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ゆうひろば原稿(1200字)

「差別と向き合う、差別を知る」
佐々木カヲル
札幌市在住。フリーランスの社会福祉士。LGBTQ当事者(ノンバイナリー、戸籍上同性のパートナーと生活)。元道職員SOGIハラ訴訟原告。

 私は、さっぽろ自由学校「遊」の講座「日本の植民地主義を考える―共につなぐ未来のために」を受講している一人です。在日の方の境遇については、今、知り始めたばかりです。私が講座で学びたかったことは、まず、現状を知り、そして、その背景にある歴史的経緯を知ることでした。
 ところで、私のきょうだいは3人で、7つ上のきょうだいは、すでに亡くなっています。生きていれば、61歳です。そのきょうだいは、戸籍上の性別は「女」ですが、「中性」を自認し、一人称は「僕」でした。生前、「僕」は多くの社会的課題に関心をもっていました。私は、「僕」から、指紋押捺拒否のことや強制連行、そして、いわゆる「慰安婦問題」などを聞いていました。「僕」は、学生時代、韓国に短期滞在し、ハングルを書き、朝鮮語で現地の方と交流し、歓迎されたと話していました。それは、韓流ブームなどがくるよりずっと前のことで、韓国旅行をしたという話しを身近に聞くこともなかった時代です。
 私は、2021年6月9日に北海道と地方職員共済組合を相手に提訴した元道職員SOGIハラ訴訟、いわゆる「同性間の扶養認定」をめぐる違憲訴訟の原告です。この裁判は、2023年9月11日札幌地方裁判所で「請求棄却」の判決が言い渡され、私が控訴しないことを決めたので、全面敗訴で終わっています。
また、この訴訟は、異性カップルであれば、内縁、事実婚でも認められる福利厚生制度を、戸籍上同性のカップルにも認めて欲しい。制度から排除しないで欲しいと願うものでした。私は、「特別待遇」や「特別扱い」を求めたつもりはありません。他の職員と同様に扱って欲しいと求めていたのです。なぜなら、私は、北海道職員だったとき、他の職員と同様に税金を納め、共済掛金や互助会費を支払っていたからです。
 しかし、判決は、憲法判断に立ち入ることなく、国家賠償法上、被告らの行為が適法と結論付ける不当なものでした。私は、今の自分や自分とパートナーとの生活を優先するために控訴しませんでしたが、世の中には、マジョリティが気づかないマイノリティへの差別があり、そのような差別が堂々とまかり通っていることを知っていただく機会にはなったかもしれません。
ところで、差別の対象になっているマイノリティが声をあげるのはとても難しいことです。マイノリティが声をあげたとしても、小さな声は、大きな声にかき消され、排除されることがほとんどです。
 また、「マイノリティの問題はマジョリティの問題だ」という言葉を聞いたことがあります。在日の方が抱えている問題も、日本政府、日本社会が真摯に向き合わなければ解決できないと思います。我々日本人にできることは、まず、差別について知ること、差別を自分ごととして捉え、自分なりにアクションを起こすことだと思っています。選挙権をもつ私たちが、多様性の尊重と公正な社会のあり方について考えるべきだと思います。

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