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約束の記憶 第三章 2話

この物語はフィクションです。

ここまでのお話はマガジンからどうぞ↓
https://note.com/saorin11/m/me6fc5f2a8b10

Rプロジェクト本部
午前0時

有沢恵のミッションが開始され、彼女の様子と心の様子が映像化されて、モニターに映っている。

「有沢恵 就寝しました」

行動を監視する役目の小坂桃子が言った。
ミッション中は24時間体制になり、本部内に寝泊まりしている。

「もう少し様子を見て。おそらくすぐ目を覚ますから。タイミングをよくみてはじめましょう」

室長の中島が睡眠の状況を示すグラフを眺めながら言った。
中島の言う通り、何度も目を覚まして、熟睡できないようだった。

精神状態の映像を見ると、過去の出来事を思い出しては苦しんでいるようだった。

「早くこの状況から脱しないと、強制的にドールにされてしまいそうですね、室長」

小坂は自分のそれを見ているかのように辛かった。

人口が減少して、寿命も伸びて、自死できない現在。
精神が壊れて生きていけなくなるものは、強制的に感情をコントロールされた。

脳内のマイクロチップで管理されているので、ごまかすことはできない。
危険値に達すると突然ドールにされる。

人形のようになるので、そう呼んでいた。
記憶もあるし、日常生活もいつも通りできるが、感情がないから怒ることも泣くこともない。
ただ、笑うことはできる。

笑いたいから笑うのではなく、目の前の人が笑った時、笑うようにプログラムされているだけだった。

どれだけの人がドール化されているかはわからないが、犯罪がほとんどなくなっていることが、ドール化の加速を裏付けていた。

「奥さんがドールにならないように賭けたのね。彼女の精神力が耐えられればいいけど‥」

中島がぼやいた。
このままでは世界中ドールだらけになってしまうのを阻止するために生まれたのがこのRプロジェクトだった。
今回のミッションを成功させないと、存続できないかもしれない。

あれこれ想いを巡らせていたら朝になった。

午前6時

「再度、就寝しました」

このタイミングを待っていたかのように、中島が立ち上り、小坂に言った。

「一葉に準備させて」

「はい。一葉さーん、スタートしますよ」

別室で眠っていた一葉の様子をモニターに映し出して、一葉に向かって声をかけた。

眠っているように見えただけで起きていたのか、目を開けずに指でOKサインをだして、眠りについた。


つづく
(次回は5/29にUPします)

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