見出し画像

災害時の避難所における感染症対策について

避難所における感染症対策私案

4年前の熊本地震の際、私は家族と避難した先の小学校体育館(自分の母校でもあります)をメインとした校区避難所(一次避難所)で、運営委員会的な立場をさせていただきました。
明確に運営委員会としてメンバーを確定していた訳でもなく、また代表も呼びかけ人の私がなんとなくそんな風に、といった感じでした。

地震後、熊本市から平時より校区ごとに避難所の運営委員会を組織しておいて、次の災害発生時に備える方針が出されました。
現在は町内の役目の割り振りにて、熊本地震当時とは違う学校での避難所運営委員会に参加し、救護福祉班の班長をさせてもらっています。その中で年に2回の避難訓練や、避難所運営委員会としての学習会などに参加してきています。

熊本地震は時期として4月中旬の発災であり、当時すでにインフルエンザの流行は治まっており、その点では感染症に対する不安は少なかったと思います。
食中毒にはかなり気を使いながらの運営でしたが、幸い私がいた避難所では発症無く避難所を閉じることが出来ました。

現在の避難所運営委員としても、インフルエンザやコロナウイルス、その他感染性の胃腸炎(いわゆる食中毒)等の感染発生・拡大時に、どのように対応していけばいいのかな、と考え始めました。
熊本市が用意してくれている準備マニュアルにおいてもいくらか記してはあるのですが、実際の避難所運営に関わらせていただいた者として、少し詳しくまとめてみようかと思った次第です。

実際にはこれを叩き台にして、救護福祉班のメンバーに目を通してもらい、今後の運営委員会に出していこうかと考えています。

ウイルス禍が落ち着いてくる段階、おそらく来年度当たりには今の状況を踏まえた方針が熊本市からも出されてくるとは思います。
それでも正直1000名以上が利用対象として推定される避難所で、今の状態でまた大きな災害が起きたらと思うと、あまりの恐ろしさに目の前が真っ暗になりそうです。

現在のような状況の下で、広域でかつ大きな災害が発生した場合、医療支援や対応が望めない状態がしばらくは続くかもと思っています。
運営委員会には地域の医師、看護師も入っていただいていますが、地域全体の医療資源としての責務を果たさないといけない立場になられるかもしれず、実際に避難所に来て運営に直接携わっていただけるかは未知数です。

行政側には指定避難所の絶対数を増やし、一カ所あたりの想定避難者人数の縮小化を図ってほしいこと、県外等への遠距離避難をも視野に入れた支援策や道路整備、移動手段の想定などを申し入れていこうとは考えています。

とにもかくにも、感染症発生下の災害避難所運営について、現時においての私案草案であり、色々と変わっていくとは思いますが、まずは箇条書きメモとして。

2020年04月11日 初校
2020年05月02日 行政への申し入れ内容追加




「災害時の避難所運営における
       感染症対策についての私案」

避難所開所時
 発災時が感染拡大時には教室を
  メインに使用(集団の分散化)
 その際、感染者隔離用に
  2、3教室は未使用部屋を確保
 感染者の入る室はなるべく別棟
 調理室の近くの室利用は避ける
 清潔な水の確保
  地下水等利用時には一度煮沸
 上水使用水道は箇所を限定し、
  感染者が出た場合は
  トイレと同じく分離使用にする
 利用者の風疹、麻疹、水痘等の
  発症が無いかの確認*
 妊娠されている方の把握*
 避難所開設後、その後の人数変動に
  より
  パーテーション等の活用にて
  空間的仕切りを作る
  (発災からしばらくは受入人数的に
  不可能)
 熊本市計画によれば、校区避難所が
  その後の地域拠点となるため、
  避難所利用者だけでなく地域
  生活者の把握も必要となる

*風疹等の感染者、妊娠者の避難所
 利用については熊本市、保健所等に
 確認する必要あるかと考えています


換気 1、2時間に1度、
   5~10分程度

検温(蔓延期等、必要時)
  無症状の子ども、高齢者は
  2日に1度程度か(要確認)
  他は自由測定
  有症状時に入院出来なければ
  毎日定時検温(他バイタルも)記録

