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『エゴ丸出しで良いと思うんです。ただ…』環境と向き合い続けた微生物のスペシャリストが担う『循環の肝』


和饗エコファーム株式会社にお勤めの倉地利幸さんは、下妻にある干し芋工場の責任者をされています。
学生時代から一貫する『環境』への関心と、倉地さんが思う『循環』についてお聞きしました!


ー 2週間あれば跡形もなく…

───倉地さん、よろしくお願いします。

はい。こちらこそよろしくお願いします。

───今回は下妻の干し芋工場にお伺いしているのですが、倉地さんはここの責任者でいらっしゃるんですね。

そうです。弊社の肥料を使った農業と農作物の六次化のため、3年くらい前に新規事業として始まりました。


下妻産のサツマイモで作る干し芋。どんな味なんだろう?


───倉地さんがお勤めの和饗エコファームさんは、肥料の会社なのでしょうか?

肥料の製造販売も行っていますし、自社農園の運営や、自社の田んぼで取れたお米から日本酒の委託製造をしたりしています。あとは、その日本酒や取れた野菜を食べられるレストランの経営もしているんです。

───肥料からレストランまで!作るだけじゃなく、食べるところまで手がけているんですね。

和饗エコファームは、共和化工という会社のグループ会社になるんですが、実は肥料の原料になる堆肥は共和化工で作っています。
私も元々、共和化工の堆肥化プラントで所長をしていたんですよ。

───えっ、そうなんですか!せっかくなので堆肥化プラントについて教えて頂けますか?あまりピンと来てなくて…

はい。共和化工は元々、水処理の会社なんです。生活排水なんかを処理する施設をまるまる手がけていました。水処理をしていると、最終的にどうしても汚泥が出てくるんですが….

───(なんか小学校の時に聞いたことがあるような…)

その汚泥を再利用するために始まったのが、堆肥化の事業でした。汚泥と種菌と呼ばれる菌のもとを混ぜ合わせて、発酵させることで堆肥にすることができるんです。

発酵するとだいたい70度くらいの熱が発生するのですが、弊社では特許の菌を使っていて90度くらいまで温度が上昇します。
90度近くまで温度が上がることで病原菌なんかを死滅させることができるので、安全性の高い堆肥になるんです。

───小学校の裏手にあった腐葉土の山から湯気が出てたのを思い出したんですが…もしかして同じですか…?

同じです!菌の力で有機物を分解して、堆肥にしているんです。
発酵するものならなんでも堆肥にできるんですよ。

───発酵するもの…生ゴミとか、有機物って呼ばれるものですよね。

私は高知のプラントにいたのですが、高知はマグロの養殖が盛んだったので、病死して売りに出せないマグロなんかも運ばれて来てました。2週間もあれば跡形もなく分解されてしまいますね。もちろん人間なんか落ちたら大変です…(笑)


───ちょ、急に怖いこと言わないでください!(笑)それにしても菌の力、恐るべし…!

「人間なんてDNAも検出できないと思いますよ」…怖いですって!!

ー 役に立てれば良いなあって


───倉地さんは高知のプラントにいらっしゃったとのことでしたが、ご出身もそちらですか?

出身は岐阜県の下呂市ってところです。下呂温泉のあるところですね。

───下呂温泉!行ったことないですが、もちろん知ってます!
じゃあ就職を機に高知へ行くことになったんですね。

それが実はそうでもなくて、大学も高知でした。

───そうだったんですか!高知と縁がありそうですね。

手探りで研究していった干し芋作り。まだまだパワーアップするそうです!


高知の堆肥化プラントは私が入社してからすぐにできたんですけど、プラントの設立に母校の大学も関わっていました。もしかしたら最初からそこに送り込むつもりで採用されたのかもしれません(笑)

───たしかに、偶然にしてはよくできてるような…(笑)
その高知の大学ではなんの勉強をしていたんですか?

環境学部で微生物などの研究をしていました。

───その経験が今のお仕事に繋がっているんですね!
大学の環境学部に入るってことは、高校生の時には『環境』に興味があったんですか?

中高生くらいから環境系のことをやりたかったんです。
本当に漠然と『環境』に関わる仕事ができたら良いな〜程度でしたけど。

───倉地さんが中高生くらいの時って、環境問題とかってあまり注目されて無かったんじゃないですか?

