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まだ生きている。


明日、世界が終わる

ブラジャーの紐が絡まる明日から洗濯なんかしなくていいの

甘たるいキャンディーを舐め寂しさた気ままの間でひねもすゆらり

土薫る闇市で買った花の種チューリップという名前らしい

殆どは即死はせずに舞い上がるチリとかホコリで死んでくらしい

店仕舞いのつもりだったが客が来た百十二円の手帳が売れた

スライムで遊びたかった死ぬ前に気付けて良かったぐにゃぐにゅぐにょぐ

目覚ましのアラーム解除を忘れてた地球最後の朝日が昇る

おまえには最後の仕事がたぶんあるゴミ箱から拾うカレンダー


魔王vs勇者

なにもかも遅いと知ったそれでもなお立てと叫んだ君を信じた

弾け飛ぶ仲間の首を見なかった立ち竦む暇などなかったから

袈裟斬りに殺した敵の血に紛れ指輪の内を見た後悔

王の首討ち取ったりと喜んだ者の首から上を落とした

偽物の王さえ殺すこの先に世界の平和が待っているならば

はんぶんもいらないけれどすこやかに明日が続く世界が欲しい

何度生まれ変わってもあなたを探す

運命の相手ではない会わずとも死なないだからこそ会いに行く

名前すら隠されているこの国の文字の海からあなたを探す

あと何度繰り返せば良い?生まれて生きて探して死んで

湖の底で見つかる2年前ここを探していれば良かった

もう二度と別れることが出来ないとしてもあなたに会いに行きたい

いくつもの世界を超えた君とならきっと遊べる間違い探し

確率はほとんどゼロだ「ほとんど」の意味を何度も確かめた夜


禁忌の呪文

かさかさの落ち葉が濡れて重なって張り付くような呪いの言葉

色褪せた桜の花が流れ着く排水溝に祈りの言葉

おふとんの中、結露した窓、揺らぐ炎になぞる願いの言葉


まだ生きている

アスファルト潰れた猫が落ちていた足が動いたまだ生きていた

飛び跳ねる苺がぴょんと飛び跳ねるケーキの上で待つなんて嫌

点滴のしずくがひとつまたひとつまだ死んでないまだ生きている

あかねさす天使の梯子転げ落ちても伝えたい最期の「おはよう」

「たい焼きは空を泳いだ」釣り人の手から攫ったカラスが言うには

春うらら第二志望は受かったしこのぬかるみを歩いていくよ


あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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