不規則にならない生活
  炊き出し時間の固定化
  換気、体操の時間で生活リズム
  消灯時間の固定

衛生管理
  炊き出し班手洗い、マスク、手袋
  咳エチケットの徹底
  帰所時の手洗い、手指消毒
  トイレ後の手洗い、手指消毒
   →慣れるまでは担当者配置
  食事前の手洗い、手指消毒
   →慣れるまでは担当者配置
  物資にあれば歯ブラシ提供
  外靴とスリッパ、上履きの弁別

消毒等(アルコール、次亜塩素酸等)
  トイレ便座、蓋、レバー
  蛇口
  液体石鹸の蓋等
  トイレ出口での足元
  ドアノブ、手すり、靴箱、机、
  椅子、サッシ縁、
  手をついてしまうところ

  調理台、配膳台
   ノロウイルス対策には
   次亜塩素酸ナトリウムにて消毒
   食材に触れる場合はアルコール

避難者への周知・教育
  手洗いと手指消毒の徹底
  食事後の歯磨き、うがいの促し
  鼻呼吸の奨励
  脱水予防の水分摂取促し
  マスク(必要時)と咳エチケット
  靴とスリッパ、上履き領域の区別
  検温スケジュール(必要時)
  トイレは男性も極力座って
  AED利用方法
  マスクの付け方、外し方、捨て方
  プラスチック手袋、ゴム手袋の
   付け方、外し方、捨て方
  口を付けたペットボトルの確認と
   前日分の回収破棄
  乾物、包装物以外の
   炊き出し食料の備蓄禁止
  食物アレルギーある方の把握と、
   対応物資の確認
  納豆、グレープフルーツ等物資の
   配給の際の注意換気
   (ワーファリン等)
  有症状者出た場合の隔離への理解

運営委員への周知・教育
  上記に加え
   嘔吐あった場合の対処、消毒法
   有症状者発生の場合の対処
   AED利用方法

体操など
  フレイル及び
   エコノミークラス症候群予防
  出来れば、午前午後2回
  車中避難者への参加呼びかけ
  介護職等経験者在所の場合は指導
   不在時にはラジオ体操だけでも
  避難所で日中過ごす人へ
   椅子や立位、散歩の勧めや
   炊き出しやトイレ担当、
   環境整備協力への声かけ

夜間対応
  出来れば交代で
   誰かは起きている形に
  照明はステージ等を使い、
   真っ暗にはしない(転倒防止)

感染発生時のリンク発掘のため
  発生者、日時、居場所、
   避難所外(学校、職場、その他)
   利用の把握
  調理者の記録
  調理内容の記録

有症状者への対応
 事前に高齢者や不安な方への
  かかりつけ医の把握
  既往歴、薬歴について本人に確認
  救急時の対応先の把握
 咳、くしゃみ、発熱、腹痛、等
  なるべく、受診を促し、
  入院対応で無い場合は
  教室隔離対応をお願いする
 隔離教室利用の際は、可能ならば
  他の避難所利用者と上水道場所
   及び、トイレを別にする
  食事はマスク、手袋、出来れば
   使い捨てエプロンを使い
   隔離教室へ持っていく
 毎日定時に検温・血圧・呼吸数
  だるさ、その他の記録

AED(自動体外式除細動器)
  電池確認、設置場所の周知
  使い方の周知・講習
  (当町内では避難訓練時に指導有)

救急キット等
  外傷用
   消毒薬、ガーゼ、絆創膏、包帯
   骨折用添え木、プラ手袋
   蒸留水、ピンセット
  その他
   体温計、血圧測定器
   低血糖発作用ブドウ糖
    (氷砂糖、砂糖、飴等)
   脱水用経口補水液、
   飲料水、スポーツドリンク等
   アイスノン(急冷用も)


●学校体育館や教室等を利用した現在の避難所のあり方は、新型コロナウイルスのような潜伏期間が長く、感染力が強い感染症には非常にもろい形となると思います。備えだけはシュミレーションしておかないといけないかと思い書いてみました。
●確認が必要なことについては、今はてんてこ舞いでしょうから、新型コロナウイルス感染症への対応が落ち着いていく時点で、熊本市や保健所に尋ねながら作っていこうと思ってます。



