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「喧 騒」

私を突き刺してくるのは、街の喧騒で、それは
どう足掻いても私ごときに止め得るものではなく
私は磔になったまま、突き刺され続けるしかない
誰のせいでもない
何のせいでもない
ただ、
街が 怒っている
街が 憤っている
これほどまでに踏み付けにされ続けている我が身に
それがそのまま、街をふらつき歩く私を呑み込んでゆく
それだけの話で
憤っているのはだから、ヒトなどではなく
苛ついているのはだから、ヒトなんかではなく
踏み付けられ続けるしかないこの
ヒトに造られてしまった街の方なのだ
その街がたまたま選んだ攻撃相手が
これでもかというほど溢れ返ったヒトの群れの中で
たまたま、私だったというだけ
同じようにヒトの群れの直中で途方に暮れている
私だったという だけで

―――散文詩集「傾いた月~崩れゆく境界線」より

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