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映画「バニシング・ポイント」を観てきた

先日、「バニシング・ポイント」という映画を観てきた。1971年のアメリカ映画である。古い映画だけれども、4Kデジタルリマスター版として上映されていた。

映画館に行くまではこの映画のことをまったく知らなかった。タイミングよくやっていたので観てみたのだが、すこぶるよかった!
感想を誰かに話さずにはいられない!

主人公のコワルスキーの、魂が美しすぎる。
その高潔な生き様が、全編を通して描かれている。

主人公は、「陸送屋」といって、商品である車を「陸送」する…つまり運転しながら依頼主のもとまで運ぶことを仕事にしている。

そして、本来はまったく急ぐ必要はないのだが、バーのマスターと、「デンバーからカリフォルニアまで15時間で行ってみせる」と賭けをしてしまう。そのため、時速200キロといった無謀なスピードで走り出してしまう。

すると、スピード違反で警察が追いかけてきた。
だが、主人公はまったく止まる気はない。
なんとしても止めたい警察。捕まる気のない主人公。
逃げ切れるのか?
車はどこまでも疾走していく…!

そして、その道中で邪魔をしてくる人、助けてくれる人などいろいろな出会いがあり、そのエピソードを通して彼の人間性がわかってくる。

また、ある風景に出会ったり、ある人を見かけたりするたびに主人公の回想シーンが入るのだが、それによって観客は彼の過去を知ることになる。

例えば、彼が並外れた運転テクニックで巻いたオートバイ警官が転倒したときには、その転がる様を見て、かつてバイクレーサーだったときに、レース中の事故で自身が転倒したときのことを思い出す、というように。でも、そんな彼は警官を案じて車を降りるのだ。そして、転倒したものの無事であるのを確かめるとまた車に戻り、猛スピードで疾走していく。

そうして物語が進んでいくと、彼には絶え難い「喪失」があったのだとわかる。
すると、どこかで止まって欲しい、このままでは破滅だ、と思っていた観客側も、ずっと疾走していたい彼の気持ちが痛いほどわかってくる。

そのまま、どこまでもどこまでも走らせてやりたい気持ちになる。


ネタバレになるといけないので、この先は言わないが、映画の終わりは見事だった。編集、という観点からも見事だった。蛇足もなく、これ以上ないというカタルシスを味わった。

https://vanishingpoint2023.com

コワルスキーは、いいやつだ。
自分の魂のままに、「取引」には応じない。
人生では、「ここは目を瞑ろう」「黙っていよう」とか、腐り切ったやつに加担しないまでも、火の粉をかぶらないために「何もしない」「抗議しない」という取引をしてしまうときがある。

でも、コワルスキーは黙っていない。正しいと思うことをする。
そのため、生きるうえでの選択肢はどんどん狭まってしまう。
それでも、構わない。
名誉なんてどうでもいい。

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コワルスキーというやつがいた。
そのことだけで心強くなる。
例え、映画の登場人物であっても。

ある意味、これは私の「ロッキー」だ。
そう、あのロッキー・バルボアである。

映画のテイストはまったく違うし、向かっていくベクトルも真逆だ。

けれども、「やった!あいつは、やったぞ!!」という感動がある。
「これでよかったんだ、あいつは命を燃やして生きたぞ!!」…という余韻がある。

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帰宅後、この映画の感想を小6の息子にしていたら、「観たい観たい!」と言い出した。だが、内容は大人向けの要素が多々あり(「無垢さ」を表すように、少女が裸でバイクに乗っているシーンなど)、成人してから観るようにと伝えた。

この映画は、いわゆる名画座というような映画館で観た。
現在は上映は終わったよう。

大きなスクリーンでは見れないが、現在ではAmazon プライムのレンタル(300円)で視聴できるようだ。


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