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アクセス独和辞典第4版 まえがき

責任編集をされた在間進先生による、『アクセス独和辞典 第4版』のまえがきを公開します。
『アクセス独和辞典 第4版』の特設ページもぜひご覧ください。


『アクセス独和辞典 第4版』をお届けいたします.
今回の改訂に際し,私たち執筆者が第一に考えたことは,どのようにしたらみなさんから「アクセスを使ってよかった! 」と言ってもらえるかということです.

ドイツ語を学ぶみなさんがあっての私たちであり,独和辞典なのですから当然ですね.
私たちがこのような観点から辿りついた第一の結論は,初級段階の見出し語は,可能な限り 見やすく !わかりやすく! ということでした.したがって,まず,上位の見出し語1000語には,枠を設け,2行幅の見出し語にし,その枠の中に最も基本的な語義と用例を記載することにしました.そして,それに関連する枠下の語義・用例も,従来のように「詰め込む」のではなく,一つひとつ改行を入れ,ゆったりとした感じのものにしました.また,特に,動詞seinやhabenなどの「最々重要語」は,参考書なみに1段組にして,細部にわたるまで,読み切れるように配慮しました.

初級段階の見出し語は,可能な限り 見やすく !わかりやすく!

第二の結論は,中級・上級者用に,時代の変化に即した新しい見出し語をしつかり検討した上で追加することです.どのようなよい辞書も,例えば100年前の辞書は「古書」に分類されます.言語は,社会状況の変化に応じて変わる宿命を背負っているのですから,それも当然のことですね.しかし,ただ「新語」と言うだけで辞典の見出し語にするわけにはいきません.「新語」の中には,長く使われ続けられるものもあれば,すぐに廃れてしまうものもあります.無限に近い収録能力を持つ電子媒体とは異なり,見出し語数に限界のある紙の辞書の場合は,念には念を入れて,さまざまな観点から追加する新語の選択を検討する必要があります.今回の改訂では,このような考えに基づいた検討結果として,約2000語の新たな見出し語を追加しました.

中級・上級者用の,もう一つの,従来と異なる対応は,最重要語の細則的な文法情報を見出し語の枠内の注として記載し,目立つように配慮したことです.重要語であればあるほど,使用上の規則は複雑さを増してくるからです.

第三の結論は,大規模コーパスや検索エンジンの開発によって可能になった言語データの収集・分析に基づき,全体の記述を見直すことです.みなさんが独和辞典を手元に置き,頁をめくるとするならば,それは,第一に,ドイツ語と関わる中で何か未知の語,語句などに出会い,それに関する情報を得るためだと思います.そうであるならば,「よい」独和辞典は,みなさんがこのような状況の中で知りたいと思う情報を「すばやく」提示できるものと言えます.そのためには,個々の見出し語において,最も使用される語義や用法が何かを知る必要があります.そしてそれに応える術(すべ)を与えてくれるのが大規模コーパスであり,優れた検索エンジンなのです.

このような情報は,かつては,教師の経験に頼るしか方法はなかったのですが,現在は,IT技術の進歩もあり,以前と比べようもないほどドイツ語の実際の使用状況を知ることが可能になりました.本書の巻末に使用したコーパスなどのリストを掲載しておりますが,このような研究に携わった人々には感謝しても感謝しきれないものがあります.

最後になりますが,ドイツ語学習上のいちばんの難関は,動詞の人称変化や名詞・形容詞・冠詞類などの格変化と言われることを考慮し,巻末に記載していた,この種の変化形が一覧できる「変化表」を充実させるとともに,辞書本体の記述を補完する「文法用語一覧(説明付き)」を,新たな試みとして追加しました.

今,このような形で「アクセス独和辞典」を世に送り出せるのも,日本における独和辞典作りの先駆的業績があってのことであることは言うまでもありませんが,しかし,もしこの「アクセス独和辞典」が従来の枠を超えるものになり得ていたとしたら(私たちはそう心から望むものでありますが),それは多くの人の熱意に支えられてのことです.特に,「辞書は継続的な改訂が必要」との熱い想いのもと,「アクセス独和辞典 第4版」作成を強力に推し進めてくれた三修社社長の前田俊秀氏,(本来なら,どれほどの熱意も持って私たちを支えてくれたかについても書くべきですが)第3版に引き続き編集を担当された菊池暁さん,伊吹和真さん,清水邦子さんに心から感謝申し上げます.

また,校正,細かなレイアウトの調整のみならず,使用者の観点からさまざまな提言をするなど,執筆者以上に情熱をもって作成に関わってくれた吉羽里恵さん,若松宣子さん,鍵谷優介さん,水野美沙さん,朝日則子さん,山本雄仁さん,中山清楓さん,検見崎紗江さんにも心からお礼を申し上げたいと思います.

2021年1月
編著者一同


在間進先生は、2023年4月13日にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。(三修社Facebookお知らせ)


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