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働く人の健康をチームで考える

9月28日開催の#SAPPORODIVERSITYFORUM「働きやすさもパフォーマンスもアップ―今始める女性社員の健康支援」の講師、川島恵美さんからのメッセージをご紹介します。

「産業医は、どんなお医者さん?」

産業医は、職場の安全や働く人の健康を守る医師です。そのため、病院で働く医師のように、病気を診断して治療をするわけではありませんが、働く人が快適な職場環境で心身ともに健康な状態で仕事ができるように専門的な立場から会社や働く人に対して指導・助言を行います。
例えば、ある職場で体調不調者が続出した場合には、その職場の労働環境や人間関係などを調査し、改善するための方法をご本人や上司、人事担当者、経営者などと一緒に考えていきます。
働く全ての人の健康を守る。そしてその企業のことを一番良く知っている医師というイメージです。

「産業医になったきっかけ」

医師になりたいと思い、色々と調べていた高校3年生になったばかりの頃、産業医という存在を知りました。
「1対1」で患者さんを療して病気や怪我を治す臨床医に対して、働く人が健康なまま働き続けられるように、事前に健康障害が起こる事を防ぐのが目的という産業医の仕事に興味を持ちました。
予防をするということは、働く人、ひとりひとりが、当たり前のように健康でいられる状態をつくるということなので、一筋縄にはいきませんが、とてもやりがいを感じられる仕事です。
また学生時代から推理小説や刑事ドラマが好きなのですが、何か問題が起こった時に多様な視点から解決を試みるという姿勢は、産業医の働き方にもよく似ていて、そういった意味でも私の性に合っているのではないかと思います。
産業医の仕事は、これが正しいという答えが決まっているわけではないので、難しいこともありますが、企業の担当者の方と一緒に働く人の健康支援について考えていけるところが面白さだとも思います。

「『働く女性』の健康支援がなぜ必要か。」

就労世代の男女の疾患リスクを比較すると、男性は若い頃は元気ですが年齢とともに生活習慣病リスクが上がり、脳梗塞や心筋梗塞などの大病で会社を休む人が出てきます。
一方、女性は、20代でも月経関連の障害や妊娠に伴う健康障害のリスク・子宮頸がんや乳がんなど女性特有の疾患が起こる可能性があります。これらの疾患は多くの場合、長期間会社を休む必要はありませんが、労働生産性に影響を与えます。
こうした違いがあるにも関わらず、既存の健康診断では生活習慣病しかカバーされていません。そういった観点でも10年ほど前から、働く人の健康管理を経営的な視点で考えて、戦略的に取り組む「健康経営」に注目が集まっています。
少子高齢化が進み、将来の労働力不足が進む中、女性活躍は今後の労働力を支える一つの鍵だと考えられています。
女性特有の疾患による健康障害を理由とする働く人の離職を減らし雇用を継続していくことや、在職する従業員の労働生産性を上げていくことが注目されています。
本来は全ての働く人が性別に関わらず、健康で働きやすい環境を実現することを支援することが重要だと思います。
一方、現実的には労働現場が理想とする従業員は”従来の頑強な男性がモデル”であり、その姿に該当しない場合には、働きづらさを感じてしまうケースも多いです。
誰でも働きやすい職場環境を作るための初めの一歩として女性従業員の健康支援に目を向けてみてはいかがでしょうか。

「このセミナーで一緒に考えたいこと」

今回は主に中小企業の経営者や人事、総務の担当の方に向けた講座と伺いました。
「大企業ならできるけど」ということはどうしてもあるかと思いますが、机上の空論にならないように実際に現場でどうしたらいいのかを一緒に考えていきたいです。
中小企業の場合、経営者の一声で状況が一変することもあります。
また、「自分は健康だと自負している女性ほど長く働き続けられる自信がある」「健康に自信がある女性ほど離職検討の経験が少ない」といった調査結果もあります。
良好事例をみていると人事や総務の方、色々お世話を焼いてくれる方が窓口になって知識を持つことが、健康障害を予防するために重要だと実感することもあります。
「なかなか予算が取れなくて、やりたくてもできない」と皆さんお困りだと思います。更年期や生理など、女性特有の悩みに対してどのように話題にして対応していけば良いのか悩まれる方も多いでしょう。
皆さんが抱えている悩みは、他の多くの経営者の方が抱えている悩みだと思います。
これが正しいという答えはないので、皆さんのお悩みを聞かせていただき、他の企業ではどうしているのか、どこが落としどころなのかを手探りで考えていける時間にできたらいいなと思っています。


川島恵美さん
<プロフィール>
産業医、労働衛生コンサルタント
産業医科大学卒業。近江八幡総合医療センターに て初期研修終了後、働く女性の健康支援に興味を 持ち、滋賀医科大学産婦人科学講座にて後期研修。 その後、産業医科大学産業医実務研修センターで 産業医専門のトレーニングを行い、花王株式会社 を中心に複数の企業で産業医として従事。 現在は滋賀医科大学社会医学部門公衆衛生学教室で大学院生として学びながら、複数の企業での 産業医を継続し、企業に対して女性従業員の健康 を支援するコンサルティングを行っている。
著作物として『産業医はじめの一歩(共著、羊土社)』など。 


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