400字小説『日曜日の朝、きみとふたり』
日曜日の午前中。太陽の光にやわらかく照らされながら、大好きな彼と、大好きな本を読む。
──パラ。──パラ。
静寂のなか、それぞれがめくるページの音と互いの呼吸音が重なり合っていく。その音と空気と温度すべてが心地よくて、“この時がずっとつづきますように”、とひそかに願ってしまう。
「コーヒーのおかわり、淹れようか」
時計の針が一周したころ、彼が顔をあげた。彼のことばを栞にして、わたしは本をぱたん、ととじる。
「うん、ありがとう」
んっと伸びをして、キッチンにいる彼の後ろ姿を眺める。すこしずつ広がるコーヒーの香りと彼の存在が、ほぐれかけていたわたしの心を完全にとかしきってくれた。
「おまたせ」
甘ったるい笑顔に、甘ったるいコーヒーの香り。わたしだけに用意された特別メニューに、おもわず顔がゆるんでしまう。
「なに、にやにやしちゃって」
「ううん、なんでもない。いただきます」
幸せな日曜日は、まだまだ始まったばかりだ。
最後までお読みいただきありがとうございます✽ふと思い出したときにまた立ち寄っていただけるとうれしいです。