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オリジナル小説 『情熱の風』♬

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『情熱の風』(1/10編)



 どうともない不安が最近は胸をかすめる。12月の朝は寒い。泰造はカーテンの隙間から指す白い木漏れ日に目をひそめる。「今日も寒いな…」そんなことをぼやきながら、布団にすぐさまくるまる。「あー寒い、寒い…」

 台所からは水が流れる音が聞こえる。どことなく香るインスタトのコーンスープの匂い。騒がしい声が聞こえる。美玖と悠太の声だろう。どこにもある生活音。日常の音。声。

「ほら、早くしたくしなさ

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