#29 知らぬが仏?

 週に1回は温泉センターに行く習慣があります。さっきまでそのセンターに行っていたのですが、今日は雨降りということもあって、雨音のなか露天で景色をみながら癒されようと楽しみにしておりました。センターが開く前に、その脇にあるベンチで本を読んでおりましたら、70~80代くらいの男性老人が私の脇に座りました。そして暇をしていたのでしょうか、足元の蟻を靴でドンドンと上から踏みつぶしたのです。それを見て、厭な老人だなと感じたのですが、センターが丁度開きましたので、その後すっかりそのことを忘れて温泉を楽しんでおりました。
 温泉を出て、またセンター脇のベンチで涼んでおりますと、先ほどの"蟻踏老人"がセンターから出てきたのですが、なんと今度は自分の目下に居る蟻を一匹一匹グリグリと時間をかけて靴で潰して歩いておりました。私はその時、またすごく気分がわるくなって、せっかく楽しみにしていた温泉の日が先ほど同様に厭な気分になりました。そういえば、ある施設でご一緒していた同じくらいの別の男性老人は、廊下に居たコオロギか何だったか忘れましたが、それを私の目の前で踏みつけたあと、私の顔を見ながらニッコリと達成感のある笑みをしていたことがあります。どうも私は、現代日本の戦後直後くらいの世代が大変苦手です。私の偏見かも知れないですが、これくらいの世代の日本人は倫理道徳感があまり無いことが目立つからです。さっき、あの蟻踏老人を見ながら自分が車に乗るときに、誠に不謹慎ながら"さっさと4ねばいいのにな"と薄っすら考えてしまいました。
 それにしても、蟻に限らず自分より小さな足元に居る虫などを知らぬ間に踏んで56してしまっている時というのはやはりあるでしょう。これが転じて、日常生活で知らぬ間に自分の発言や態度などでだれかのこころを傷つけていたり不安にさせてしまったりしていることがあるかとも考えます。しかし、今日温泉センターでみた蟻踏老人のように"意図的に"生物を、いや生命を、そしてこころを56すような人というのは本当に苦手です。いい歳して、あの老人はなにを考えてそれをしていたのでしょうか?まさか、それが楽しくて快感で仕方なくて、一々自分が通る道に居る蟻を時間をかけて踏み56していたのだとするならば、背筋が凍ってしまうような感覚に襲われそうです。こういう時に「知らぬが仏」などという言葉を使ってはなりません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?