見出し画像

#20 南房総で停電になったときのこと④

台風から2日目の朝が来た。もしかして、もしかしたらと、電気をつけてみる。やはりつかない。トイレに行き、顔を洗おうと思って洗面台に行って、蛇口をひねる。水が出ない。キッチンの水栓をひねってみる。水が出ない。断水していた。タンクの水が無くなったらトイレも流れなくなっちゃう!「断水しちゃったよ!トイレやばいよ」と息子に声をかける。

すると、息子が「iphoneがつながらなくなってる」と言う。私のアンドロイド携帯はなぜか4Gとなっていたので、充電がほとんどない私のスマホから夫にLINEで断水したとメッセージを送ってみる。ところが、すんなりメッセージが送れない。「再送」となり、何度かやっているうち、やっと送れるような感じ。息子は学校からのお知らせを気にしているが、ネットもつながらないので電車が走っているかどうかも分からず、掲示板アプリなどもつながらない。「電車も走ってないだろうし、こんな状態なんだから学校を休んでも大丈夫でしょ」と話しつつ、もしかしてつながらないかな、とつい何度も試してしまう。義父母のことも心配で電話したが、何度かけてもつながらなかった。

★停電が原因の通信障害は停電と同時に起きるのではなく、電波基地局のバッテリーの充電が無くなってきて、だんだん通じなくなるっぽい。「弱まってきた」と思ったら、知らせるべき人には早めに連絡すべし!

着替えて1階まで降り、薄暗いロビーで管理人さんに断水の話を聞く。どうやら停電のために地下の水を貯水槽までくみ上げるポンプが動かないため、貯水槽にあった水を使いきったところで、断水になってしまったとのこと。外にある水道は使えるので、そこで水を汲んで部屋まで上がるしかないという。我が家は10階。息子にやってもらうとしても、階段で重い水のポリタンクを持って上り下りすることを思うと気が遠くなった。

★マンションの高層階に住んでいる人は特に水を多めに備蓄しておこう。エレベーターが使えなくなったときのことをシミュレーションして。

停電して、断水したうえ、通信障害(携帯だけでなく、光回線も切れててWifiもNG)となり、スマホの充電も20%くらいしかない。もう朝食のことを考える気力も無くなり、家にあったぬるいペットボトルのお茶を飲みながら、早朝から蒸し暑い部屋の中で考える。「車で東京に帰ることはできるのだし、これはもう、東京に避難していいレベルなのでは?」そう思っていたら、夫から「会社を休んで、車で向かっている」というLINEメッセージが入った。

「今日中に東京に帰れる」と思ったら、少しほっとした。「とりあえず、今日1日の辛抱だ」そう思い、まずは携帯の車内充電用のコードや飲み物を買おうと、息子と一緒に車でコンビニに行ってみることにした。

車で5分ほどのコンビニは看板が壊れたりしていたが、お店は開いていた。ドアは開いたまま。薄暗い店内に入ってみると、中には思いのほかたくさん人がいたのだが、食べ物がびっくりするほどない。パン、お弁当、おにぎり、サンドイッチ、デザート、アイス…食料の棚が空っぽになっていて、袋菓子と冷えていないドリンクばかりが並んでいた。電池などの商品も品薄だったが、携帯の充電コードは見つけたので、ペットボトルのお茶と、紙パックの野菜ジュースとクッキーを買う。計算はもちろん手動。支払いは現金。電卓が大活躍していた。車の中でスマホの充電をしながら、クッキーとジュースを朝ごはん替わりに食べた。

★困ったとき、人はなぜかコンビニへ向かってしまう。コンビニに、明かりがついていて、たくさんの商品が並んでいると、人はなんだか安心する。だからなのか、コンビニに何もないと、不安が増してしまう(私だけ⁉)

コンビニの前には車の大行列ができていた。なにかと思ったら、向いのガソリンスタンドの給油待ちの列だった。いつもはほとんど客のいない小さなガソリンスタンドだったが、手動ポンプを使って営業していたのだ。行列を目にして、思わず並びたくなったが、私の車のガソリンはあと半分位。「緊急の方のみ」と、貼り紙があったので、「半分あるから申し訳ないかな」と給油は断念。

せっかく車を出したので、何度電話をかけてもつながらない館山市内の義父母のところへ、様子を見に行ってみようということになった。車で館山方面へ走っていると、息子が突然、「キター!」と大声を上げた。なにかと思ったら、スマホがつながったというのだ。どうやら館山の中心部では通信障害になっていなかったようだ。義父母に電話をすると「朝から電話してるのに全然つながらないから、どうしたかと思った」と言われた。「昨晩、眠れましたか?」と聞くと、「暑くて眠れないから夜中の2時頃まで車の中で涼んでいた」との返事。しかも、ガソリンが無くなりそうだからと、朝からガソリンスタンドに来たが、1時間待ちなのだという。市内はどこも品薄になっていて、あちこちでガソリンスタンド渋滞になっているらしく、「あなたも今すぐガソリンを入れに行きなさい」と助言された。

★停電中、車は充電器になり、涼しい避難所になり、テレビやラジオなど情報源にもなる。ガソリンはいつも満タンに。

義父母の様子も分かったので、途中で引き返したが、気づくと道路がものすごい渋滞していた。なんとか渋滞を抜け出して先ほどのガソリンスタンドへ行ってみたが、行列はすでになく、ガソリンは売り切れてしまっていた。「まあ、まだ半分はあるから」と思い、家に帰ることにした。

家に帰ると夫が到着していた。館山自動車道が通行止めとなっていたため、大渋滞の下道を通り、いつもは2時間弱で来るところを4時間かかったという。そして、道中で屋根が飛ばされた家がたくさんあるのを見たと、その被害の大きさ、深刻さに驚いていた。

★断水の時はポリタンクが大活躍。一家に一個は常備しておきたい。邪魔なら、せめて折りたたみ式のソフトタイプを用意しておくべし。(追記:断水が前もって分かる場合は、予めお風呂に水を溜めておくといいかも)

とりあえず、サーフィンで使うポリタンク2つに水を汲み、息子に10階まで階段で運んでもらった。夫がペットボトルの飲料水を買ってきてくれたので、家で昼食をつくることに。メニューは冷凍庫で解凍された冷凍ピラフとお湯で溶いたカップスープ。ここでもカセットコンロが大活躍した。東日本大震災のとき、お皿にラップをかけて使うと、お皿を洗う必要がなく水の節約になる、というアイディアを聞いたことがあったので、試してみることに。すると、コストコで買った海外製の厚手で粘着力のあるラップ(Press'n Seal)が破れにくくて使いやすいことを発見!お箸も割りばしなどを使ったので、洗い物を最小限で済ませることができた。

★断水のときは、紙皿、紙コップ、割りばしがあるといいかも。お皿にラップ(コストコのPress'n Seal推奨)も覚えておいて!あと、アルコールティッシュなども、手を拭いたり、軽く食器を拭いたりできて便利。

昼食を終え、私は東京へ避難するための準備を始めた。ところが、息子はここに残りたいと言う。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?