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売れるとは?

 小腹が空いたのでちょっと買い出しに行った先、行列ができるほど店は賑わっていた。同じ業種のある店のその料理の方が私は好きなのだけども、なぜか遠いこちらの店に顔を出してしまう。それにしても、この店は売れている。
 以前、売れるということはどういうことかを考えたことがある。例えば、簡単便利お得な商品をスーパーやホームセンターで多くの人は手に取りがちだ。美味い料理を出してくれる街中華に行きたいし、巧いカットをしてくれる美容院に行きたいし、上手い演奏をしてくれるピアニストの居るバーで飲みたい。そして、人は甘い話や単純に懐にも優しくやはり旨い話を聞きたがるものだし、つまり"ウマい"やつが売れがちだということだけは見えてくる。
 以前、東京のある街をぶらぶら歩いていたときに、1,500円くらいで焼肉やご飯などをたらふく食べられる店をみつけた。とある雑居ビルの3Fくらいにあった店で、外国人のアルバイト店員ら、生産地がどこかわからないが目当ての大盛りの肉、食べ放題のご飯とナムルとスープ、ランチタイムは多くのサラリーマンらで賑わっていた。私はそこで美味いなと舌を躍らせながら肉やナムルを嗜みつつ、どうやって経営を成り立たせているのだろうか、おそらく人件費でも削って、怪しい産地の肉でも使って価格転嫁させてるのだろうなどと邪推した。そして、若干の罪のようなものを覚えながらも、"得"をしたと納得した。
 また下衆な話にはなるが、男女交際でなんであんな男と付き合ってるのだろうというような疑問には、「お金持っているか、エ〇チがよいかだろうね」というようなおとなの世間話も見聞きしたりする。人の本音というのは行動に出がちなのだ。
 さっき買い出しに行った売れてる店は、別の店の料理ほど美味しくはない――いや一般受けする味なのだ――が、店の外観や店員の態度、その他いろいろな部分で人の本音を引き出すサービスがウマい。からだによくなさそうな調味料を使用してそうだが、ウマみが強い。だから売れるのでは、残念ながらきっと。
 (Only.1 ではなく)No.1 になるために、ときに人は俗悪的にすらなる。人の本音を引き出す、人に行動を促す、人が売買をするとは、どうしてもそういう経済活動の負の側面が現れがちだ。だがそれを一般に魅力とも呼ぶのだろうし、一言かつ逆算していえば、"売れるとはいろいろな意味でウマい"のだろうきっと。

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