地味さNo.1だった経営者団体の「囲碁同好会」が1年間で6倍のメンバーになったわけ
私が所属している経営者団体、東京ニュービジネス協議会(NBC)では、会員同士の懇親を深める目的でいくつかの同好会があります。
ゴルフ、釣り、サウナ、日本酒など、ビジネスの話をするというより、共通の趣味を通じて仲良くなろうや、っていう活動です。
そんな中で、「囲碁同好会」というのもあるのですが、他の同好会に比べて一番歴史は長いけどぶっちぎりに地味で、メンバーも2,3人しかいなくて、なんなら同好会自体がなくなりそう、というような状況でした。
私も囲碁の経験などなく、この同好会にも興味は全く無かったのですが、ひょんなことから深く関わることになり、同好会の活性化を目指して2023年は奮闘をすることになります。
いろんなことがあったのですが、結果として2022年の忘年会参加者はたったの4名だったのに対して、2023年は25人にまで増える、というまぁまぁの成功を収めることができました。
囲碁界隈に関わるまで全く知らなかったのですが、囲碁のマーケットは競技人口がとにかく下がっていて、プレイヤーの高齢化も課題になってるようです。
まぁたしかに、身の回りで囲碁やってる人全然いないもんね。
幸か不幸かそんな状況を全く知らない私は、この同好会の運営に関わったときも、いちおうマーケティングの専門家であるという自負もあり「まぁ色々やればなんとかなんだろ」と軽く考え、先入観なくいろんなことに取り組んできました。
何度か壁にもぶつかりましたが、回を重ねる事に同好会への参加者は増えてゆき、最後の定例会&忘年会は上記で触れた通り25人にまでになりました。累計参加者も40名突破。
特筆すべきは級位者の数で、12月の参加者でいうと25名中18名が級位者、なんなら2桁級の人が10名以上という比率の高さです。
この同好会がなければ一生囲碁やんなかったよね、っていう人ばっかり。
私、他の囲碁会なるものをあまり良く知らないのですが、聞くところによると割と上級者の集まりが多いそうなので、初心者かつ経営者がこんなに集まっている会は珍しいとのことでした。
まぁ、ちゃんとやれば囲碁の新規ユーザーはちゃんと増やせるなぁと実感してます。
そんなわけで一定の成果が出た2023年のNBC囲碁同好会ですが、経営者として、マーケターとしてこの1年どんな事に取り組んだのかを、備忘も兼ねて書き残していこうと思います。
もしかしたら、囲碁界隈の皆さんの参考になるかもしれないので。
私が関わる前の同好会の状況
まず、東京ニュービジネス協議会について軽く説明しますと、現時点(2023年12月時点)で860社ほどの経営者が集まる経営者団体です。
上場企業から創業したてのベンチャーまで幅広い会社が加入してるのですが、オーナー経営者が多いことと、起業家育成に力を入れているのが特徴になります。
その同好会の一つとしてあるのが囲碁同好会なんですが、歴史は古く30年以上前から存在していたとのことです。
以前より、首藤瞬プロに講師としてお越しいただいています。
かつては何十人も参加者いたようなのですが、昨今の囲碁マーケットの動きと連動するように徐々に数を減らし、2021年終わり頃には参加者が2〜3人程度にまで落ち込んでました。
私がこの同好会に本格的に関わったのは2022年の終わり頃です。私が同好会に関わる経緯は本筋と関係がないので今回は省略しますが、もともとは囲碁などやったこともなく、興味もありませんでした。
そんな中、この同好会の副部会長をやることになり、運営の中心に担うことになります。
第一段階 運営チームの結成
私が副部会長に着任したときは、上記に述べた通り、会の参加者は2〜3人程度で、講師としてきてくださってる首藤瞬プロの講師代すら支払うのが危ういという状況でした。
そのため最初に目標として取り組んだのが平均参加者数を6名まで増やし、会の財務基盤を安定させるというものでした。
その時点の参加者人数が2〜3名程度ということから考えると、参加者を倍増させないといけないので低い目標ではありません。
しかも対象は日々の仕事が激務の経営者たちですから、毎月の定例会は、参加できるときもあれば、仕事の都合で参加できないこともありえます。
平均参加人数を3名増やすのであれば少なく見ても、頭数だけでも5名〜6名は増やさないといけません。
まず始めたのは、NBC内の知り合いの勧誘でした。たぶん30人くらいに個別に声をかけたと思います。
ここでの経営者仲間たちの反応はすこぶる悪く「なんで囲碁なんだ」「難しそうだからやりたくない」「大して人数集まってなさそうだから行きたくない」など、散々な言われようで、断られまくりました。
(この時点で結構心折れそうだった)
とはいえ、やり始めたからには諦めるわけにもいかず地道に勧誘を続けました。
気軽に参加しやすいように初回参加を無料にしたのはたしかこのときだったと思います。今思えば、この施策は割と効果があったように思います。
そんなこんなで、なんとか諦めずに声をかけ続け、どうにかこうにか6人が新たに会に参加してくれました。
参加者のほとんどが囲碁初心者ですし、私も何なら囲碁のルールもわかってないくらいだったのですが、ここですこしではあれど、新規の参加者を獲得できたのは心理的にも大変大きかったと思います。
