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「果実の味」

記憶は

忘れてゆくものではないのだと
とある詩人が書いていました
忘れられないものが記憶なのだと
そうして降り積もって降り積もって
噛み砕いて味わって それが
人生になるのだ と

忘れてゆくということに
微かな罪悪感を覚えては
一度捨てた筈の荷物を握り直していた頃合いが
いつの間にか いびつながらも
薄橙色の果実になって

白い皿の上

頬張ったら どんな味がするのだろう
目の前のこの 果実は


―――詩集「生活Ⅰ」より


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