見出し画像

日本発ITが世界で勝てない2つの理由

日本が世界のビジネス界において、存在感を低下させている状況になって、久しいですが、特にIT業界においてはそれが顕著になっています。

 私は「Zoho」というインド発のSaaSソフトウェアを扱うビジネスをメインにしています。これは営業チームにおける顧客管理などを行うITツールです。こういったソフトウェアをCRMとかSFAといった呼び方をします。

世界を見渡すと、他にもセールスフォースマイクロソフトといった名だたる大企業がこういったソフトウェアを発売しており、日本を含め、世界中の企業が愛用しています。

一方、日本企業が開発したCRMやSFAもあるにはあるのですが、海外での存在感は皆無に等しく、まったく名前が挙がりません。


実は、日本のITサービスが世界市場において力を発揮できないのは、この「CRM/SFA」に領域に限った話ではなく、多くのIT領域に及んでいます。

Facebookに市場を奪われたmixi、Youtubeの圧倒的な力に苦戦を続けるニコニコ動画、Amazonからの攻勢に防戦一方の楽天など、世界で戦えないだけならまだしも、最終的には日本国内での市場も結局は海外勢に奪われてつつあります。GAFAと呼ばれるIT企業の巨人たちに伍して戦える日本企業は、ほぼ存在しないといってもいい状況ではないでしょうか。



少なからずこのIT領域に関わっている身として、この状況を憂いているのですが、今回はその原因を「日本発ITサービスが世界で勝てない2つの理由」という切り口で私なりにまとめてみたいと思います。


①要望が細かすぎる日本人

まず前提としてありがちなのですが、日本は自他ともに認める先進国であり、社会は非常に成熟しています。また、日本人の商品・サービスへの要求は非常に高いのが特徴です。

日本で起業するITサービスは、初期の顧客は日本人を想定しています。システムも日本語で構築し、日本人が要求するニーズを満たそうとしてきめ細かい機能を搭載することが多いです。

mixiを使っていた方は覚えていらっしゃるかと思いますが、mixiではサークルを作ったり日記を書いたりするきめ細かな機能が豊富な一方、肝心な友達同士がつながる機能が不十分であり、ネットワークが広がらないという欠陥を持っていました。また、途中から登録が匿名前提となり、気軽に友達を探すということも出来ませんでした。

Facebookは、日記的な機能や足跡のような機能はないものの、簡単に友達を検索でき、気軽に一言二言を投稿することができます。使い方もシンプルで、どんな人でも割と簡単に使いこなすことができます。

これは、多種多様な人種が生活しているアメリカ社会で使われることを想定していることで、それぞれの細かなニーズを満たすことを最初から諦めていることが要因の一つです。最大公約数的な機能に限定をするからこそ、使いやすいシンプルな機能に限定されるのです。

このように、日本人に合わせたシステムを構築すると、必然的に高いニーズに応えざるを得ず、海外のユーザーにとっては使いにくいものになりがちです。


②日本人の技術力の高さ

IT業界とは異なり、「海外で勢いを維持している」もしくは「勢いを増している」業界もあります。

私は2年前にシリコンバレーに訪問したのですが、牛角・大戸屋・一風堂など、日本の飲食チェーン店が次々と進出し、現地で大きな支持を得ている現場を目の当たりにしました。

日本人は食にうるさく、ミシュランでの評価でもわかるように、日本の飲食業はクオリティが非常に高いのが特徴です。そもそも1000円あれば大抵のチェーン店でランチを食べることが出来ますが、このクオリティの料理をこの価格で食べられる国は、なかなかありません。

低価格で高クオリティの商品・サービスを出すことについて、飲食業においては非常に優れており、海外でも高く評価されています。これは、自動車業界などにも言えることで、いまだにこういった”品質を高めることによって価値を出せる"領域ではメイドインジャパンが競争力を持ち続けています。

一方、ITサービスはこういった日本人の強みが生きません。世界のユーザーが求めているのは、機能が多くてクオリティが高いものではなく、シンプルに使えて価格の安いものです。

残念ながら日本のIT企業は、①でも述べたように最初から要望のややこしい日本人を相手にした製品にしているうえに、なまじ技術力が高いため、そういった要望の応えられてしまう現実があります。いきおい、多機能高品質になりがちです。

ただこれだと、日本初のITサービスは「日本人のめんどくさい要望にも応えられる多彩な機能を有しているが、使い勝手が悪くコストが高い」という結果になりがちで、必然的に世界を相手にしたとき、相性が悪くなります。

ちょっとIT領域とは違いますが、ガラパゴスと揶揄された日本の携帯電話(ガラケー)と同じ状況です。日本人にしか求められていない機能を満載した日本メーカーの携帯電話は、スマートフォンの登場によってマーケットの大部分から駆逐されてしまったのは、みなさんの記憶に新しいところでしょう。



まとめ

このように、日本発のITサービスは
①要望レベルの高い日本人を相手にしていること
②きめ細かく応えられる日本人の技術力
が世界市場で見たときにアダとなり、世界的企業が生まれにくい状況となっています。

とはいっても、こういうITサービスをバンバン生み出しているのは、多民族国家であるアメリカが大半ですので、こうやって考えてみると環境が重要なのは否めないかと思います。

日本からそういった製品やサービスを生み出すためには、はじめから様々な文化やニーズを持つ人々を相手にすることを想定しないとなりませんが、そうなると日本語ではなく英語で製品を作らなければならないわけで、日本人が苦手とする言葉の壁が立ちはだかることになり、壁は低くありません。


海外製のIT製品をビジネスにしている私ですが、日本からそういったサービスが生まれることを願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?