ここでやったのは、この新規参加者たちを逃さないために、継続して参加してくれそうな4名ほどにすかさず囲碁同好会の運営お手伝いをお願いしたことです。
運営側になれば、囲碁同好会という存在が「単に参加する会」から、自分ごと化すると思ったからです。
渡したタスクは「懇親会会場の手配」や「参加者名簿の管理」など、軽めのものだったのですが、タスクを渡すというのは一定の効果があり、運営のお手伝いをお願いしたメンバーはその後だいたい中核メンバーになってくれました。
こうしてなんとか平均の参加者が5〜6名くらいになり、会として体裁が整っていきます。
第二段階 中期目標と短期目標の設定
運営チームがなんとかできたので、次に取り組んだのは目標の設定です。
あらゆるマーケティング施策には目標設定は欠かせないものですが、この同好会にもそれを適用させました。
運営チームで話し合った結果、中期目標と短期目標を下記のように設定します。
中期目標は
「他の経済団体と囲碁を通じて交流試合を行い勝利する」
とし、
短期目標は、
「2023年度(2023年4月〜2024年3月)で累計30名の参加者を獲得する」
というものにしました。
中期目標は囲碁を通じて人脈を広げるとともに、交流試合で勝利するために
一定の強さも高めていくことを明確にする、という意図が含まれています。
このように組織としての軸を明確することで、方向性や存在意義がわかりやすくなり、会として体制が整っていきました。
第三段階 施策の実行と進捗管理
具体的な中期目標と短期的な数値目標が定まりましたので、ここからは様々な施策を実行していきました。
マーケティング4P分析に基づくと、それぞれ実行したのはこんな感じです。
プロダクト
初心者向けに優しい同好会として、初心者レクチャーを強化しました。
一方で「懇親会開催」を必須にして、経営者としての横のつながりができるように工夫もしました。経営者のベネフィットは横のつながりですから、そこはぶらさず囲碁を目的ではなく手段であると位置づけています。プライス
参加費の年間一括払いの割引率を高めて、年間先払いのほうがかなりオトクなように変更するとともに、初回参加を無料にして参加しやすいような体系に。プレイス
NBC内での直接告知とSNSを主軸に設定しました。プロモーション
経営者かつ初心者が参加できるというメッセージをSNSで発信。情報はPeatixに掲載して、見やすく整理。
この中で一番認知度向上に効いたのは私のX(Twitter)でした。
今回の囲碁同好会の告知を始めるにあたっては、普通に考えたら囲碁用のアカウントを別に作ったほうが軸がブレなくてよいのですが、今回はあえて私の通常のアカウントでこれらの情報を発信しました。
結果として、私のようなベンチャー経営を主軸にしたアカウントで囲碁を発信すると逆に目立つという状況が発生し、界隈で一定のプレゼンスを得ることができました。
Xを経由して連絡をくださった方が累計で10名程度発生し、NBC外の経営者の方々が続々とゲスト参加をしてくれるようになりました。
序盤の規模拡大にはこの成功は非常に大きかったと思います。
こんな感じで徐々に人数が増え、参加者が毎回10名を超える回も出てきまして、以前と比べると明らかに盛り上がってくるようになりました。
そして盛り上がっている様子をNBC内部の告知活動や、運営メンバーのFacebookでシェアしていきました。
こうなってくると、NBC会員の中でも「囲碁同好会は以前は全然参加者が少なかったのに、何があったんだ」「盛り上がってるけれど、そんなに面白いのか」というような雰囲気になっていき、ちらほら参加者が増えていきました。
なんやかんや、数は正義ですね。
まとめ:施策のながれ
このように、おおまかな流れとしては
力技で6人くらいの参加者にする→
Xを通じて外部のゲスト参加者が増える→
盛り上がる様子をXやFacebookでシェア→
様子を見ていた他のNBC会員が興味を持つ→
NBC会員からの参加が増える
みたいな感じです。
あと、実際に参加してくれた人が会自体を楽しんでくれて、他の人を誘ってくれる、といういわゆる「リファラル」も数多く発生し、参加者は徐々に増えていきました。
今回はあまり会の運営自体には触れませんが「会自体が参加してとても楽しいと思ってもらえる」という状況にするのは結構重要かなと思います。
そもそも会が面白くないと、次に続かないですから。
また、運営チームでは、毎月チームミーティングを行い、累計参加者数の確認、会の運営についての改善などを議論しました。
定期的にミーティングを行うことは、軌道修正なども含めて結構重要だったように思います。
その結果、当初掲げていた短期目標である「年度の累計参加者数30名」は10月には早々に達成し、12月には累計40名を突破するというハイペースになりました。
こう書くと順調そのものに見えますが、プロモーション施策は途中で何度も試行錯誤を繰り返しました。
やっていく中で予想外の事が多々起こり、それぞれに一生懸命対応していたらこのようになった、というのが正直なところです。
参加者数が全然増えない月も何回もありましたので、終わってみればなんとか増えたよね、って感じでしょうか。
今回は2023年を振り返ってみましたが、これで終わりじゃないですし、来年以降も盛り上がる会にしていきたいと思っています。
課題も山積しているので、一つ一つ解決していきたいなと。
みなさま、引き続きよろしくお願いします。