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とことん庭の話。移住して、庭付き古家に暮らしてみる

夫と息子には共通した夢があった。
「マンションじゃない家に住みたい」(息子)
「庭付きの家に住みたい」(夫)

今回、その2つが同時にかなうこととなる。

4月から十勝の田舎に短期移住したわが家は、現在、「庭付きの古い戸建て」に住んでいる。

もともと「庭付き条件」で借りる家を選んだわけではなく、選んだ家に、たまたま庭がついていたのだが、庭付きの暮らしの魅力にどっぷりハマってしまった。
移住するならぜひおすすめしたい、「庭付き古家」での暮らしについてのレポート。

ついてきた「庭」

山村留学制度を利用して十勝の村に短期移住することとなったわが家。

猫を一緒に連れていきたい、という希望があり、たまたま受け入れてくださったのが現在の大家さん。本当にありがたい。

山村留学にも色々あるが、わたしたちがお世話になっている村では、山村留学の申請が受理されると入居可能な住宅について希望調査が行われる。その後、全体調整が入り最終的にそれぞれの住まわせてもらう家が決定する。

猫受け入れがいけるかもしれないというのはこの一件だけ、という情報を聞いていたので、迷わず第一希望に。
おそらく少し家賃は高めにしていただいたようだが、無事に猫連れで住めることが決定。

そんな新居だったから、細かなことは未知のままのところが多かった。

事前のやりとりでは家の図面と写真をもらっていたものの、庭があることは引越し後に判明。(ちなみに前回書いたが地下室があることも来てみて判明)
越してきてみてびっくり、なんと、家の裏手に、家と同じくらい広い「庭」が広がっていた。

いかにも北海道らしい大きなもみの木や、庭の中央でモジャモジャと枝を伸ばすコクワの木、他にもいくつか木が植わっていて、BBQでもできそうなくらいのだだっ広いスペースもある。めちゃくちゃスケールが大きい庭!
初めて見たとき、「え、どこまでがうちの庭になんでしょう?」と聞いたくらい。
いきなり広大な庭付き家の住民になってしまった。
息子と夫は大喜び、娘も初日から庭に残る雪遊びに夢中。もちろん私もテンションが上がる。

六花亭の世界がすぐそこに

庭がまるで六花亭の世界だと思う。
帯広に本社があるお菓子メーカー「六花亭」の包装紙には、北海道を代表する花のイラストが描かれているのだが、そこに出てくるような花々がまさに庭に咲いていた。
背の低い草がびっしり生えている中に、ところどころ、りんと咲く花たちがいる。朝になると開き、夕方になると、しぼむ、生きている花は生命力にあふれ美しい。

草の中に佇む、北国らしい花。
朝になるとぴんと咲く

後で聞いたところによると、元々住んでいたご夫婦の奥さんが花好きで、当時たくさん植えていたらしい。その名残の花々がいまも芽を出し、日々楽しませてくれる。

越してきて4週間経ち、日々庭の様子が変化するのにも驚いた。いつのまにか、花々が移り変わり、気づくと今日にはチューリップのつぼみと芝桜が登場している。
以前の住人である奥さんはもうお亡くなりになっているそうだが、次々と顔を出してくれる花々に、今もなおしっかりとその奥さまの存在を感じる庭である。

ピンク色の小花がそこかしこに
この青い花は、近隣のお庭でもよく見かける

開拓し放題の土地で

田舎暮らしの憧れといえば家庭菜園かもしれない。雪国ではどうかなと思ったが、こちらのご近所のお庭を見渡してみると、やはりどうやら畑らしきものがある。
近くにお店もないから、庭で食べものがとれるというのは、安心、かつうれしい。

引っ越して3日くらい、荷ほどきも完全に終わらない中、夫が最寄りのホームセンターにて大きなシャベルを買ってきた。
さらにその2、3日後、ふと庭に目を向けると、庭の一部分だけ土が掘り起こされていた。

庭付き家で暮らしたい願望が叶った夫。引越し後すぐテレワークでカタカタとパソコンに向かっている姿が忙しそうだったが、合間にいそいそと畑にも出ていたらしい。

とりあえずここだけ耕してみた、とのことで、確かに、とりあえずの未完感が漂っている。
ガーデニング経験はないのだが、「続きはわたしが!」という気持ちが、がぜん湧き起こってくる。

