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約束の記憶 第三章 9話

この物語はフィクションです。

ここまでのお話はマガジンからどうぞ↓

https://note.com/saorin11/m/me6fc5f2a8b10


「そっか‥そういうことか‥」

恵は目が覚めた瞬間、涙が溢れた。
衝撃的な出来事を、人ごとのように思い出していた。
そして、ショックのあまりなくしていた記憶も戻ってきた。

怒りとか、悲しみとか、恥ずかしさも超えて、ただ、そうだったんだと事実だけ受け止めた。

以前の私なら耐えられなかったことも、今なら他人事のように感じられる。

あの時は自分のことしか考えられなかった。

夢は打ち砕かれ
信じていたものから裏切られ
私という存在が何のためにあるのか
もうわからなくなっていた

この夢の中で私はどう生きればいいんだろう

真っ白な天井の眺めながら、ため息をついた。

夫はどんな想いで、私のそばにいたんだろう。

ガチャ

「恵‥目が覚めた?具合どう?」

夫が心配した顔で入ってきた。

「あ‥ごめんなさい‥帰ってきた早々、こんなことになってしまって。よく覚えていないんだけど、あなたが運んでくれたの?」

「他に誰が運べるんだよ。大丈夫かい?」

一瞬どきっとした目をしていた。

「いや、自分で歩いてきたのかと思って、ごめん。大変だったね」

「大変だったのは恵だろ。もう少し休んだほうがいい。薬ももらってきたから」

夫は私の頭を撫でて、薬を置いて部屋からでていった。

社会でも家庭でも素敵で立派で
自慢の夫が誇らしくて、尊敬していた。
大事にされて、愛されて、もっといい奥さんでありたいし、子ども好きな夫のためにも、産んであげたいとおもっていた。

だけど、思い違いだった。

夫は子どもを望んでいなかった。

あくまでもフリをしていただけだった。

この薬も飲まないでおこう。

あれだけ死にたくて
死ねないこの時代に
どうやったら
死ぬことができるのか
毎日考えていたのに

今は
どうやったら
死なずにすむのか
考えてる

後悔してもしきれない過去の選択で
別の道を選んでいたなら
未来がどう変わるのか
見届けたい


つづく
(次回は6/26にUPします)

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