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エッセイ集

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日々書きとめたエッセイをまとめています。
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#雨

梅雨が明けるころ

去年の今ごろはもう梅雨明けしていたっけ。 ビルの間からのぞく何日かぶりの青空を見上げながら、そんなことを考えた。 去年だったかな、たしか梅雨入りしたのにもかかわらず全然雨が降らなくて、梅雨ってなんなんだっけ、とみんながつぶやいていたときがあった。梅雨の時期にあれだけ雨が降らなかったのはあの年くらいじゃないだろうか。 だから今年もそうなるかな、なんてすこし期待していたけれど、今年の梅雨はちゃんとお仕事をしているみたいだ。毎日せっせと雲を集めては雨を降らしている。だから、天

また傘をひらく日がくるまで

 ずっと、雨が苦手だった。雨が降っているだけで気分はどんよりするし、なんとなく、その日一日に希望が持てなくなるから。ずっと晴れが続いたらいいのにな、なんて考えていた日が、すこし前まではたしかに存在していた。    でも、なんでだろう。  ふと、いつも使っている傘が玄関のすみっこにそっと立てかけられているのを目にしたとき。なんだか急に雨が、傘が、恋しく思えた。そして、胸がきゅっとなった。ことばにするとしたらそれは、行き場のない申し訳なさや、さみしさ。そしてほんのすこしの絶望