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ラブレター


友人に頼まれてラブレターの代筆をする。本が好きで、文章も上手だからと。買いかぶりだった。千の物語を知ってはいても恋は知らない。それでも悪い気はせず、母にそのことを心持ち自慢げに話すと、わたしも同じことをよくしたと懐かしむように、昔より肉の落ちた白い首を掌で包む。母の癖。顔も知らないあのおぞましい父に、母自身のラブレターを書いたことはあったのだろうか。わたしが父の女であるような戦慄が、不意にからだのなかを白く貫き、やわらかい吐き気がきた。

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