ホモエロ小説書きが影響を受けた漫画のこと

なるべく1人の作家さんについて1作にまとめたかったんですが・・・、無理でした(笑)。
メジャーどころばかりで「みんな知ってるよ」って感じかもしれませんが、しがない五十代ホモが過去を振り返って思い出し笑いしてると思って我慢ください。
文中、つい「先生」「大先生」と付けたくなるんですが、読みにくさを考慮して敬称略しております。
もうどの作者さんにも「大大大大先生!」って付けたいんですけどね(笑)。

まずは幼少期のものから。

●のらくろ(田河水泡)
世代的には違うんですが、父親の実家に揃っていたので毎週末泊まりで行ったときに読みふけってました。
今から思えば簡単な構図ばかりのコマワリでしたが、やり取りの面白さは秀逸。漫画上では実はほとんど表情の変化無かったのらくろが、思い出そうとすると表情豊かに脳内に再現されるのは、とても不思議に感じています。
後に手塚治虫が極めた漫画表現における感情や動作の記号化もすでにやられていたなと。
巻が進むにつれ題も変わっていき、軍隊の中の階級にちょっとだけ詳しくなれる作品でしたね。

●サザエさん(長谷川町子)
これも父の実家で。おそらく父の一番下の妹が揃えていた模様。
起承転結、序破急などという表現における技術の大半は、この作品で学ばさせてもらいました(笑)。
今でもテレビの最後に出てくる4コマネタは、ほとんど記憶に蘇ります。
姉妹社っていうのがホントの姉妹で作られていたのはびっくりした思い出。

●鉄腕アトム(手塚治虫)
これはもう自分の小さいときにも既に別格扱いだったんだろうなあ。少し年行ってロボット物の悲哀が分かるようになってからも読み返してました。
中期の作品でアトム誕生の部分を描き直されているときに「同一個体が同時に生存できない」というタイムパラドックス物ではよく使われる定義をさり気なくロボットに当てはめている自然さが、さすが巨匠&涙モノのストーリーでした。
講談社の手塚治虫漫画全集版は揃えてて、学生時代に本棚整理しようとブラックジャックとかと一緒に従兄弟に全部やっちゃったのは、後からちょっぴり後悔した(笑)。
火の鳥は一通り目は通したけどなんか自分には合わなかった記憶。ブッダの方が読み込みがいがあったというか、何というか。


・・・で、今回この文章書くに当たってネットでちょっと調べていたら、上記お三方に繋がりあることを知ってびっくりしました。
手塚治虫は幼少期にひたすらのらくろを真似して書き写し、その作者の田河水泡の内弟子が長谷川町子だったとのこと。
当時、今ほど漫画というものが市民権を得てない時代、才能ある人はやはり同じく才能ある人のところに集まるのだなということを感じさせられましたねえ。


ここから先はおそらく小学校高学年ぐらいから嵌まったもの。
並べてみるとやはりSFが多く、匂いするものはとりあえずは読んでみる癖があったんだろうな。

ただ、少し自分の年齢上がってくると、もうほとんど当時で言う少女漫画へ興味が移って行ったのはいったいなんなのか?
姉がりぼん派で毎号買ってたのもありますが、それだけでも無いようなあるような。自分でも謎な部分ではあります。


●風と木の詩(竹宮惠子)
ホモだから興味があった、というわけでは無かったかと思います@初読。
同性同士の性描写も出てきて、おそらく発表当時は大騒ぎになったんではないかいな。BLなどという言葉が出来る以前「少年愛」と評される表現でよく槍玉に上がっていた記憶。
ホモとしてのタイプは登場人物中に一人もいなかった・・・。仲良かった女子(今でいう腐女子?さん達だったか)と一緒に、イラストをトレーシングペーパー使って模写、色鉛筆で裏側から彩色してしおり作成、とかでキャッキャッやってたのは秘密です(笑)。
やはり当時からの圧倒的な画力と先が読めないストーリーが面白かったの一言。
果たして作者はオーギュなのかセルジュなのか、自分には読み取れなかった詩の一部・・・。

