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アプガースコア12点

助産師といえど、正直私は最近、お産が怖くて仕方ない。

怖いと思うとおしもにも力が入り、開く子宮口も開かない。会陰も硬くなり、切れやすくなる。ふわ〜っと力を抜いて、上手に呼吸でいきみを逃しながら陣痛の波に乗ることができれば、会陰は嘘みたいにゴムのようにびよーんと伸びる。頭ではわかっているし、実感として痛烈に感じている。赤ちゃんも頭の骨を小さくして、さらに最小周囲径という一番細い部分を上手に合わせて出てくることも知っている。でも、妊婦健診のエコーで頭の直径9cm近くもの実測値を目にすると、どうしても不安になる。これ絶対、痛いだろう。頭でっかちの高齢初産婦は、難産傾向である。これも、実感としてかなりある。

来るべき分娩について、お産をお願いする助産師の先輩と話していた。その時に、彼女が言っていたことばがとても心に残った。

生まれ方がどうとか自然がいいとか、いろいろ言う人がいるけど、どんな生まれ方であれ、赤ちゃんが元気なことが一番だと思うんだよね。産んでおしまいじゃなくて、産むのがゼロ地点で、今度は育児が始まる。その育児のスタートを、真っ赤っ赤な元気ーな赤ちゃんとするのか、自然にこだわったり頑張り過ぎて呼吸もままならない顔色悪い青い赤ちゃんとするのかで全然違う。
私ときどき、「アプガー12点!」てつけちゃうことあるもん。
真っ赤っ赤でとっても元気に泣いてる赤ちゃんって、いるじゃない?

アプガースコアとは、赤ん坊の出生直後と5分後の顔や身体の色や、呼吸、筋緊張などの5項目を2点、1点、0点の三段階で評価するものだ。7〜10点が正常で、あとは点数が下がるほど、少しずつ元気がないことを表している。「呼吸−1、色−1でアプガー8!」などと表現し、母子手帳にも記入する、簡易的なひとつの指標である。マックスは10点なのに、あまりに元気で生命力に溢れた子には、つい2点余計につけたくなってしまう、という。その2点はなんの項目?笑、という感じで、もちろん冗談ではあるのだけど、なんだかその言葉を聞いていて、救われた。

赤ちゃんが狭い産道を通ってくるところを想像する。
陣痛の度に、自分を包んでいる子宮というお部屋が狭くなって、息苦しくて、そんな中頑張って、頭の向きを変えてひねって頭を小さくつぼめて、時には後頭部をびよーんと伸ばしながら生まれてくる赤ちゃん。その子が、やっと明るい外の世界に顔を出して、産声を上げる。その瞬間を、少しでも楽な状態にしてあげたい。私は、ただそのことだけに集中しようと思った。アプガー12点の元気な子が生まれてくるために、結果として促進剤を使おうが、会陰を切ろうが、もはやなんでもいい。

肩の力を抜いて、目の前の呼吸に集中して、ただ元気に生まれてくることだけを考えよう。マインドフルに、今ここ、に意識を持ってくる。

アプガー12点。そう唱えながら、私はお産に臨むことにしよう。
(36w6d)