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わたしたちの灯りは、揺らいでいる。

人生とは、一寸先で何が起こるかわからないもの。ゆえに楽しく、哀しく、面白い。それは、最近気に入って通いはじめた喫茶店での出来事。常連として認知されはじめたお店で私は、思いがけない時間に出くわした。

20代半ばだろうか。ここには、カウンターに座ると穏やかかつ柔らかな口調でいつも気さくに話しかけてくれる、すてきな店員さんがいる。毎度、最低限の会話で心地よさを贈る彼がその日は珍しく饒舌で、私が座るや否や、怒涛のように話しかけてきた。

閉店1時間前。珍しく人が引き、お店には私だけに。そこで思いがけず私は、店員さんの半生を知ることになった。

揺らぎながらも自身という人間をつくっていく、20代。確実に自分だけの人生だと誇れる歩みの足跡を、今日も明日も真っ白な色で迎える生き様を、誰かに聞いてほしかったのか。店を上がり、私の隣に座って訥々と語り始めたが最後、瞳の奥で揺れる感情まで見えてしまった。それは最近読んだどんな小説よりも興味深く、都心のど真ん中、煌めく灯りの端っこで、今晩だけの秘密をアナログで分かち合った気がした。

私の中にある揺らぎと共鳴したのか。こころを凪にするバランサーのような喫茶店で私は、彼の揺らぎを聴いてしまった。あの喫茶店が自分にとって変わらないことを祈りながら私は、彼のしあわせを願う。

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