きみは わがこずえを鳴らす 風であった

風と木ぎの声が 聞こえるか
青春のざわめきがー

思いだすものも あるだろう
自らの青春の ありし日をー

・・・今でも涙が出てきます。

●地球へ・・・(竹宮惠子)
こちらは超能力者と非能力者の闘いの中、人類の生まれ故郷である地球を目指していくお話し。
映画も良かったですし、トワエモアの主題歌は今でも歌えたり(笑)。超能力者の中でも帰還派とナスカ派に別れて争いが起こりそうになる描写は秀逸。
SFとしてはアンドロメダ・ストーリーズも大作でしたが、あちらはSFに乗っかった貴種流譚物のイメージが強かったかな・・・。

●魔太郎が来る!!(藤子不二雄Ⓐ)
当初のおどろおどろしい個人的ないじめへの復讐から、最後は善と悪の闘いという感じにまで広げたストーリーの破綻の無さはさすがです。
自分もいじめられっこに近かったせいか、最初のうちの受けたいじめの恨みを色んな道具を使って晴らしていくのは単純に面白かったなあ。
最後の敵に向かうとき、本来敵の一味であったはずの切人親子が助太刀に入るシーンは、なにかこう巨悪に対峙する悪に染まりきれない存在って感じで、思い返すと鬼平犯科帳的風味があると考えたのは、きっと自分だけだと思ってます(笑)。

●ミクロイドS(手塚治虫)
テレビアニメを見ただいぶ後に、手塚治虫全集買い揃えて行く中で読んだのだと記憶してます。
なにより、アニメと原作漫画(この作品は同時進行だったようですが)とで、これほどまでに雰囲気変わるのだと驚きました。それ以来、アニメや映画で気になる作品には必ず原作の小説や漫画に目を通すきっかけとなったものです。
漫画の方では当初ミクロイドは人間の味方というわけではなく、ヤンマに至っては憎んでいたとも言える描写だったと記憶しています。石ノ森章太郎の仮面ライダーとも並んで、人間の度を越した科学偏重や自然破壊にも痛烈な視点を持った作品でしたね。

●ラブ・シンクロイド(柴田昌弘)
自分のある小説作品群の元ネタの一つ。連作中の歴史を紐解く作品のラストの文章は、完全にこの作へのオマージュになってます。
地球から遥か遠い惑星では何世代も前から男性が生まれなくなっており、女性のみで構成する社会を維持するための様々な施策が行われていた。そこに頭脳優秀な科学者が地球の青年男性の意識を取り込んだアンドロイドを開発し・・・といった完全なSF物。
私の方の小説では、ほぼその社会設定を裏返して使っている感じです。
作中で身分社会を相当に皮肉ってるのも、作者がよくやる「SFにしろなんにしろ、実はその描写は『今の』現実に根ざしている」という作風の一つかと思ってます。

●紅い牙シリーズ(柴田昌弘)
古代の血を引く少女は超能力の巨人だった、という元々は1本ネタでシリーズ物をやってしまうという、ホントに力量無いと出来なかった作品群。
血で能力を分け与えるという設定は横山光輝のバビル二世→その名は101でも見られてましたね。
シリーズ最大の山場(ブルーソネット)では阿蘇山が大噴火し、熊本は壊滅的な被害を受けてしまいますがな(笑)。作者がアシスタントされていた和田慎二氏の作品もけっこう読んでましたなあ。

●斎女伝説クラダルマ(柴田昌弘)
歴史の影で密かに男達を支えてきた女だけの一族。それは性的エネルギーのコントロール法を技術として学び、男達のあらゆる力を引き出すモノだった・・・。
なんて設定厨の自分にはもう涎モノの内容。女達を守る屈強な男達は顔を見られぬよう面を付け、自らの性機能を封印して・・・などの描写に、ホモとしても燃え上がっておりました。作中で面を外した男の年齢が意外にも若く、舌打ちした覚えあり(笑)。
宗教的儀式とエロを結び付けてしまう自分の妙な思考回路は、もしかしたらこの漫画で植え付けられたのかもと思っていたり。
そう言えば獣人化しちゃいそうになるおっちゃんとか、タイプだったなあ(笑)。

