛り上がるようなとても仲の良いグループでした。

UWC Values Talk

オリエンテーション2日目の夜、寮の目の前の芝生に1年生が全員集められると何人かの2年生から、UWC Valuesとは何でしょう?とクイズが。恥ずかしながら私はここでUWC Valuesというもの自体初めて耳にしました。

  • International and intercultural understanding (国際理解と異文化理解)

  • Celebration of difference(違いの祝福)

  • Personal responsibility and integrity(個人の責任と誠実性)

  • Mutual responsibility and respect(相互の責任と尊敬)

  • Compassion and service(思いやりと社会貢献)

  • Respect for the environment(環境への敬意)

  • A sense of idealism(理想主義)

  • Personal challenge(個人的挑戦)

  • Action and personal example(行動と個人の模範)

以上の9つとなり、よく見てみるとこれをみんなできたらそりゃ世界平和も簡単だよなという道徳の教科書にあるものを全て足してみたみたいなものです。それでもこの時にはなんて素晴らしいvalueなんだと思いました。

そして1年生が1人ずつ、なんでUWCに来たいと思ったのかを話すことに。1人、また1人と話すほど、どんどん前かがみになっていきました。

「やる気が無いことを良しとする環境が嫌だった」「自分は外向き思考で一生国から出ない周りと比べて浮いていた」「自分の国の教育システムが窮屈すぎた」「自分を挑戦してみたかった」「自分の手で社会貢献をすることが応援される環境が欲しかった」…

そう、どれも私が今まで強く思ってきたことばかり。

その後小グループに分かれてより詳しく語り合ううち、そこら中から涙が。私も、ここが私が来たかった場所だ、と感動し、この夜は今でも忘れられません。

Consent Talk(同意・性教育)

Consentとは同意、という意味で近年よく注目を浴びる性的同意だけでなく広く使われています。高校生が寮生活を送る上ではこれは非常に大切な概念となります。

例えば、誰かと写真を撮ったらそれをSNSに上げる前にはconsentが必要。ルームメイトで親友であっても服を借りるときにはconsentが必要、といった感じです。

Consentについてはオリエンテーションウィークだけでなく、一学期中は何回かワークショップが開かれました。

私が特に衝撃を受けたのはどれだけ性教育についてオープンに話されているかということです。

2週目に2つの寮合同で実施されたconsent talkでは2年生何名かにより性行為におけるconsentはどういうことなのかの説明があり、実際に様々なシナリオを例に上げてどうしないといけないのかを深くディスカッションしました。

そのtalkの最後に2年生の1人が、

「いいか、ここにいるお互いはみんなこれから家族になるんだよ。だからお互いをrespectして傷つけてはいけないんだ」

と言った時の真剣な表情はいまだに頭に焼き付いています。


そして同じ週、今度は警察が来てconsentについてのお話がありました。序盤、警察がレイプの定義を説明した時、1人の生徒の手が上がりました。

「それでは男性はレイプの被害者にはならないということでしょうか」

「法律上はなりません」と警察が答えると、今度は別の生徒が、

「その定義はおかしいんじゃないですか。男性が受ける性被害を否定しているんですか?」と。大きく賛同の声が上がります。

そして次第に上がる手の数は増えていき、もはや誰に当たるとでもなく1人ずつ立ち上がり、抗議とも怒りとも言える声をぶつけていきます。「そんなのはおかしい」と。

最初は冷静に否定していた警察の方も次第にイライラして来ているのが伝わり「次に進ませてくれ!」となんとも異様な雰囲気に。結果的にかなりの数の生徒が発言し終わった後、ほぼ終了の時間が来てしまい、全く別のトピックに少し触れ警察は帰っていきました。

私含めほとんどの1年生はもちろん終始唖然。自分の意見をここまで堂々と言える場所、警察に対してでもお互いの味方をし合える環境なんだというのは今までで経験したことない感覚ですが、今までで感じたことない頼もしさを自分の所属するコミュニティに対して感じました。


そしてこのまた数週間後。夜寮のデイルーム(娯楽スペース)に集められると男女の2名の先生方が来てsexual healthについて。今回はより実用的で模型が出てきて避妊具の取り扱い方を実践しよう、というようなワークショップで私にとってはびっくりするほど過激に感じられました…

このような形で、少なくとも1年目は起こることは起こるんだから少なくとも安全にやってもらおう、といった学校の方針でした。私の2年目には外部組織から指摘を受け、かなり学校の規制は厳しくなりこういった学校公認のtalkは無くなりましたが、正直どれだけ隠さなきゃいけないかの問題であり実態はあまり変わらないので、1年目の方針の方が適していたのではないかと私は思います。

友達との会話

この他には、オリエンテーションウィークはひたすら健康管理、学業、生活態度についてを先生方からオンラインで聞いたり、2年生からアルコールやドラッグの危険性を体験談込みで(!)聞いたりといった感じでした。

一方で1日の大半が自由時間といったとてもゆったりとした期間ではあり、寮から出れないので、同じ寮の1年生約25人とはひたすら語り合ってぐっと近くなることができました。

どの数人で話し出しても基本的にはそのグループの中に同じ国出身の人はいません。なのでかなり頻繁に話題はそれぞれの国の政治や教育制度になりました。日本の教育については私もいくらでも批判できるのですが(笑)、政治についてはおどろくほど分かっていないことに気付かされました。

首相と他の主要な党の党首は分かっても、自分の小選挙区の代表は分からない。正直自民党の政策内容も分からない。今国会で何が大きなトピックなのかも分からない。

それに比べ、友達はみなきちんと自分の意見を持ち、何なら実際に政治家に会いに行ったり抗議したりしている。環境プロテストを自分で企画していたという人や、自分の国の1日首相を任せられたことがあるという人もいて、圧倒されるばかりでした。

また、今まで5つの国に住んだことがある人、戦争を直に目で見た人、難民キャンプで生活していた人など、プリンセスだけでなく、それぞれ1人1人の友達の人生経験を聞くだけで毎回1つ世界についての扉を開けた気分でした。

こうして自分の人生でおそらく一番濃い10日間を終え(この濃さは2年間維持されました)、やっと寮隔離が終わり外の空気を自由に吸えるようになりました。


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