約束の記憶 第三章 3話
この物語はフィクションです。
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https://note.com/saorin11/m/me6fc5f2a8b10
『有沢恵のシナリオ』
・11年前の再現
ーー本部ーー
「いきなりトラウマをがつんと体験させるんですね、室長」
長丁場の時に欠かせないキュービック型の食事。
ブロッコリー味のグリーンキューブを口にほおりこむ小坂桃子が中島に聞いた。
「短期決戦にはそれしかない。ただ、精神がもつか、逃げないで立ち向かえるかは彼女次第ね」
「私だったら無理だなぁ。こわいこわい」
こんなこと自分がされたら、トラウマの上塗りになって余計死にたくなりそう‥。
モニター越しにうまくいくことを祈った。
ーー有沢恵 夢の中ーー
「‥何を言ってるんだ。君がやらないと、他のナースに示しがつかないだろう。患者からの反発もあるし」
「先生、私妊活中なんです。だからどうしてもワクチン受けたくなくて‥」
「妊娠中でなければ安全だと言ってるだろう」
「いえ、安全ではありません。。むしろ、危険です。先生だってご存知じゃあないですか、あの元気だったN先生もナースのMさんも‥」
「あれはワクチンの影響とは限らない。とにかく全員受けさせるためにも君もやるんだ。いいな。もうこの話は終わりだ」
その場から去ろうとした男性の医師に背後からささやいた。
「いいんですか、先生。研修医のKくんをセクハラしてるって聞いてますよ。そちらの趣味がおありなんですね」
立ち止まって青ざめた顔でこちらをみている。
「俺を脅す気か?どうしてほしいんだ‥」
にやり
「私がワクチンを打ったという事実だけ作ってください。それだけです」
「わかった‥」
「先生のことは口外しませんからご安心ください」
背中を震わせながらその医師は去っていった。
その姿を見届けたあと、我にかえった。
なにこれ11年前と全く同じこと。
夢の中なの?
それにしてもリアルすぎる。
タイムリープしたの?
わからない
でもあの過去が変えられるなら変えたい。
この時の私は子どもが欲しくてそれ以外何も見えてなかった。
パンデミックが起きた11年前。
謎のウイルスに世界中が翻弄された。
ワクチンが異常な速さで作られ、それで救われると安心した矢先、人口はみるみるうちに減り続けた。
私は知っていた。
そんなウイルスが存在しないことを。
それを知っている政治家も医師も決してワクチンを打っていないことを。
だから、なんとしても打ちたくなかった。
こんな卑怯な手は使いたくなかったけど、自分の身を守るために、仕方がないと自分を言い聞かせていた。
そう、ここまではまだいい。
この先どうするか。
同じ過ちを繰り返さない。
つづく
(次回は6/1にUPします)
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