約束の記憶 第二章 12話
小説です。
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「ここであってるかな?」
森田一葉は言われたとおりの場所まで来た。
プールがある家の隣。
屋上に露天風呂があるらしいけど、屋上なんてみえない。
鍵は空いているから、勝手に入っていいと言われたけど、怖くてしょうがない。
「だれか」がいることはないけど、床が抜けたらどうしようと考えてしまう。
冷蔵庫らしきものはあるが、扉は開かない。
言われた通り、外から見えない場所のソファに腰をかけた。見た目は座り心地がよさそうなのに、とても固い。
ほどなくして、遠くから足音が聞こえてきた。
「一葉さん、おまたせ」
何年かぶりに会う彼女は、随分印象が変わっていた。
といっても、姿を見ていたのは園長のときだけだからかもしれない。
「お久しぶりです、中島園長先生」
「その呼び方、懐かしいわね。こんなところに呼び出してごめんなさい」
中島が申し訳なさそうに頭を下げた。
「いえ、こんなこともできるんだと、驚きましたよ」
「見つからないようにしないといけないから、苦肉の策でね。時間がないから単刀直入に聞くわ」
笑顔から急に低い声でささやいた。
「あなたにはどんな未来がみえているの?」
「え?」
あまりにも意外な質問だったので驚いた。
「中島さんあなたもみえる人じゃないですか?」
中島は首を振った。
「予測するだけで未来がわかるわけではないの。今のままだと、どんな未来が待っているの?」
「政府関係者と通じているあなたの方が、よりリアルな未来を知ってるじゃないですか」
中島は再度頭を振った。
「そんな重要事項は知らされないわ。所詮下っ端よ。でも、あなたには未来を読める力があるわ」
「シリウスからの転生は、能力を持ったままの人が多いと聞きますが、私が見えているものはただの妄想かもしれませんよ」
「それでもいい。今わかることだけでも知りたいの。子どもがいない未来はどうなっていくの?」
どう伝えるべきか。しばらく黙ってから、口を開いた。
「中島さん、そんなことを聞きたくて、ここまでして呼び出したわけじゃないですよね。何が目的なんですか?」
中島は目線をずらし、窓の外をみていた。
「今のままでは明るい未来はないわ。一葉さん、あなたは何をしようとしてるの?私はあなたの力になりたいの」
本音なのかわからない。
不用意に答えるわけにはいかない。
「中島さ‥‥」
と、そのとき、女の子の声がした。
「お母さん、このおうち見てー。中にお人形もあるよ。ねぇ買ってもいい?」
まずい!
慌てて二人とも家の外にでた。
「あれ?お人形がいなくなった。さっきまでいたんだよ。どこにいったんだろ」
家は持ち上げられて、がしゃがしゃ振られている。
間一髪、脱出できて胸を撫で下ろした。
「話の続きはまたにしましょ。私はあなたの味方だから」
そう言い残して中島は去っていった。
二人で会うところを見られると、あらぬ疑いをかけられる。
監視が行き届かないところを探して、このホビーショップにした。
体の大きさを調整できるサプリで小さくなり、ドールハウスで待ち合わせた。
このサプリを使ったのは初めてだったけど、家の中に豪華な城を作って住むのも面白い。
あーだけど、効果があるのは10分だけだから無理だ。
中島のことは信用していいかわからないから、様子見かな。
お城のドールハウスを手にして、家に帰った。
つづく
(次回は5/4にUPします)
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