正解のない夜だってあるから

時計の針につられるように、夜はいつだって時間通りにやってくる。まるで地球が今日もちゃんとまわっていることを示すように、休むこともなく毎晩毎晩。

別に毎日懸命に働いてくれなくてもいいのにな、なんて嘆きたくなる日もあれば、今日もお疲れさま、なんてことばをかけたくなる日もある。じぶんでもどっちが本心なのかはわからない。ただ、こんなじぶんも守らなきゃいけない地球もたいへんだな、と他人事のように同情したくなる夜がたまにある。

最近、いろいろ疲れたなあなんて思いながら夜を過ごすことに慣れてしまったじぶんがいる。慣れていいものなのかはわからないけれど(たぶんよくはないよね)、毎日おなじことを考えていたら自動的に明日もおなじことを考えてしまう。そういう意味では、わたしのマイナス思考も毎日飽きずに働いてくれている。たまには休んでくれたっていいんだよ、と言って聞き入れてくれるほど、それはかわいいものではない。


そしてそんなマイナス思考もあいまってなのか、最近は、いまこの瞬間に抱えきれないほどの痛みと戦っているひとはどのくらいいるんだろう、と想像してしまう。

もしかしたら涙をがまんしているひともいるかもしれないし、しにたい気持ちと懸命に戦っているひともいるかもしれない。「じぶんはひとりぼっちだ」、そんな孤独感に押しつぶされそうになっているひとだっているかもしれない。こんなふうに涙をがまんしているのはきっとじぶんだけかも、なんて考えを助長させてしまうのが夜のこわさだから。

でも冷静に考えてみると、おなじように感じているひとを集めたら少なくとも一クラス作れるくらいの人数はいるんじゃないかな、とちょっと思った。みんな名前もわからないけれど、きっといまこの瞬間30人くらいは、わたしとおなじようになにかしらの感情と戦っているかもしれない。うん、そう考えたらすこしは心強くもなってくるなあ……なんて、そんな綺麗事をいえるほど、わたしはまだ前を向けていない。

だからいまだけ本音をいってしまえば。

だれにでも平等に夜を渡すのなら、夜を心から愛でる能力も平等に欲しかった。夜が明ければ朝がくる、そんな当たり前すぎる事実をちゃんと受け入れられる強さが欲しかった。夜は通過点に過ぎないかもしれないけれど、そのたった数時間がひどくこわいときがある。だから、それを乗り越えられるだけの力を分け与えて欲しかった。

そう理不尽にぼやきたくなるのは、夜の暗さのせいなのか、じぶんが弱いだけなのか。正解はわからないけれど、きっと夜の暗さのせいな気がする。その答えにすがらないと、もう二度と起き上がれなくなってしまうから。責任を押しつける相手は人間じゃない。だからどうか許してほしい。

そんなことを考えているうちに、いつの間にか次の日付に変わろうとしていた。きっと今夜も、いろんな感情を隠しながら夜が更けていくんだろう。

だから今日もまた、その暗さから目をそらすように無理やり目をつむる。

最後までお読みいただきありがとうございます✽ふと思い出したときにまた立ち寄っていただけるとうれしいです。