約束の記憶 第三章 9話
この物語はフィクションです。
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「そっか‥そういうことか‥」
恵は目が覚めた瞬間、涙が溢れた。
衝撃的な出来事を、人ごとのように思い出していた。
そして、ショックのあまりなくしていた記憶も戻ってきた。
怒りとか、悲しみとか、恥ずかしさも超えて、ただ、そうだったんだと事実だけ受け止めた。
以前の私なら耐えられなかったことも、今なら他人事のように感じられる。
あの時は自分のことしか考えられなかった。
夢は打ち砕かれ
信じていたものから裏切られ
私という存在が何のためにあるのか
もうわからなくなっていた
この夢の中で私はどう生きればいいんだろう
真っ白な天井の眺めながら、ため息をついた。
夫はどんな想いで、私のそばにいたんだろう。
ガチャ
「恵‥目が覚めた?具合どう?」
夫が心配した顔で入ってきた。
「あ‥ごめんなさい‥帰ってきた早々、こんなことになってしまって。よく覚えていないんだけど、あなたが運んでくれたの?」
「他に誰が運べるんだよ。大丈夫かい?」
一瞬どきっとした目をしていた。
「いや、自分で歩いてきたのかと思って、ごめん。大変だったね」
「大変だったのは恵だろ。もう少し休んだほうがいい。薬ももらってきたから」
夫は私の頭を撫でて、薬を置いて部屋からでていった。
社会でも家庭でも素敵で立派で
自慢の夫が誇らしくて、尊敬していた。
大事にされて、愛されて、もっといい奥さんでありたいし、子ども好きな夫のためにも、産んであげたいとおもっていた。
だけど、思い違いだった。
夫は子どもを望んでいなかった。
あくまでもフリをしていただけだった。
この薬も飲まないでおこう。
あれだけ死にたくて
死ねないこの時代に
どうやったら
死ぬことができるのか
毎日考えていたのに
今は
どうやったら
死なずにすむのか
考えてる
後悔してもしきれない過去の選択で
別の道を選んでいたなら
未来がどう変わるのか
見届けたい
つづく
(次回は6/26にUPします)
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