ちょうどブームになりはじめたくらいかな…?
学生時代、運動が嫌いで図書館に入り浸ってたんですけど、そこで「地球の〇〇が危ない!」みたいな本を読んだんです。

───最近はあまり見かけないですが、たしかにそんな本があったような…

それで、自分たちが住む地球ってなんなんだろうって思い始めて…どうやら資源に限りがありそうだなと。環境問題って僕らの世代だけでは解決できない問題だろうし、役に立てれば良いなあって漠然と思ったのがきっかけです。

───その頃からずっと想いが変わらないって、すごい…!

学生の頃からずっと環境のことをやりたかったって言えばかっこよく聞こえますけど、どうしてもそれがやりたかったというよりは、それぐらいにしか興味を持てなかっただけなんですけどね。あとは偏差値の問題とかもありますよ(笑)

───いやいや、それでもこうしてここまで続けるのは簡単なことじゃないと思います!

環境にも優しい干し芋!保存料・甘味料・着色料・香料も無添加です。

ー『循環の肝』


───堆肥化プラントの所長から打って変わって今は干し芋工場の責任者として働いていると、かなりギャップがありそうに思えるのですが、いかがですか?

3年前に「下妻で農業と干し芋工場やるぞ!行ってこい!」と言われた時はびっくりしました(笑)

───
今までに無かった新規事業ですもんね!

新規事業とかって好きなんですけど、多分向いてなくて…
始まるまではワクワクしてるのに、いざ始まるとハードルが多くて「うわ〜!」ってなります(笑)
でも、これまでやってきた仕事の集大成というか、『循環の肝』になる部分だと思ってるんです。

───『循環の肝』、ですか?

そうです。弊社には『資源循環の輪を一社で繋げてしまおう』というコンセプトがあるんですが、その循環の肝になると思っています。
生活排水を処理して堆肥にする。それを肥料にして作物を育てる。そしてその作物を食べてもらうことで、また市民生活へと戻り、循環していく流れですね。

───今の倉地さんには、循環を繋ぐ最後のポイントが任されているのか…!

手探りなので大変さは感じますし、「どうしよう、どうしよう」って思うことも多いです。でも一貫して環境の仕事をしたいという気持ちは変わらないですし、今までやってきたことは間違ってなかったんだって思えます。

環境の話をしているときの楽しそうな倉地さん。本当に好きなんだなあ。


ー 人間のエゴで終わらないように


───ずっと環境のことを思ってきた倉地さんだからこそ、『循環の肝』が見えているような気がします。

でも、本来は飽き性なんですよ…これ以外続けられてることってほとんどないかもしれません(笑)
昔から本を読むのが好きだったりするくらいかなあ…あ、あと実は神職の免許を持ってるんですよ!一番下の位ですけどね。

───えっ!神職って神社の神主さんとかのあれで合ってますよね?(笑)

そうです(笑)
祖父が雇われ神主をやっていて、僕が大学生の頃に「身内に免許取らせておこう!」ってことになって、取ったんです。

───神事に参加することもあるんですか?

最近は全然ですけど、社会人1~2年目のころは地元の神社で神主さんの手伝いをしたりしてました。
もし仕事をやめることがあったら神職につきたいです(笑)

───良いですね!(笑)環境や微生物の話を聞いてばかりだったので、倉地さんの意外な一面が見れた気がします。

神道の考え方が好きなんですよね。
神道の自然的で大らかな考え方って、たくさんの人に受け入れてもらいやすいと思うし、環境にも繋がってくると思うんです。

1つずつ丁寧に。


───神道が環境に繋がってくるんですか…?

神道って自分だけのことを考えるんじゃなくて、自然や周りの人のことも一緒に考えていくんです。それが自分たちが長く生きていくことや、日々の生活に繋がっていく、みたいな。

───あ、環境問題と同じかも…

エコ』と『エゴ』は近いところにあると思っていて…
人間はエゴ丸出しでいいと思うんです。豚や牛、生き物たちの命を頂くこと、環境資源を使ってしまうことは、生きていく上で必要なことだから仕方のないことですし…
ただ、その上でどうするのかが大事で、人間のエゴで終わらないように、エコについても考えていく必要があると思います。

───自分たちの生活に必要だからこそ、どういう問題が起こっているのか、どうしたら解決できるのかを考えることが大事かもしれませんね。
今度からそういう目線で買い物をしてみようかな…!

倉地さん、ありがとうございました!


真面目で誠実な倉地さんの、お茶目な一面も見れました(笑)

〇和饗エコファーム
HP:http://wakyo-ecofarm.co.jp/

取材執筆・写真:宮澤
編集
:纐纈
紹介:下妻市地域おこし協力隊 荒川安莉twitter:https://twitter.com/shimotsuma_life

取材月:2022.9

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