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走り始めれば人生が変わる!


「具合の悪い時ほど走った方がいいですよ」

 入ったばかりのマラソンサークル。「今日は風邪で今日休みます」と電話した私にサークルの代表は明るい声で言った。そして「看護師さんにこんなこと言ってごめんね」と付け加えた。

 子どもの頃から運動が大嫌いだった私。障害物競争ではハードルを全部倒し、バスケットをやればトラベリング連発…こんな運動音痴はそうそういない。そんな私がひょんなことからランニングサークルに参加することになった。

 当時、私は看護師をしながら若年性認知症の母の介護をしていた。母はその時50歳。他の50歳代の女性を見るたび「どうしてうちの母だけ?」という気持ちしか持てなかった。母一人子一人の我が家では私が母の介護をするしかないのだが「これからどうなるのか」という不安に押しつぶされそうな毎日だった。そんな時ある人から「マラソンを始めると人生が変わるよ」とマラソンサークルに誘われた。

 「騙されるもんか!そんな簡単に人生が変わるわけがない!」いつもならそう思ったかもしれないが、その時は藁にもすがる思いでマラソンサークルに参加することにした。ただみんなの走るにはついていけず、メンバーが4キロ走る間2キロ歩くのがやっと。「やっぱり無理…」と思った矢先風邪をひいた。「やったー!これで休める」風邪をひいてこんな嬉しかったことはない。風邪なら来いとは言わないだろう。早速、サークルの会長に電話すると「具合の悪い時こそ走った方がいいですよ」との返事。ずる休みを見透かされたようで「わかりました」と言うしかなかった。

 あれから20年。母は10年以上の闘病の末他界し、私には新しい家族ができた。40歳でフルマラソンにもチャレンジした。やっぱり走って人生が変わった。毎朝6時、子供達の寝顔を見てからランニングに向かうのが私の習慣だ。雨の日も雪の日もとりあえずは家を出る。もちろん風邪の日も…

 今はわかる。朝の新鮮な空気とピカピカのおひさまが一番の風邪薬だと。

#習慣にしていること

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