Apple Musicで聴けるジャズ : Elastic - Joshua Redman

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往時のジャズ研キッズの脳をブッ飛ばした怪作 2.Jazz Crimes

調べてみたらもう発表自体はもう16年も前でドン引きしたんだけど、ゼロ年代中盤にジャズ研キッズだった我々は口々に「Jazz Crimesやばい」「レッドマンやばい」と言い合っていて、当時SNSといえばmixi全盛の時代、語彙が消滅するとかいうフレーズはまだどこで見られるということもなかったが、皆してその状態に叩き込まれており、例外はFAKE野郎の他には4ビート原理主義者の過激派くらいのものだった。しかし変なジャケだな。

Joshua Redmanという人は父親がそもそもジャズメン(Dewey Redmanというフリージャズの変な人とよく共演してた変な人)のうえにハーヴァードの卒業式の帰り道に出たセロニアス・モンクのコンペティションで優勝してデビュー決めた(卒業式の帰り道っていうのは嘘)エリート野郎で大層いけすかねぇんだけどプレイも作曲もアレンジも物凄いから誰も文句言えねぇタイプの超傑物。つーかあの親父からよくこれが出てきたもんだ。失礼か。

そんなパワー系インテリが今度はオルガントリオに目を付けた。なおそれまでスタンダードをこねくり回したり(「Spirit of the moment」)、同年代の仲間と悪だくみ(「Freedom in the groove」)などをやってた模様。

Jazz Crimesの、何がそんなにヤバいのか

ひとことで言ってしまうと「最初に不愛想に提示された時には全然わけわかんなかったイントロ、テーマ、バッキングのフレーズとリズムが、聴き終わったときには完全にわけわかっている」。とにかくBメロ前後、ソロ入り、ソロ明け、ラストと段階的にテーマの位置付け・バッキングの役割が腑に落ちるカタルシスときたら物凄く、このあまりの計算高さにインテリはこれだからと負け惜しみを言うくらいしかできなかったのである。

それでもなお果敢に、己を奮い立たせてアナリーゼ及びカヴァーに挑んだキッズもいたのだが、そのうち一人はSam Yahel(org)の異常に細かい左手ベースの前にあえなく玉砕した。理屈と技術の両面からぶちのめされたそいつは酒に溺れて身を持ち崩したというのは聞いた話。

Jazz Crimes以外にも粒揃いの名曲・佳曲が並ぶ

といってこの作品はJazz Crimesの一点突破ではない。のちにElastic Bandとして別のアルバムを一枚出す程度にはプロジェクトとしての側面がある。クールファンクで始めたと思ったらラスト1分で豪快にはっちゃける1. Molten Soulを皮切りにお前ショーシャンクでも観直したの?と言いたくなるタイトルの夢見がち分身ナンバー6. Can A Good Thing Last Forever?「Compass」「Beyond」辺りまでのレッドマン絶対1曲はこういうの入れるよな!という5. Still Pushin' That Rock7. Boogielastic、Samに好きにやらせたらご覧のあり様だよ!という9. News From The Front、モテに走った11-12. The Birthday Song(同タイトルの2連続トラック)など、全然多彩じゃないけど目先はグルングルン変わるので1回は通して聴いたほうがいい、おれもいつかそのうち挑戦しようと思っている。

で、結局これジャズなの?

うるせーーーー!バーーーーーーカ!


※余談。今でも映像に残る2003 TOKYO JAZZにおけるJazz Crimesのパフォーマンスは最高の一言で、プレイはもとよりスタジオ盤を上回るアレンジ、しかし白眉は顔芸。とくにBrian Blade(dr)のそれは当時みんなが顔真似をした。ソロでスクワットはするわハイトーンで眉毛が上がるわのRedmanも。

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