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【算数】最後から解く方が簡単な入試問題!?そんなのあり?

よく「問題の誘導に乗る」とか「作問者の意図を汲む」とか「学校のメッセージを読み取る」などと言われるように、入試問題には、ただの解決すべき問題以上の意味が乗っているという通念があります。それはその通りだと思いますが、実際に取り組むと、何が目的の問題なのかと疑問に思うことがよくあります。



【問題】警察官の守備範囲は?

縦と横にまっすぐな道が何本か通っている街があります。縦の道を1,2,3,…,横の道をア,イ,ウ…として,縦の道と横の道が交わる場所をすべて「交差点」と呼びます。たとえば,1の道とアの道が交わる場所は,交差点1ーアと表します。
 このような街で,交差点に警察官を配置することを考えます。警察官は,道を通って他の交差点にかけつけます。道でつながっている隣りあう2つの交差点間の道のりは,すべて1kmです。
 たとえば,図①のような、縦に3本,横に3本の道が通っている9個の交差点がある街で,交差点2ーイに警察官を1人配置すると,街のすべての交差点に,警察官が2km以内の移動距離でかけつけることができます。

(2) 図③のような,縦に4本,横に4本の道が通っている,16個の交差点がある街に,何人かの警察官を配置します。
 街のすべての交差点に,いずれかの警察官が2km以内の移動距離でかけつけられるようにします。何人の警察官を配置すればよいですか。考えられるもっとも少ない人数を答えなさい。
(3) 縦に15本,横に15本の道が通っている,225個の交差点がある街に,4人の警察官を配置します。このとき、街のすべての交差点に,いずれかの警察官が□km以内の移動距離でかけつけられるよう配置することができます。
 □にあてはまる整数のうち,考えられるもっとも小さいものを答えなさい。

筑波大学附属駒場 2022年 (2)(3)のみ

特徴的で面白い問題ですね。国立の入試は、定番のカテゴリーではなく、小学校の低学年でも理解できそうな設定を使って思考力を測りにくるのが興味深いです。

【解説】勘違い正解バージョン
&市販の過去問バージョン

(2)いろいろな配置の仕方がありますが、少なくとも3人は必要です。例えば1人目を2ーイに配置すると広い範囲をカバーできて、残り2人を右側と下側に配置するなど。
(3)4人でカバーするときの最短距離は、7kmです。ただし、以下のように考えるのは誤りです。

「縦横5本」はうまくいくが、「縦横7本」だと配置できない。

縦横15本の場合、4ブロックに分けるとその真ん中は交差点ではないため、難しく、時間のかかる問題です。ところがそのことに気づかず、上のような勘違いをしていると、素早く、正確に答えが出てしまいますので、入試問題としてどうなのかとは思います。(この年の最後の問題にも同様の疑問を持ちました。)
さて、市販の赤い本などの解説は以下のような感じです。

なぜか縦横7本じゃなくて11本で解説してあった。

やはり4ブロックに分けて、その真ん中から僅かにずらして配置しています。上の11本の例だと移動距離は5km以内となり、15本の場合は同様に7kmとなります。なるほど一本取られたという感じもしますが、本題はここからです。この問題には別解があるのですが、その情報がどこにも見当たりませんでした。こちらで紹介しておきます。

【解説】算数PLAYバージョン

例えば赤の4か所。あるいは緑の4か所。あるいは黄…。

上図のように、正方形の各辺の中点に4人を配置すると、全員7km以内に収まります。先の解答とは違い、それぞれが移動できる範囲と、街を4等分した範囲とが完全に一致しています。さらに、そこから全員を入れ替えるかのように斜めにずらしていっても、常に7km以内という条件が保たれますので、市販の解説もその一部だったということです。なんだか、当初の解答が小難しく感じられるほどシンプルな答えですね。

しかし、問題文→(1)→(2)と解き進めると、やはり直角に分けるという発想に「誘導」される感じがします。むしろいきなり(3)を見たとしたら、逆にシンプルな解法が思いつきやすいでしょう(実際にはそんな危険なことはしないべきです)。やはりこの学校は、意図的に注意力を試しているのでしょうか。要観察。


私事ですが、PCが危篤状態でまともに会話できません。関連問題は転生後に。
2024年2月25日

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