穴を掘るアーティスト・古谷咲さんに学ぶ「減らす美」。「穴を掘ることで不要な情報や思考をそじ落とす」、これからの人生を生きていくヒント。
みなさんは「穴を掘る」アーティストがいることをご存知だろうか。
古谷咲(ふるや さき)さんだ。
作品作りを突き詰めていった結果、「地面に穴を掘る」という物理的・精神的なそじ落としの行為とその結果生まれる「穴」の存在から「減らす美」という新たなテーマを見出し、各地で精力的に制作活動を行われているアーティストだ。
穴を掘る、「減らす美」というアートがある
私が古谷さんを知ったのは、7月の連休にキャンプで訪れた唐泊VILLAGEだ。アートとして穴を掘る「Dig JOURNEY」なるものが開催されていた。Digは英語で「掘る」。Dig JOUNEYは、アーティスト古谷咲さんと参加者が一緒に作品「ANA」をつくり上げていく、参加型のARTワークショップ&キャンプのとのことだ。
Dig JOURNEY には参加しなかったのだが、創作の休憩時間のスイカ割に、子どもも一緒に参加させていただき、夜のテントBAR で少しお話しをすることができた。
素人のあまりに担当直入過ぎる質問に、丁寧に、熱をもって、こたえてくれた。そのとき古谷さんが語ってくれた言葉や、私たちへの投げ掛けが忘れられなかった。古谷さんの自分の中で消化して、大切な人たちにも伝えたいと思っていた。
皆さんはアート、芸術作品と聞くと何を思い浮かべるだろうか?
絵画や彫刻、建造物、公園などが思い浮かぶのでないか。わたしは、真っ先に岡本太郎の太陽の塔と、「芸術は爆発だ」の言葉が浮かんでくる。みな、自分の頭の中に、心に思い思いのアートがある。
平面でも立体でも空間でも、何かを創る、生み出すためには、その材料となる素材が必要となる。新しい何かを生み出すためには、一般的には物を消費する。
古谷さんは、アート生み出すために、大量に新しい材料を買いそろえて創作することに、違和感を感じられたそうだ。その違和感の根っこには、物や情報が大量に溢れた社会に対する想いがあり、これだけモノも情報も溢れているのに、また新しいモノを使って作品を生み出すことに、何かが違う、と感じられたそうだ。
最初は、捨てられたゴミや廃材でアート作品の創作に取り組まれていた。ゴミや廃材で創作を続けるうちに、それも何か違う!との気持ちが湧いてきたと。そこで、物を使って創るのではなく、「地面に穴を掘る、そこにあるものを減らす」ことを、ご自身のアートの形として生み出されたとのことだった。
何かが違う、自分の中の違和感を、心の声を無視しない。
「直感に従って生きることを大事にしている」と古谷さんは教えてくれた。
古谷さんのアートは新たな価値を生み出すために多くを消費しない。
穴を掘る土地の、土の個性に向き合い、掘る穴の大きさや深さを考えるという。掘った穴もアートなのだが、掘っている瞬間に自分の中の不要な思考や情報もそじ落としていくという。その表現されたものが「穴」となる。
ユンボで掘れば手取り早く出来てしまう穴を、自らの体を使って掘ることに意味があるのだ。便利な機械やツールを使えば、効率よく、最短でゴールに達することができるだろう。わたし達はゴール達成を成し遂げると、今度は空いた時間でまた何かを行う。日々、いくつものタスクをこなしながら生きている。
私はいつも急いできた。何をするにも、終わりの時間から逆算して動く。複数のタスクを並行して進める。休みの日にも、やりたいことが溜まり過ぎて、忙しかった。
手作業で、ひと掘り、ひと掘り、穴を掘るという行為は、とても贅沢な時間のように思えた。
「穴を掘る」アートから、わたしが受け取ったメッセージ
そこにあるモノと対話し、そこに在るモノを活かす
そのモノの個性・本質に向き合う
そのモノを活かし、楽しむ
そのモノは膨大に膨れ上がってしまってはいないか
新たなものを足すことを辞め
削ったり、捨てたり、減らしてみてはどうか
そこに残るモノが本来の自分自身なのではないか
一人ひとりが自分の人生を創っている
それもアートと呼べるかもしれない
大量のモノや情報に埋もれて苦しくなってはいないか
便利過ぎる世の中で、なんでも早く効率よくやれてしまう世の中で
沢山のやらなければならないことに押し潰されてはいないか
わたしたちも穴を掘ろう
ひと掘り、ひと掘り、穴を掘ろう
重い荷物を、頭の中に、心にうごめく情報や思考を
捨て去ろう、減らしていこう
そぎ落とされ、シンプルであることの美しさよ。
次回こそは、私も穴掘りに参加したい!
【追記】古谷さんに記事を共有したところ、メッセージをいただいた。穴を掘る世界、まだまだ未知の世界が待っている。そんな未知に出会いたい。
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どんどん掘ると、未知がどんどん出てきます。そして世界は広がり続ける。
このご時世、増え続けてしまう色々なものを、手放す(外へ出す)ために、私自身も掘っているのかもしれません。
ぜひ一緒にやりましょう!
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