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約束の記憶 第三章 1話

この物語はフィクションです。

ここまでのお話はマガジンからどうぞ↓
https://note.com/saorin11/m/me6fc5f2a8b10

「はぁ、また朝が来た」

カーテンの隙間から光が溢れて、窓際に吊るしているサンキャッチャーが、部屋中に虹の光を注いでいた。

なんて気持ちのいい朝!と思えたのは、もう何十年前のことだろう。

朝が来るたびに、ため息が出る

どうしてまだ生きているのか
いつになったら心から喜べる日が来るのか

なんのために生きているんだろう

毎日同じことを考えながら
ただ食べて寝て
同じ日を過ごしている。

有沢恵50歳

人口減少を食い止める「みらい省」の事務次官、有沢浩司の妻である。

父は医師、母は看護師、姉は医師。
当たり前のように医療の道に進み、看護師になった。

過去のことを悔やんでも仕方がないが
もし違う道を進んでいれば、毎日死にたいと思う日々にはならなかったのか。

「どこで何を間違えたんだろう」

他人から見れば何不自由なく生きているようにみえるだろう。

夫は官舎に住み、私にはタワーマンションの最上階の一室を買い与えてくれた。
気分転換に使えと言われてたまにきていたのが、今ではすっかり住み着いて別居状態にある。

何もすることがない私が
何のために生きているのか
朝が来るのを呪いたくなる。

11年前

世界中がパニックになった。

たった一つのウイルスのせいで世界が変わった。

世界のシステムも変わったけど
私が信じていたものがすべて壊れていった。

ウイルスが世界中に広まって
世界の人口は10分の1になった。

看護師だった私は、あの頃の記憶が曖昧で、毎日ただひたすら走り回っていた。
何かを考える暇(いとま)はなく、できることをこなしていただけだった。

なぜこんなことが起きたのか
なにかおかしくないか

と考え始めたのはウイルス発生から2年経った時だった。

ネットで陰謀論を語っている動画をみて、どうせ嘘と思ってたことが、逆に腑に落ちることが多くて、もしかしてと疑うようになった。

その動画はその時一度見れただけで、再度見ようとしても見ることができなかった。

私の中に生まれた小さな謎が大きくなり
常識がすべて崩れていった。

常識として鵜呑みにしていたことを、全て疑ってみるようになったとき、身体的な変化があらわれた。

最初は頭の一部が痛くなり、数日寝込んだ。
頭痛がなくなり、ぼやっとしていた頭の中がすっきりと晴れた後、人の心が読めるようになってしまった。

今思えば、信じ込んでいたものを壊したことで、脳内のマイクロチップも壊され、洗脳からとかれたことで元々もっていた能力が開花したのかもしれない。

それからは疑いが確信へと変わっていった。

ウイルスは自然発生するものではなく、人工的に作られたものである。
しかし、全世界に広めるほどの力があるウイルスを作ることは不可能だ。

あとは情報操作のみでパンデミックを作っていく。

全ては地球の人口を減らすために。

しかし、これを仕掛けた側は大きなミスをした。

減らすことに成功したけど、その見返りとして増やすことができなくなってしまった。

地球は一歩一歩、破滅へと進み始めていた。

そこで政府は人口減少を止める機関をつくり、他の惑星からの受け入れや、寿命を伸ばしたり、自死ができない仕組みを作ったり、裏では様々な実験がおこなわれているらしい。

そのおかげで死ぬタイミングを失った私は、この時代に生を受けたことを呪っている。

時計を見るとまだ朝の6時だった。

「もう少し寝よ」

二度寝は長い眠りのはじまりだった。


つづく
(次回は5/25にUPします)

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