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「僕らは」

たとえば今
  世界は灰色だ
と断言してしまえば
僕を取り囲む世界は一瞬にして
灰色になる


君が今日は晴天で
どれほど気持ちのいい一日かを
幾千もの言葉を使って僕に
説いたとしても

僕が僕にそう断言した、それだけで
僕の世界は灰色になる
そんな、
言葉はひどく傲慢で、
あまりに頼りなく、

ああ、

言葉によって産まれ、言葉によって生き、
言葉によって死せしめられる僕らは、
言葉の海に放り出され言葉の海を漂流し
いつ溺れるか知れない

君の青色が 僕の青色とは限らない
僕の真実が 君の真実とは限らない
今この場所に立つ君が見上げる空は青くても
今その隣に立つ僕の見上げる空は黒い

それが 僕らだ

どうしようもなく曖昧過ぎる
言葉でもってしか交われない僕たちはそれでも
曖昧の中からせめてもの慰めを見つけては縋り、
その手とこの手を繋ごうとする
その掌にはもしかしたら
この心臓を抉るための匕首が
握られているかもしれないのに

それでも

言葉によって産まれ、言葉によって生き、そして
言葉によって殺される僕たちは
言葉を操りながら言葉に操られ、
言葉を手繰り、世界を手繰り、
そうして今日を生きてゆくんだ
今僕が握ろうとする君の掌に
匕首は隠されていないと 信じながら

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