見出し画像

「 言の葉の雨に 」

言の葉の雨に降られ
砂丘がその砂紋を失ってゆくよ
言の葉の雨に降られ
傘を持たぬ君の髪が濡れてゆくよ
 幾つもの丘を越えて
 幾つもの谷を越えて
 言の葉の雨に降られながらそれでも
 行き着ける先は何処なのか
 誰も教えてはくれない
  けれど
言の葉の雨に降られ
君はまたひとつ 傷を刻み込む
言の葉の雨に降られ
君はまたひとつ 傷の重さを知る

言の葉の雨に降られ
堤防がその姿を崩してゆくよ
言の葉の雨に降られ
靴も擦り切れた君の足が濡れてゆくよ
 幾つもの道に迷い
 幾つもの標に惑い
 言の葉の雨になぶられながらそれでも
 行き着ける先は何処なのか
 何も誰も応えてはくれない
  けれど
言の葉の雨に降られ 君は
微かな震えを聴く
言の葉の雨に降られ 君は
消え入らんばかりの微かな震えを その耳で聴く

 幾つもの笑みに惑い
 幾つもの嘲りに迷い
 言の葉の雨になぶられ続けながらそれでも
 歩き続ける君の行く先は何処なのか
 誰も何も教えてはくれない
  けれど

    その耳は
    その両目は
    もう居場所さえ伝えることのできない誰かの震えを
    伝え聴く、君の
    その耳が
    その両目だけが
    その震えを 抱きしめるよ

言の葉の雨に降られ
君の足跡も定かには遺らない
言の葉の雨に降られ
それでも君のその傷痕を頼りに
声を
潰された声を再び
振り絞ろうとする鳥が一羽
君へ向けて 今 翔び立つ

声を
殺された声を再び
振り絞ろうとする鳥が、今

よかったらサポートお願いいたします。いただいたサポートは、写真家および言葉紡ぎ屋としての活動費あるいは私の一息つくための珈琲代として使わせていただきます・・・!