円の面積の求め方

半径×半径×円周率。円の面積の公式。
2πr^2とも書く。
さて、「なぜ」これで円の面積が求められるのかを覚えているだろうか?

円を8等分することを考えてみる。ピザを切るように分割して、8等分の扇型をならべかえる。ファスナーの噛み合わせのように互い違いにならべかえると、長辺が4回モコモコした平行四辺形のように見えないだろうか。

扇型の角度をもっと細くしていく。
徐々に長辺のモコモコの数が増え、一つあたりのモコモコが小さくなっていく。

扇型の角度を無限に分割し続けて、いつしか細くなり過ぎて針のようになる。針を並べたカタチには角度とモコモコがなくなり、ただの長方形のように見える。

長方形の面積なら、「縦の辺の長さ×横の辺の長さ」で求められる。
縦の辺は、もともとはピザの一片の半径だった。
横の辺は、モコモコをつなぎ合わせたものだ。つまりもともとは円の外周で、上下で二本あるから一辺の長さは外周の半分。円の外周の長さは直径×円周率。直径×円周率を半分にするのは、半径×円周率と同じこと。

縦の線×横の線=(半径)×(半径×円周率)=円の面積。
以上、証明完了。

…小学生当時、この説明を教科書で読んで、ウソつけ、と思った。ピザをどれだけ細かく切っても長方形になんてなるものか。角度はどこに行ったんだどこに!と憤慨したものである。
が、こーでもしないと説明がつかない魔物が「円」という概念に潜んでいるのだ、と考えると少しワクワクもした。

言葉を使うとき、私たちはこれに似たことをしている。つまり、本当はどこまでいっても割り切れない魔物に対して、小さなウソで無理やり割り切るという戦いを挑むのだ。

例えば、「恋人と別れて、悲しい」と言う。
悲しいという言葉によって感情を伝えることができるが、悲しさの度合いは人それぞれ。清々しさや誇らしさ、後ろめたさや無力感といったさまざまな感情も内包しているし、その割合もまた人それぞれ。言った人の意図した「悲しい」と聞いた人の理解した「悲しい」は、絶望的に違っている。伝わった気になっているところにウソがある。
それでも「悲しい」を伝えなければならなくて、絶望している場合じゃないときがある。そんなときにできることは、やっぱり言葉を尽くすことだけなんじゃないかと思う。どれだけ言葉を重ねても決して100%は伝わらないが、重ねないと近付きもしない。円を分割し続けて長方形の面積を求めたときのように、「悲しい」だけでは伝わらないことを別の言葉で言い換えたり一生懸命に補足したりするのだ。

伝わらないことを嘆くあまり、伝えることを恐れるなかれ。

3分で語れる言葉の限り、語り尽くしていこう。

#cakesコンテスト #エッセイ #コラム #吉高

いつもお読み頂きありがとうございます。頂いたサポートは活動資金やメンバーを楽しくさせること使わせていただきます。