虐殺とラジオ
先日NHKで、1997年に放送された「NHKスペシャル なぜ隣人を殺したか~ルワンダ虐殺と煽動ラジオ放送~」の再放送をしていました。
1994年に発生したルワンダの虐殺について、私は今まで映画やテレビで見聞きしてきたものの、その詳細はよくわからないまま過ごしてきました。
ただこの番組で私は初めて、ルワンダで起こった虐殺に私の大好きなラジオが最悪の形で関わっていることを知り、画面に釘付けになって見ました。
この番組でキーとなる青年、フランソワは、フツ族の父とツチ族の母との間に生まれています。虐殺が発生する前にはフツ族とツチ族は良好な関係にあり、部族間での結婚も珍しくなかったとのこと。
そこへ、民間のラジオ局「千の丘ラジオ」が開局します。国営ラジオ局には無かった海外の音楽のヘビロテ等で若者の心を捕らえ、瞬く間に人気局となりました。
しかしだんだんと、ラジオDJが、フツ族がツチ族に対してくすぶらせていた不満を煽ります。
驚いたことに、ラジオでは直接フツ族にツチ族を「殺せ」とは言っていません。ただ、「ツチ族の存在は【ゴキブリ以下】だ。」「ゴキブリを見かけたらどうすればいいか、女性でもわかるね。」という言説を繰り返すばかり。
やがてフツ族が殺し屋集団を結成し、民族浄化を目的にツチ族を虐殺し始めました。番組ではモザイクがかかっていましたが村のあちこちに老若男女問わずのツチ族の死体が横たわり、その脇でフツ族の男たちが笑顔を見せていました。
虐殺発生から100日間で、80万人のツチ族の人々がフツ族に殺されました。
部族間に生まれた子どもは父親の部族としてカウントされたため、フランソワはフツ族として扱われました。
しかし、ツチ族の夫に嫁いだフランソワの姉は夫婦ともども殺され、残された4人の子どもたちをフランソワの両親が匿います。
フランソワの兄にはフツ族の奥さんがいましたが、この兄嫁がフランソワの母親と匿われた子どもたちを、「ツチ族だから」と激しく嫌いました。そして兄も嫁の味方になり、フツ族の殺し屋集団に参加します。
そして兄嫁がフツ族の殺し屋集団に子どもたちの存在を密告し、子どもたちは殺し屋集団に連れ去られます。
温厚なフランソワも殺し屋集団に連れて行かれ、子どもたちを殺すか、それとも自分が死ぬかの選択を迫られます。悩む暇も与えられず、フランソワはやむなく自分の甥と姪たちを殺します。
そして、兄嫁に告発され刑務所に収監されたのでした。兄嫁は悪びれもせず、「フランソワは人殺しだから警察に言った」と真顔で言います。
しかし首都がツチ族に制圧され虐殺が終わった後、フランソワの母は兄を「殺し屋集団に参加した」として警察に告発します。そして、兄はフランソワより長期にわたり、刑務所に収監されました。
家族間、地域コミュニティ間での殺し合い。そこで生まれた溝は、虐殺が終わった後も深く刻まれたままです。
フランソワは刑務所を出所した後も、子どもたちを殺した罪に苛まれています。
人間は人間を殺せるんだ。
今まで直視しないで来た事実を、私は目の前に突き付けられてショックで呆然としました。
この番組の後、現在のルワンダについての番組が始まりました。民族を分け隔てしない指導者を得て、奇跡の経済復興を遂げ成長を続けるルワンダ。
番組に出てきたルワンダの人々は、当時世界に助けを求めたのに見捨てられたと話していました。そして今も世界はウクライナ、パレスチナなどを見捨て続けていると。
ルワンダで起きたことを理解出来たのは良かったですが、これで終わりにせず、では自分に何ができるかを考えたいです。(まずは寄付かな)
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