●有閑倶楽部(一条ゆかり)
私の中で、りぼん最強説を具現化するお方&私の中で少女漫画に戦隊モノの概念を持ち込まれた巨匠です(笑)。
色々なテーマのものも書かれてますが、この作品はとにかく腹抱えて笑えます。
大病院の、警視総監の、スウェーデン大使の息子達と、大財閥の、茶道家元の、宝石商の娘達が生徒会役員として集うセレブ私立高校生が、毎回あれやこれやに巻き込まれながら、超高校級の知性と体力と美貌と財力(笑)で解決していくお話し。ああ、あんな生徒会室で過ごしたかった高校時代。でもでも、ひたすらセレブな私立高校なので、入学金の段階で検討すら出来なかっただろうなあ・・・(笑)。

●日出処の天子(山岸凉子)
言わずと知れたお凉さん。
版によって違いますが単行本で10巻前後になる作品の、ラストシーンを完全に想定した上でのストーリー展開だったと分かったときに、中身の凄まじさと共に頭をぶん殴られることになります。
厩戸王子=聖徳太子と蘇我馬子の関係を描いていきますが、そこにはもうお凉さんお得意の、実に濃縮された人間関係と、超能力や同性愛といったテーマが何重にも絡み合っていくという、読後はもうお腹いっぱいになる作品。
実は初めて厩戸の笛の音を聞いた大姫には幸せになってほしかったんだけどなー。

●アラベスク(山岸凉子)
お凉さんの作品二つ目。
このアラベスクも一部二部合わせて持ってました。題名通りのバレエ物ですが、主人公ノンナのいじらしさ(可愛いという意味では無く)がだいたい悪い方に向かう(笑)&当時珍しかったソ連を舞台とした漫画ということで興味惹かれました。
あ、でも二部に出てくるバイセクシャルっぽい(それもまた演技なのかすら分からない)年上の女性の造形は、今ひとつ理解出来ないままでしたねえ・・・。

●マーズ(横山光輝)
非常に幅広い作品を描かれている横山光輝ですが、自分の一押しはコレ。
バビル二世にも似た雰囲気がありますが、ロボット同士の闘いに絡めた人間ドラマかと思いきや、ラストはそれかい!と叫び声を上げそうになった作品です。
終盤に主人公に石を投げつける人間達の姿は、今でも鋭い指摘として生きていると思います。
テレビアニメも放送されましたが、あれは題名と作者の名を借りたまったくの別物なので、興味あられる方はぜひ原作の漫画を読まれてみてください。

●河よりも長くゆるやかに(吉田秋生)
代表作のBANANA FISHシリーズや最近の海街diaryシリーズももちろんいいんですが、自分の中ではこのあたりの「四畳半フォークの世界からほんの少しの時代が過ぎた頃」の作品が一番しっくりきます。
作中で描かれる高校生の性体験や、水商売や女装バーで働く主人公達やそのお客さんに対しても、からかいや卑下する描写がまったく見られず、そのあたりも自分が心地良く感じていた所以かもですね。


●萩尾望都
もうこの方だけは一作品に絞るなんぞ出来ようはずも無い、自分内での別格的存在。ここから下はいくつか書いていきますと・・・。

●ポーの一族(萩尾望都)
言わずとしれた、最近も新作書き続けられているバンパイア(作中ではバンパネラ)物。永遠の少年、という設定をこれほど生かした吸血鬼モノをまだ他に自分は見たことがありません。
後期になってくるとバンパネラ側に色んな能力付加されてきてて、そのあたりは色々思う人もおられるでしょうが、中期のいったん現代に筆を移したときの伏線回収の見事さには唸ったものでした。

●マージナル(萩尾望都)
SF&男性単性社会の描写という、ありゃ、どこかで見たような設定モノ(笑)。これもまた自分のある小説連作の元ネタの一つ。
ある日突然、地球は菌類に汚染され海は赤く染まり、女性の出産率が0となった。そこから監視するものとされるもの、地球のある土地で生かされていることを知らぬ人々と遥かかなたの宇宙からそれを見つめる人々。二重三重にも構築された社会構造を破綻無く物語に取り込んでいるのはホントにすごいです。
作中の「自然が女性を取り戻そうとしている」というような視点の持ちようは、なぜか女性作者ならではのものだよなあ、と当時勝手に思っていたのは、小さい頃から自分が受けているであろうジェンダーバイアスのせいなのかしらん。

