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パフォーマンスいわれ28 イベント「秘宝館〜ナイトメア〜」報告記

 2023年10月7日。札幌で自主公演「秘宝館」を開催した。これは私個人ではなく札幌で知り合った女性ダンサー五人が集まって企画したもの。
 ひょんなきっかけで女子会的に話が盛り上がり「エロテックな表現を限られた場所、人だけでなく、一般的に観てもらいたい」という発想、いや、お互いがそれぞれのステージを観たいという想いから、この企画は始まり、タイトルは「秘宝館」となった。しかしそのタイトルが自分の首をしめ、ダンサーとしての名前を出したくない等問題が起こり、結果、このイベント用の別ネームを考えることにした。その名前はノリで「四十八手」から取ることとなった。

 五人のダンサー。エロスの世界を表現しているのは私の他、札幌からストリップ劇場に進出した函館エリィ嬢しかいない。他は別ジャンルのダンサー。エロスの表現とは…、と彼女たちの苦悩は重くのしかかって行った。想いはエロスな表現って面白いと考えていても、いざとなるとどう表現するべきか戸惑っていた。持ち時間は一人15分。短いようで、長い分数だ。
 今はYouTubeで世界の様々なショーを見られるが、ステージを見るだけでは細部がわからない。なので私はまず、エロテックな表現方法のダンスレクチャーをした。今は「バーレスク」と呼ばれているダンス。「バンプ」と呼ばれる腰を前後に振ったり「グラインド」という腰を回したりというセックスアピールする方法だけではない。細部の表現が大切になってくる。指先、目線、足の立ち位置、体の向き、脱ぎ方、肢体の動き一つひとつが重要になる。これは一般的なダンスレッスンでは全くない。なのでプロのダンサーでも全く違う動き方、所作で、苦心する部分だ。
 また、ダンステクニック以外にも表現が必要になってくる。例えばクラシックバレエなら、ストーリーがあるので、ダンスだけでなく表情も伴わなければ面白みがない。歌舞伎は芝居と踊り。オペラは歌と芝居。つまりエロス(に限らないが)を表現するにはダンスだけ上手くても伝わらないのである。

 私は稽古嫌いだが、今回は五名なので打ち合わせは必須。企画は6月からスタートしたが、それぞれの都合で月1度位しか会えない。しかし会うたびにそれぞれの個性が出てくる。芝居形式、フロアショーに寄せてくる、舞踏のまま、皆悩んでいる様子が表現で伝わってくる。
 それに加えて照明問題。今回の始まりはイベントスペースで、と考えていたので大した問題は無いと思っていたが、様々な都合が重なり小さな芝居小屋を借りることとなった。芝居小屋となると一から照明を作らなければならず、これは素人には難しいし、金銭的に余裕はない。しかし演者の一人がこの芝居小屋出身で、様々に融通して頂き、幸い本格的なステージ照明を作って頂いた。

 本番までの時間経過はあっという間。流石に皆プロ。本番に合わせて決めてくる。その内容、演目は今だに記憶に残るほど。

 トップは<四十八手「宝船」>を盛り込んだアイリン宝船嬢。ベリーダンス衣装に身を包み、「タブー」の曲までフロアショーの楽しさを魅せる。彼女のラスト一曲は私とのレズショー。私はこのレズシーンに初めからドレス引き裂きを考えていた。ハサミで引き裂くという行為は、背徳感があって好きだ。しかしメンバーから「何か怖いな。宏美さんは切腹するのに刀を使って、ハサミまで使うんですね。やっぱり切ることが好きなんですね」と突っ込まれてしまった。私の衣装は全身網タイツにコルセット、ピンヒール、アイマスクとなぜか私が女王様っぽくなってしまった。

 二番手<四十八手「八重椿」>を盛り込んだ八重椿のお静嬢。長年芝居をやってきた彼女は、持ち前の明るさを存分に発揮したコミック芝居(童貞男子(お静嬢)が憧れの女子に振られるという結末)とダンス。芝居に掛ける情熱はものすごかった。他ダンサー一人と照明係まで巻き込んで(照明さんも舞踏家ですが)、時間がありさえすれば常に稽古していた。私にはできないこと。その完璧な造り込みに改めて尊敬した。彼女曰く「ミュージカルがやりたかった」と。

 三番手<四十八手「花あやめ」>を盛り込んだ花あやめ えりぃ嬢。彼女が踊り子の函館エリィ嬢だ。まだ二十代の若手だが金粉ショーを披露。ステージに出るたびにどんどん実力をつけているのがよくわかる。踊りが安定してすでに風格がある、魅せる。久しぶりに金粉を観たが、やはり神々しく美しい。そして彼女の手作り衣装センスも良かった。

 四番手<四十八手「かげろう」」>のKAGEROW嬢。今日の四人は舞踏家でもあるが、唯一彼女だけが舞踏を選んだ。「やっぱりエロ路線を盛り込むべきですかね」とずっと考えていたが、私はその必要はない、自分の考えを通すべき、と話した。薄暗い中から幽霊のように登場し、幽霊のように去っていく。彼女の「黒の世界観」がしっかり表現されていた。

 ラスト<四十八手「しがらみ」>を盛り込んだしがらみのお桐は、私。この演目はある程度決めていた。八月に東京銀座でやった心中物の演目は時間が短かったのでこれを完成させたかった。心中物から単に「遊女」とした。ここで悩んでいたのは「蝋燭」を使うかどうか、であった。しかし結果的に芝居小屋になったので、蝋燭は使わない方がいいと判断し(掃除が大変)ベットシーンとした。ストリップ劇場を思い起こすならむしろベットシーンの方が合っているだろう。
 朝、家では坂東玉三郎のDVDをじっくり観て、頭に入れた。「静と動」を意識していた。引きずり衣装でゆっくりと着物を見せ、脱ぎの色香。じっくり脱いでベット。いわゆるオナニーシーン。そして腹切り。オナシーンからの腹切りはやはりノッてしまう。もうちょっと時間が欲しかったかな。思わず楽しんでジュンときた。

 そしてもう一つ。秘宝館に合わせて展示をしよう、という話も上がっていたので、私が持っている絵を展示した。初めは物品なども考えていたが小屋のスペースが少なかったので絵だけにし、しかも枚数も減らした。
 春画の代表格葛飾北斎は必須。もちろん雑誌からのコピーではあるが。他は私の独断で、刺青美人画の小妻要氏やSM劇画家の前田寿安氏原画、空山肇氏などの絵を飾った。正直ここの部分もはもっと充実させたかった。こういうこと私は好きなので。

 想像以上にまとまった構成となり、メンバーたちは強い手応えを感じ、打ち上げでは前向きな意見が出た。また来年もやるか。展示も含めて、もっと面白くしたいな!

 本州からいらしてくれたお客様、誠にありがとうございました。
そしてもちろん全てのお客様に感謝いたします。


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