草を掘り起こしたところが畑になる

時同じくして、うちに回覧を持ってきてくれたご近所の方から、昔の庭の様子を聞くことができた。
それによると、夫が掘り起こした部分がかつても畑だったことが判明。
元住人のご夫婦はこの庭でいろいろ作物を育てていたらしい。このあたりまで畑だったよとその頃のことを教えてくれる。
それ以外にも、手前にはたくさん花を植えていたこと、コクワの木はものすごく実が成るので学校から子供たちが収穫にきていたことなど、具体的に鮮やかな記憶を伝えてくれる。古家が活気付いていた頃の幸せな記憶。

さて、夫が耕したエリアを引きつぎ、「このへんまで畑だった」というところくらいまで、頑張って土を掘り起こしてみる。
シャベルを入れると浅くびっしり張った草の根の下に、やわらかな黒い土が広がっている。確かに、かつて農作物を育てていた感じがする!

どんどん掘り起こして草をとり、畑にしていく。無心に土を掘っていると「開墾」ってこんな感じかーと、充実感いっぱいになる。
都会の貸し農園を借りるのともと違って、自ら畑を切り拓くなんてそう出来ない貴重な体験だ。
もっとも、ここは本当の未開の荒野ではなく、かつて畑だった土は素直にいうことを聞いてくれる。
草の覆いを取り去られ空気を含みふわふわになっていく土がなんとも素敵に見える。早く何か植えたい。

掘り起こして広がった畑。うねもつくってみた

あの山菜が、庭で。

世間では「行者ニンニク」の季節だ。ニュースでは行者ニンニク採りが始まったことを連日伝えるとともに、滑落事故など命を落とすこともあると注意喚起がされている。山菜採りの中でも、特に、行者ニンニク採りで命を落とす人が一番多いのだとか。
命を落とすほどおいしいのか?と思い道の駅で購入して食べてみると納得。これがめちゃくちゃおいしい。
醤油漬けにして食べると、風味がよく最高。
これおいしい、と夫がハマる。

そんな行者ニンニクが、なんとわが家の庭にも生えているらしいと聞いて驚いた。
近所の人が家にきたときに庭を見て「これ行者ニンニクでないか」といったそうだ。
喜んだ夫がさっそく醤油漬けにしていて、食べてみるとおいしい。
これも、前のご夫婦が植えてくれたのかも知れない。
庭のある古家に住まうと、色々とつながりを感じることができる。バトンを渡されているような感じ、というのが近い表現かもしれない。
会ったことのない、そして絶対にこの先も会うことのない、元住人のご夫婦のことを「思い出し」、感謝する日々である。

庭に生えるもの、そのニ

本州では見ることも珍しくなった「つくし」が、庭にぼうぼう生えている。
私は関西の田舎育ちだが、子供の頃すでに「つくし」は珍しいものだったので、実際に生えているところをみるのは初めて。

元気にはえるつくし

思ったよりも大きい。そして道端とかにも普通に生えている。

あまりにも普通に生えすぎているためか、つくしは子供には反応が悪いようだ。
「つくしを採ろうか」と子供たちに声をかけても興味を示されず、夫が自ら収穫した。
おひたしにして、食す。かさの部分は歯ごたえがあるが、ポン酢をかけて食べると海ブドウのような食感でおいしかった。

ボウルいっぱいのつくし。
かさの部分がシャキシャキしてる

夢叶うとき

結局、庭を一番満喫しているのは夫。
夕食に焼肉をする、となったとき庭で肉を焼きたい、と言い出し焼き始めた。
いきなり庭でBBQみたいなことができちゃうのも田舎ならでは。
いつの間にかコンロと炭も用意されていて、これから焼肉のたびに毎回活躍してくれそう。

庭で、おもむろに豚舌を焼く
夫の夢が叶っているひとコマ…

今のところ匂いや煙の苦情も来ていないし、好きな時に庭で何かを焼く、なんともおおらかな田舎暮らしを謳歌している。
こんないい匂いで熊がやって来ないのかヒヤヒヤしてしまうわたしは小心者だろうか。

いやいや、本当に出るらしいんですよ、この辺り。
食べ物になるコンポストも厳禁というから、本当に熊には気をつけたい。


ちなみに農作物の植え付けの時期はもう少し先とのこと。まだ寒いこともある北海道、今植えたら霜にやられるらしい。
あたり一斉の家が植え始めたら、それが植えどきなのだとか。
ドキドキしつつ、「その時」を待つことにしよう。

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