●百億の昼と千億の夜(萩尾望都)
原作は光瀬龍氏の小説ですが、重厚長大なあの作品を、一体どれほどに読み込めばあれだけのみずみずしさを持った作品として世に出すことが出来るのか。
冒頭の「寄せてはかえし 寄せてはかえし・・・」で、もうダメ。惚れる。
原作も漫画も、どちらも傑作以外の言葉が見つからない。未読の方はどちらからでもいいので、ぜひとも一読をお勧めします。ああ、でも、小説、確かに長いので、読み慣れておられ無い場合は漫画からの方が入りやすいかも。

●11人いる!(萩尾望都)
こちらはSF宇宙閉鎖空間モノの傑作(傑作多すぎるな・・・)。たぶん同世代のSF好きの中では「赤いボタン」の意味するものはほぼ通じ合っていたのではないかなと思えるほど、記憶に残るものでした。
両性体、テレパシー、直感力、伝導ツタ、デル赤班病などのSF的ガジェットを網羅しつつ、実はヴェルヌの二年間の休暇=15少年漂流記と同じく若者達の成長の物語。そう言えばヴェルヌ、SFの父とか言われてるんだった。
続編では「赤いボタン」の無い現実世界に向き合う青年達の姿が描かれます。

●スター・レッド(萩尾望都)
ラストが切なすぎ。
「世代間における特殊能力の集積」という、今のジャンプ漫画にも通じるネタ。火星に移り住んだ人類は様々な特殊能力を獲得していき、さらにはその能力は世代を経る毎に強く深くなっていく・・・。
途中出てくる情報戦での「カブールの縄張りの取引」は読んだ当初は地名も含めて何のこっちゃだったんですが、少し大人になってみると「当時あそこを話題にしてたなんてすげー!!」となった作品。傑作(ああもう)、読むべし。

●銀の三角(萩尾望都)
萩尾望都、自分内ぶっちぎり一位!
ああもうこれも、語彙力の無い自分にはどうにもならないほどのの大大大傑作(もうダメだな)。
この世界すべてに影響する時空の歪みが、ただ1人の人間?の生死によってのみ帰結すると分かってしまった人間?の取り得る選択はなんなのか? というテーマだと考えていいものなのか? という読み取りをした自分はそれでいいものなのか? という感じに、ページをくる度に目の前に次々と表れる世界の広がりは、ミラーハウスか万華鏡の世界に紛れ込んだようです。
初出がSFマガジンというのも凄いんですが、結果的に単行本一冊に納めきっている筆力に圧倒されます。とにかく手に取って読んでいただきたい。そんな陳腐なほめ言葉しか浮かばないほどの大傑作。


●ファイブスター物語(永野護)
たぶん信者、いやもう信者(笑)。
立体物にはお金なくて手が出せてませんが、印刷出版がモノはほとんど持ってるんではないかいな?
ファティマやGTMに惹かれてるわけでは無いので、設定好きからくるストーリーや話の面白さがファンであり続けてる原動力なのかなあ・・・。設定の文章読むだけでも、文庫本何冊分あるんだいというほどの情報量にマゾヒスティックなヨロコビを見いだしてしまうのが、信者たるもの・・・(笑)。



・・・ひたすら書きなぐってきましたが、書き出すともうどれだけでも出てきそうな感じです(笑)。
大半は学生時代に本棚を整理したときに、譲ったり売ったりしちゃったもので内容に記憶違いなどもあるかもしれません。
もちろん今でも漫画大好きで、週刊雑誌や単行本も(ネカフェのおかげもあり)けっこうな頻度で目は通していますが、考え方などに「影響受けた作品」となると、どうしても小中学校ぐらいに読んだものがメインになりますな。
石ノ森章太郎氏や諸星大二郎氏、山本鈴美香氏などまだまだ多くの作家さん、作品ともに、語り出すと遥かに長くなってしまいそうで、どうしようかと思案中。
一作品について深く読み取り、自分の言葉で書き綴る、なんてのも憧れますが、自分には出来るのかなあ・・・。
ざっと思いついたものを並べると、結局有名どころかい、という感じになってしまいました。

もし少しでも興味持たれた作品などあられましたら、ぜひ手にとって読んでみてくださいませ。
最近、書籍はなるべく実店舗で購入するようにしている私でした。



先般、ほぼ同じ題名で書いた、影響を受けた活字物(小説)についてはこちらをご覧あれ。

https://note.com/santas1966/n/n2649a367f9f5


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