付記

熊本地震時、南区K小学校避難所にて
医療福祉的な対応を必要とした具体例
 ・避難時の頭部裂傷
  →消毒、圧迫止血後に
   ガーゼ保護
 ・喘息患者さんの吸入薬不足
  →保健室で湿度を上げて
   しばらく過ごしてもらう
   (←素人判断だったので要確認)
  →翌日かかりつけ医に薬手配
 ・発達障害のある方への環境整備
  →対応出来ずに親戚の方の家に
   再避難された
 ・在宅酸素療法者のボンベ切れ
  →消防団に依頼し被災家屋から
   ボンベ搬出
  →血中酸素濃度測定器での測定
 ・松葉杖利用糖尿病の方への対応
   足の洗浄
   →避難者の中にNsおられ対応
   床面からの起き上がり不能
   →ソファにてベッド作成
 ・両手杖の方の床面からの
  起き上がり不能
  →長机を使った簡易ベッド作成
 ・片腰部褥瘡ある高齢者
  →マットレス利用
  →当初体位交換支援、後に自力
  →入所時より軽快して退所される
 ・十二指腸潰瘍手術後の
  食事回数不足による低血糖発作
  →金平糖にて意識晴明
 ・深夜停電時の転倒
  →頭部打撲見られたため
   病院搬送
 ・妊婦さんの熱発
  →病院搬送
 ・子ども達のアトピー増悪
  →帰宅支援充実における
   避難所の早期終結への意思統一
   その他ストレス解消等の取り組み
 ・トイレ対応
  →当初は中心スタッフ、後半は
   利用者ボラにて24時間担当し、
   消毒、清掃、流し確認を行った
 ・避難生活における
  不安やストレスの解消
  →看護師による血圧測定
  →先生方による児童への
   遊び・学習支援
  →先生・児童による合唱披露
  →避難者によるバイオリン演奏
  →毎日の体操
  →帰宅困難事由の排除支援
  →支援施策の情報提供
  →二次(集約)避難所の情報提供

 反省点
 ・十二指腸潰瘍術後の方を
  拾い上げられず、医療支援の方に
  繋げられていなかった
  →私が最初に「通院している方」
  「服薬している方」と言ったため
  その時点では通院服薬を
  されていなかったため、
  手を上げられなかった
  →その後、支援に入ってもらった
   医師に相談→
 「過去に大きな病気をされた方」
 「気になることがある方」を含めて
  声かけをしたらいいのではと
  アドバイスをいただく
 ・発達障害のある高校生のご家族
  から、静かな環境を用意出来ない
  かとの相談あるも、教室をその
  時点では蛍光灯の落下危険性から
  使用できず、体育館内の
  休憩室(和室)も最初に入って
  しまわれた方々に相談することも
  出来ず、対応できなかった。
  →現運営委員会では休憩室の確保
   が、開所時の注意点となってい
   る



K小学校避難所において医療支援者へ
 補完体制として準備したもの
 (他の避難所では無かったとのことで
  誉めてもらえて正直嬉しいポイントでした)

 事前準備として
  現通院中、治療中、服薬中の方に
  紙を配り、
  年齢、病名、薬名、今ある薬量
  などを記入してもらい相談
 継続した医療支援のために
  気になる避難者のリスト化と
  状態、避難所内居場所を
  明記したものを
  次の支援体が入る際に引き継ぐ



換気を加味した
一日のスケジュール私案
(夜間換気をどう捉えるか確認検討要)
(炊き出し時間は朝は早く、夕は遅くと言われる)

通常時
 0630 炊き出し準備
 0700 点灯 換気
 0730 朝食出し
 0800 清掃タイム 換気
 1000 換気 体操
 1200 換気
 1230 昼食出し
 1400 換気
 1500 体操
 1600 換気
 1800 換気 夕食出し
 2000 避難所運営会議
 2200 消灯

感染症発生・拡大時
 0630 炊き出し準備
 0700 点灯 換気
 0730 朝食出し
 0800 清掃タイム 換気
 0900 換気 検温(子ども)
 1000 換気 体操
 1100 換気
 1200 換気
 1230 昼食出し
 1300 換気
 1400 換気 検温(高齢者)
 1500 換気 体操
 1600 換気
 1700 換気
 1800 換気 夕食出し
 2000 避難所運営会議
 2200 消灯

以上