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約束の記憶 第二章 16話

この物語はフィクションです。

ここまでのお話はマガジンからどうぞ↓
https://note.com/saorin11/m/me6fc5f2a8b10

「今回のターゲットは、有沢恵50歳女性。10年前看護師を辞めている。子どもはいない。家事を終えると一日ただぼーと座って過ごしていることが多く、更年期かうつの疑いがあったが、病院の診断ではどちらでもなかった。そのほかの詳しい資料はよく目を通して」

各自空中に浮かんだ画面の資料を見ていた。
しばらくすると、学の目が見開いた。

「中島さん、これってまさか‥」

「そう、そのまさかね。みらい省の有沢事務次官の奥様よ」

「これは‥誰が決めているんですか」

学が身を乗り出して聞いた。

「今回は有沢さん自身の依頼よ。もちろん奥さん本人には話してない」


「なんか‥引っかかるな。悪いが俺は今回、はずれる」

「え!学‥」

ミアが止めるのを振り切って、学は会議室から出て行った。

三人がお互い目を合わせて、ふーとため息をついた。

「しょうがないわね。Bプランは私でいきましょ。一葉さんよろしくね」

「あっはい。あのぅ、学さんは有沢さんと何かあるんですか?」

一葉が中島に聞いた。

「さぁ、わからないけど‥」

中島は窓の外をみながらそう言った。本当に知らないのか、はぐらかしているのか。
始まる前から前途多難で、一葉にとってプレッシャーが半端ない。

「今晩、有沢恵が就寝したところからスタートします。それまで二人は自由にしてて」

「はい!」
「わかりました」

「では解散、お疲れ様」

「お疲れさまでした」
「ありがとうございました」

中島が会議室を出た。

「ふーー、私大丈夫かなぁ、ミアさん」

気が抜けて、アイスコーヒーを一気に飲み込んだ。

「いつも通りで大丈夫。そんなに難しくないでしょ。失敗したらどうしようって思ってたら、失敗するよ」

ミアがケラケラと笑いながら言った。
確かにそう。失敗したらどうしようと思うから緊張する。

重く感じていたのを、ミアの笑顔で吹き飛んだ。

「そうね、何かあれば中島さんに託そう」

「そうそう、一人でやりきらなくてはと思わなくていいのよ。あなたならできるから」

ミアのきらきらの髪が一層輝いてみえた。

「ありがとう。これが最後のミッションだと思って挑むわ」

本当に最後のミッションになるとは、このときには知る由もなかった。

第二章終わり

つづく
(次回は5/22にUPします)

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